法人税はホントに利益の30%なのか?
「法人税は利益の約30%」とよく言われます(35%、40%とされることもあります)。
しかし、ここで言う「法人税」は、国に納める「法人税」という税目だけでなく、その他にもさまざまな税目を含んでおり、それらをひっくるめて「約30%」とされています(ひっくるめる場合は、「法人税等」と表現することもあります)。
また、利益や会社の規模、個々の会社の事情などによっては、「約30%」という税率も変わってきます。
「法人税等」に含まれる税目
「法人税等」には、納付する先によって、以下のような税目が含まれています。
大阪府大阪市に本店がある、いわゆる「中小企業」と呼ばれる会社には、それぞれ下記のような税率が設定されています。
納付先 | 税目 | 何に対して | 何%かかる? | 備考 |
国 | 法人税 | 利益 (800万円まで) |
15% | |
利益 (800万円超の部分) |
23.2% | |||
都道府県 | 地方法人税 | 法人税 | 4.4% | |
都道府県民税 (所得割) |
法人税 | 3.2%or4.2% | 法人税が2,000万円超なら4.2% | |
都道府県民税 (均等割) |
ー(赤字でもかかる) | 20,000円or75,000円 | 資本金が1,000万円超なら75,000円 | |
事業税 | 利益 (400万円まで) |
3.4% | ||
利益 (400~800万円部分) |
5.1% | |||
利益 (800万円超の部分) |
6.7% | |||
地方法人特別税 | 事業税 | 43.2% | ||
市町村 | 市町村民税 (所得割) |
法人税 | 9.7%or11.7% | 法人税が2,000万円超なら11.7% |
市町村民税 (均等割) |
ー(赤字でもかかる) | 50,000円or130,000円 | 資本金が1,000万円超なら130,000円 |
なお、今年の9月決算の会社からは、「地方法人特別税」が廃止されて、代わりに「特別法人事業税」が登場します(12か月決算の会社の場合)。
申告や納付する先は都道府県ですが、最終的には国に集められる「国税」です。
それに伴って、他の税目の税率も変わります。
納付先 | 税目 | 何に対して | 何%かかる? | 備考 |
国 | 法人税 | 利益 (800万円まで) |
15% | |
利益 (800万円超の部分) |
23.2% | |||
都道府県 | 地方法人税 | 法人税 | 10.3% | |
都道府県民税 (所得割) |
法人税 | 1%or2% | 法人税が2,000万円超なら2% | |
都道府県民税 (均等割) |
ー(赤字でもかかる) | 20,000円or75,000円 | 資本金が1,000万円超なら75,000円 | |
事業税 | 利益 (400万円まで) |
3.5% | ||
利益 (400~800万円部分) |
5.3% | |||
利益 (800万円超の部分) |
7% | |||
特別法人事業税 | 事業税 | 37% | ||
市町村 | 市町村民税 (所得割) |
法人税 | 6%or8.2% | 法人税が2,000万円超なら8.2% |
市町村民税 (均等割) |
ー(赤字でもかかる) | 50,000円or130,000円 | 資本金が1,000万円超なら130,000円 |
利益別・法人税等の税率
上の表をみてもらったらわかるように、法人税等についても、利益の段階によって税率が異なります(所得税ほど細かくはありませんが)。
そのため、利益金額(税引前利益)によっては、かならずしも「利益の約30%」にはなりません。
利益別に法人税等の税率が大体いくらになるかを解説します(均等割は含みません)。
今年の8月決算の会社まで
利益金額 | 大体の税率 | 上限金額の場合の税額 |
~400万円 | 22% | 898,500円 |
400~800万円 | 23% | 1,808,500円 |
800~2,000万円 | 25~31% | 6,311,200円 |
今年の9月決算の会社から
利益金額 | 大体の税率 | 上限金額の場合の税額 |
~400万円 | 22% | 895,600円 |
400~800万円 | 23% | 1,889,800円 |
800~2,000万円 | 23~31% | 6,306,100円 |
このように、「法人税は利益の30%」になるには、それなりの利益(2,000万円弱)を出さなければならず、中小企業であれば利益の2割程度が税金になることが多いです。
会社の事情によっては、2~3割にならないことも
なお、個々の会社の事情によっては、かならずしも税金が利益の2~3割になるわけではありません。
「会社の事情」の代表的なものには、以下のようなものがあります。
- 過去からの赤字がある場合
当期の利益と過去の赤字を相殺させることで、税金が抑えられます。 - 従業員の数や給料を増やしたり、設備投資をした場合
税額控除により、法人税(と法人税をもとに計算される税金)が抑えられます。 - 年度の半ば以降に役員報酬を変更した場合
税金計算上、経費とならないことがあるため、その分税金が増えます。 - 経営セーフティ共済を「保険積立金」として経理処理している場合
申告書では利益から差し引かれるので、その分税金が抑えられます。