社長へのボーナスを経費にするのは、ハードルが高い!-役員賞与について

業績が好調だと支給されることがある「ボーナス」(賞与)。

これは従業員だけでなく、社長などの役員にも支給することができます。

しかし、経費にするには、超えなければならないハードルがあります。

 

社長にボーナスを支払うこと自体は、全然問題がない

誤解のないように言っておくと、社長や取締役にボーナスを支払うという行為自体は、何の問題もありません。ボーナスを出したければ出してもいいのです。

問題になるのは、会社の税金計算上の話です。

従業員へのボーナスは経費となりますが、役員へのボーナスは出し方を間違えると、会社の税金計算上、経費として認められないのです。

 

社長のボーナスを経費にするのは、ハードルが高い!

社長や取締役に支払う給与(役員報酬)は、簡単には会社の経費にできないように、細かな取り決めがあります。

簡単に経費にできてしまうと、社長のお手盛りになってしまい、簡単に利益調整や節税ができてしまうからです。

※「同族会社」(社長やその一族が経営権を握っている会社のこと)での話です。

毎月の役員報酬は、毎月同額でないといけない

取り決めの1つが、「毎月の役員報酬は、(基本的に)毎月同額でないといけない」ということです。

例えば、毎月100万円支払うと決めたら、必ず毎月決まった日に100万円の役員報酬を支払わなければ、経費として認められないのです。

下図のように、4月から100万円支払うとしていたけれども、予想外に利益が出そうなので、1月から月200万円支給することにした場合、1月からの増額分月100万円×3月=300万円は、税金計算上は経費から除外されてしまいます税金計算上の話なので、増額することそのものは何の問題もありません)。

 

これは、逆に年度の途中で役員報酬を減額する場合も同様です(業績が急激に悪化してしまい、役員報酬を下げなければどうにもならないという場合は別です)。

 

また、「毎月100万円ずつ支払う」ということを決めるのも、期首(年度のスタート)から3か月以内にしなければなりません(年度の途中で取締役に就任したり、辞任したりする場合は別)。

 

役員賞与は、「0か100」である

もう1つの取り決めが、社長へのボーナス、つまり「役員賞与」に関することです。

役員賞与を会社の経費にするには、次の3つのルールを守らなければなりません。

  1. 株主総会等で「役員へのボーナスを○○万円支払う」という決議をする。
  2. 1の日付から1か月以内に、税務署へ届け出をする。
    →「誰に、何月何日に、○○万円支払う」旨の届け出です。
  3. 2の届け出通りに支払う

 

手続きがめんどくさい上に、最もハードルが高いのが、3のルールです。

例えば、3月決算の会社で、「7月25日と12月25日に、それぞれ100万円ずつ、計200万円のボーナスを支払う」としう届け出をしていた場合は、きっちりその通り支払わないと、税金計算上、経費とならないのです。

この場合、「7月25日は届出通り100万円のボーナスを出したけど、12月25日のボーナスは出せなかった」というときは、7月25日に支給したボーナス100万円も経費にはなりません。

 

また、「7月25日は届出通り100万円のボーナスを出したけど、12月25日のボーナスは50万円しか出せなかった」という場合も、同様です(7月25日に出したボーナス100万円は経費になりません)。

まさに、社長へのボーナスは、「0か100」の世界なのです。

利益が出ることを見込んで、社長にもボーナスを出せるように(出して経費にできるように)届出をしていたけれど、ボーナスを出す時期になって、ボーナスを出せるほど利益が出ていなかったということもあり得ます。

 

届け出をするだけしておくのも1つの手

役員へのボーナスは、出せることは出せるけれども、税金計算上の経費とするにはハードルが高いです。

しかし、届け出を出すこと自体はタダなので、決算日近くにボーナスを出す旨の届け出だけしておくというのも手です。

支給日近くになって、予想通りの利益が出ていれば、届け出通りの日付・金額で支給すれば経費となりますし、ボーナスが出せるほどの利益が出ていなければ、ボーナスを出さなければよいだけの話です。

また、役員ごとに出す、出さないを決めることもできます。

社長に100万円、専務に70万円のボーナスを支給する旨の届け出をしていたけれど、実際には社長にだけ100万円支給して、専務には支給しなかったという場合でも、社長に支給した100万円は経費として認められます。

なお、税金計算上の経費として認められないことを承知の上なら、届け出とは違うボーナスの出し方をしても構いません。

 

繰り返しになりますが、社長にボーナスを出して、なおかつ税金計算上の経費として認めてもらうには、ハードルが高いというだけの話です。