マイホームの売却益が3,000万円以内でも税金が発生することがある!という話
タイトルは、最近お受けしたご相談で実際にあった事例(少し改変しています)です。
マイホームを売却した場合、その売却益が3,000万円以内であれば、確定申告をすることで、その売却益に対する税金をかからなくできる特例があります。
マイホームの売却以外にも、
- 土地が収用で買い取られた場合→最大5,000万円の控除
- 一人暮らししていた親から相続した実家を3年以内に売却した場合→最大3,000万円の控除
- 平成21年か22年に購入した土地を売却した場合→最大1,000万円の控除
など、様々な特例が存在します。
売却益がそれぞれ上の金額以内に収まれば税金はかからないはずなのですが、それでも近年の改正でかかる可能性が出てきています。
「合計所得金額」が一定額以上なら税金が増える!
その答えは、「合計所得金額」にあります。
「合計所得金額」とは、給与や事業、年金、配当金、株の売買益、不動産の売買益等々、あらゆる所得金額を合計したものを言います。
この場合、マイホームを売却した場合に使える特別控除をする「前」の金額を使います。
3,000万円特別控除で譲渡所得がゼロになるとしても、「合計所得金額」はその特別控除をする前の金額なので、場合によってはそれなりに大きい金額になります。
近年の改正により、この「合計所得金額」を基準に決められる【所得控除額】が2つ存在するようになったため、マイホームの売却益が3,000万円であっても税金が増えるケースが出てきました。
配偶者控除(配偶者特別控除)が増えるケース
1つは、配偶者控除または配偶者特別控除が増えるケースです。
たとえば、配偶者控除額(配偶者の所得が48万円以下の場合に受けられます)の場合は、申告する本人の所得によって次のように決まっています(配偶者が70歳未満のケース。それ以外のケースは国税庁HPでお調べください)。
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
1,000万円超 |
38万円 | 26万円 | 13万円 | 0円 |
たとえば、サラリーマンの方が自宅を売却した場合、
- 年末調整の時点(この時点では、税金計算の対象になるのは給料だけ)では900万円以下なので、配偶者控除は38万円を受けられていたが、
- 確定申告の時点でマイホームの売却益(特別控除前)を加算すると900万円を超えたため、配偶者控除額が減ったり、ゼロになったりしたため、
- 税金の対象になるマイホームの売却益はゼロであるものの、それ以外のところで税金の対象が広がり、税金がかかった。
ということが起こり得ます。
基礎控除額が増えるケース
同じような現象が、これまでは誰にでも与えられてきた「基礎控除額」にも起こり得ます。
令和元年分までは、所得に関係なく、誰にでも一律「38万円」の基礎控除額が与えられてきました。
しかし、令和2年分からは、「合計所得金額」の多寡に応じて次のように基礎控除額に差が設けられるようになりました。
2,400万円以下 | 2,400万円超 2,450万円以下 |
2,450万円超 2,500万円以下 |
2,500万円超 |
48万円 | 32万円 | 16万円 | 0円 |
同じように、サラリーマンの方の場合は、年末調整の時点では普通に基礎控除を受けられていたものの、マイホームの売却益を足すと合計所得金額が大きくなってしまい、基礎控除額が減ったり、ゼロになったりするということが令和2年分からは起こり得ます。
似たようなケースは他にもある!
上ではマイホームのことを取り上げていますが、同じ「合計所得金額」が理由で税金が増えるケースは他にもあります。
- 昨年以前の株の売却損を繰越控除した場合
→売却損を考慮する前の今年の株の売却益が合計所得金額に含まれます。 - 退職金を受け取った場合
→退職金は会社で計算が完結していることが多いですが、「合計所得金額」には「退職所得」を含めないといけません。
「退職所得」は次のように計算されます。
(退職金ー退職所得控除額)×2分の1(年数が短いと2分の1をかけられない場合もあります)
まとめ
マイホームの特例や株売却損の繰越控除は、「確定申告書作成コーナー」で作成する場合には自動計算されますので、まだ気づきやすいですが、退職金は会社で計算が完結していればそもそも入力すらしないので、気づかないまま元の基礎控除額や配偶者控除額で計算してしまいがちです。
申告書を提出しても、一旦は受け付けてはもらえますが、早かれ遅かれ、いずれは把握され、後からペナルティと一緒に差額の税金を納めなければならなくなります。
今年からはさらに注意が必要です。