補助金をもらった場合の経理の仕方
この約1年、コロナに関連した様々な補助金や助成金が、様々な団体から出され、様々な人(個人事業主、会社、一般の方)が受け取られてきました。
また、近々「事業再構築補助金」という大型の補助金の申請受付が始まる予定です。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
このような事業に関連してもらった補助金や助成金の会計処理についてお話したいと思います。
「雑収入で計上すればいいだけじゃないの?」と思われる方が多いかもしれませんし、一部はその通りなのですが、固定資産を購入するための補助金をもらった場合は、少し処理が増えますので、注意が必要です。
目次
補助金は、まず「雑収入」で処理
事業に関連してもらった補助金は、まず下記の通り「雑収入」で処理します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
普通預金など | 1,000,000 | 雑収入 | 1,000,000 |
個人事業主の場合は、売上金額に含めて決算書に表示します(決算書2頁目の「雑収入」の中に補助金を含めます)。
会社の場合は、「営業外収益」というカテゴリーで「雑収入」として計上し、「勘定科目内訳明細書」でもその内容を記載します。
+売上高 |
△売上原価 |
=売上総利益 |
△販売費及び一般管理費 |
=営業利益 |
+営業外収益 ↑この中に「雑収入」として補助金を計上する。 |
△営業外費用 |
=経常利益 |
+特別利益 |
△特別損失 |
=税引前当期純利益 |
△法人税等 |
=税引後当期純利益 |
h020
固定資産を購入した場合には、もうひと手間(した方がいいかも)
しかし、補助金や助成金で固定資産を購入した場合には、もうひと手間、会計処理をした方がいいかもしれません。
それは、「減価償却」に理由があります。
せっかくもらった補助金からすぐに税金を支払わないといけない?
たとえば、500万円の固定資産(10年で均等に減価償却)を買うに当たって、300万円の補助金をもらったとします。
この場合、これらの取引に関して計上される収入と経費は下記の通りです。
- 収入:雑収入300万円
- 経費:減価償却費50万円(500万円÷10年)
- 差引:250万円
補助金は全額がその年の収入になりますが、それを固定資産の購入に充てた場合は、すぐにその全額が経費になるわけではなく、何年かに分けて経費化されるため、最初の年は「利益」が大きく上がってしまいます。
上の例なら、せっかく補助金300万円をもらったにもかかわらず、この部分に関しては税金として75万円を支払わなければならなくなります。
固定資産については、後の年で少しずつ経費になるので、そこで税金を取り戻せなくはないのですが、最初の年にガッツリ税金を持っていかれてしまうと目先のキャッシュフローへの影響は大きいです。
そこで補助金と同じ額だけ経費を計上できる!
そこで、もらったら返さなくてもよいことが確定した補助金については、収入に計上したのと同額の経費を計上することが認められています。
これを「圧縮記帳」と言います(なぜ「圧縮」なのかは、その後で分かります)。
上の例なら、
- 収入:雑収入300万円
- 経費:圧縮損300万円
- 差引:0円
となるため、この補助金に関して、最初の年に税金がかかることはありません。
それでは、経費として補助金収入と同額を経費に計上できるのは分かったとして、どうやって経費を計上するのでしょうか?
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
圧縮損 | 3,000,000 | 固定資産 (機械、器具備品など) |
3,000,000 |
このように、経費(圧縮損)として計上するのと同じ金額を、対象の固定資産(補助金で購入した資産)から差し引きます。
そうすると、上の例の場合、固定資産は500万円ー300万円=200万円となるため、毎年の減価償却費は20万円(200万円÷10年)と計算する必要があります。
1年目 | 2~10年目 | 合計 | |
圧縮記帳をした場合 | 収入:300万円 経費:320万円 (圧縮損300万円・減価償却費20万円) |
経費:20万円×9年=180万円 | 収入:300万円 経費:500万円 |
圧縮記帳をしなかった場合 | 収入:300万円 経費:50万円(減価償却費) |
経費:50万円×9年=450万円 | 収入:300万円 経費:500万円 |
この表のように、どちらを採用しても最終的には累計の収入・経費は同額にはなります。
しかし、補助金が必要な最初の年に、少しでもキャッシュアウト(税金)を抑える意味では、利用する価値はあるのではないかと思います。
ちなみに、「圧縮記帳」をした結果、固定資産の金額が30万円未満となった場合は、全額をその年の経費にすることも可能です。
なお、「圧縮損」という経費を計上する方法は、会社のみです。
個人事業主が補助金で固定資産を購入した場合は、そもそも「雑収入」に補助金額を計上せず、同額を固定資産から減額します。
その代わりに、下のような明細書を確定申告の際に提出しなければなりませんので、注意が必要です。
6-029