会社で赤字が出たら使える特典

会社で赤字が出てしまった場合に受けられる2つの特典があります。

  • 繰越控除
  • 繰戻し還付

 

最大10年間赤字が繰り越せる「繰越控除」

「繰越控除」は、赤字が発生した翌年から最大で10年間、利益から差し引くことができる制度です。

ちなみに、繰越控除により法人税がゼロになれば、法人税をベースに計算される住民税(都道府県や市町村が課税)もゼロになりますし、事業税(都道府県が課税)にも同じ繰越控除の制度がありますので、赤字になれば税負担を大きく減らすことができます。
(ただし、住民税については「均等割」という赤字でも払わないといけない税金があります。)

なお、10年間で使いきれなかった赤字額は、消滅してしまいます。

また、領収書等の書類や帳簿は、通常ですと保管期間は7年間ですが、繰越控除を受ける場合は赤字を使い切るまで保管しておく必要があります(つまり、最長で10年間の保管が必要です)。

領収書や請求書などの整理の仕方

 

去年の法人税を取り戻せる「繰戻し還付」

「繰戻し還付」は逆に、

  • 去年が黒字で法人税を支払っていて、
  • 今年赤字だった場合に、
  • 去年の黒字と今年の赤字を相殺させて、
  • 去年の法人税を取り戻す制度です。

前年の黒字額から今年の赤字額を引いた上で(前年の黒字額がMAX)、前年の法人税額を計算しなおし、
前年に支払った法人税との差額を還付してもらうという仕組みです。

なお、前年の黒字額と相殺させても赤字額が残る場合は、翌年以降に繰越控除ができます。

また、住民税と事業税については、繰戻し還付について次のような制度があります。

  • 翌年以降、住民税から還付してもらった法人税を差し引くことができる(最大10年間)。
  • 事業税については、繰戻し還付の制度はなく、繰越控除しかできない。
    (上の例で言うと、残赤字10,000からのスタートです。)

 

繰越控除や繰戻し還付をするには

繰越控除や繰戻し還付をするには、条件があります。

「青色申告」をしている年に出た赤字にしか使えないということです。
(繰戻し還付については、黒字の年度も青色申告している必要があります。)

会社を作った際に、青色申告の承認申請書を出し忘れていて、1年目の赤字を繰り越せなかった、ということがよくあるので、注意が必要です。
(ただし、災害が原因で生じた赤字は、青色申告でなくても繰り越せます。)

会社を作ったら、開業届と同時に青色申告承認申請書も出すようにしましょう。
(設立から3か月以内or1年目の期末日のどちらか早い方が期限です。)

また、繰戻し還付については、期限内に申告する必要もあります。

 

まとめ

繰越控除は翌年の決算で利益から差し引けるというものなので、効果を実感できるのは早くて1年後ですが、
繰戻し還付の場合は申告をすればその後に還付を受けられ、資金繰りが少し楽になります。

コロナの影響で業績が急激に悪化している会社の場合、事業年度の変更との合わせ技で繰戻し還付を使うのもいいかもしれません。還付金が少しでも早く受け取れる可能性があるからです。
(前年の黒字額と納税額が多いことと、事業年度変更に抵抗がなければですが)

事業年度を変更するには