経営セーフティ共済と小規模企業共済の経理のしかた

経営セーフティ共済と小規模企業共済は、どちらも掛け金の全額を必要経費に入れたり所得控除できたりすることができ、将来へのつみたてもできるお得な制度です。

今日はその経理処理のしかたについてお話したいと思います。

 

経営セーフティ共済の経理のしかた

会社の場合

会社で経営セーフティ共済に加入している場合は、経理のしかたが2パターンあります。

  1. 【保険料】(経費)で処理する方法→(借方)保険料 (貸方)現預金 ×××円
  2. 【保険積立金】(資産)で処理する方法→(借方)保険積立金 (貸方)現預金 ×××円

どちらの方法で処理しても、納税額に差はでませんが、それぞれにメリット・デメリットがあります(1のほうがメリットは多いです)。

【保険料】(経費)で処理する方法・メリット・デメリット

1.方法
支払い時:(借方)保険料 (貸方)現預金 ×××円 と入力するだけでOKです。

2.メリット
あとで述べる【保険積立金】で処理する方法に比べ、処理がかんたんな点です。

3.デメリット
デメリットも【保険積立金】で処理する方法の逆で、2つあります。

1つは、経費に入ってしまうので、その分決算書上はあまり利益が出てないように見えてしまう点です。

もう1つは、経費で処理したことは翌期の決算書には引き継がれないので、いまどれだけ掛けているかが分からない点です。

【保険積立金】(資産)で処理する方法・メリット・デメリット

1.方法
①支払い時:(借方)保険積立金 (貸方)現預金 ×××円 と入力します。
②決算時:法人税の申告書上で調整が必要になります。

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【別表四】という書類では、決算書上の利益から経営セーフティ共済で支払った掛け金を差し引く(減算)する調整をします(かんたんに言うと、決算書上ではなく、申告書上で掛け金を経費にする処理です)

こうしないと、利益から掛け金額が控除されないので、せっかく支払った掛け金が節税効果を発揮しないことになります。

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また、【別表五(一)】という書類では、このように処理します。
理由は、①本来は経費として処理されるはずなのに、保険積立金(資産)として処理されているので、その分「純資産」(資産-負債の差額)が増えている。②そこで本来の純資産額に戻すため、です。

こんな処理が必要なんだな、とだけ覚えておいていただければ。

2.メリット
保険積立金として処理するメリットは2つあります。

1つは、損益計算書上では経費としないので(申告書上で経費にする)、その分利益や純資産額が多くなり、融資の際に少しでも有利になる点です。

もう1つは、【保険積立金】という科目で掛け金の累計額が残り続けるので、いまどれだけ掛けているかが分かる点です。

3.デメリット
デメリットとしては、上で説明したような申告書上での調整が必要な分、少し面倒な点です。
保険料として経費処理していれば、このような調整は必要ありません。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、会社の場合で言うところの「【保険料】(経費)で処理する方法」一択です。

個人事業主の申告書・決算書では、会社のような「別表」がないからです。

強いて言うならば、次のような会計処理をすると、経費処理と掛け金累計額の把握の両方が可能かと思います。

①支払い時:(借方)保険積立金 (貸方)現預金  ×××円
②決算時 :(借方)保険料   (貸方)事業主借 ×××円

いずれにしても明細が必要

会社か個人事業主か、保険積立金処理か保険料処理かに関係なく、もう1つ申告の際に必要な書類があります。

会社の場合は、【別表十(七)】という書類に、その年度に掛けた金額を記載します。
また、【適用額明細書】という書類にも、金額を記載する必要があります。

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個人事業主の場合は、次のような感じの書類、ワードなどで作成して、申告書・決算書に添付します。

明細書

 

小規模企業共済の経理のしかた(個人事業主)

小規模企業共済については、決算書ではなく、確定申告書の「所得控除」の欄で控除されますので、とくに経理処理は必要ありません。

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しかし、小規模企業共済についても、(借方)保険積立金 (貸方)現預金 ×××円 と処理することで、いま累計でいくら掛けているかを把握できますので、個人事業主の方にはおすすめです。