遺言書を書く前に準備しておくべきこと
遺言書をいざ書こうと思っても、何を書いたらいいのか、どう書いたらいいのか、どのような財産の配分にしたらいいのか分からないという経験はありませんか?
遺言を文面にする前にやっておいた方がいいことについてまとめてみました。
目次
家族と財産の「たな卸し」をしてみる
まずは、家族と財産の「たな卸し」からしてみることをお勧めします。
現状を把握することで、財産の分け方が見えてきます。
家族の「たな卸し」
いま自分に万が一のことがあったら、だれが相続人になるか?
家族が妻と子どもという、よくある構成なら特段気にすることはありませんが、きょうだいや甥姪が相続人になり得る場合や、前妻とのあいだに子どもがいる場合などは、きちんと整理しておいた方がいいです。
また、公正証書にするのであれば、戸籍謄本などが必要になりますので、取っておいた方がいいです(きょうだいや甥姪などの「傍系」の親族なら、その人たちに取ってもらうか、行政書士に依頼する方法があります)。
それぞれの住まい、家族構成、経済力、人間関係、健康状態など
これらを整理するのには、それぞれ意味があります。
住まい | とくに自宅などの不動産を誰に引き継いでもらうかのヒントになります。 |
家族構成 | 独身なのか、家族が多いのかで必要になってくるお金が変わってくるので、いくら財産を遺してあげるかを考えるヒントになります。 |
経済力 | 相続人の配偶者を含めた経済力しだいで、遺してあげたほうがいい財産額が変わってきます。 |
人間関係 | 相続人どうしで仲が悪い場合は、相続後に紛争となるリスクが大きいので、紛争が起きる余地を少なくするにはどう分けたらいいのか、バランスを考えるヒントになります。 |
健康状態 | 仮に自分より先に亡くなる可能性がある場合に備えて、代わりに財産を引き継ぐ人を決めるヒントになります。 |
その他 | 家業(不動産賃貸を含む)がある場合は、だれを跡継ぎにしたいかを考えておきましょう。 |
財産の「たな卸し」
- どこに・どんな財産が・いくらあるのか?
- 【流動資産】(現預金や上場株式など、すぐにお金に換えることができるもの)と【固定資産】(不動産や非上場株式など、すぐにはお金に換えにくいもの)のバランスはどうか?
- 借金はいくらあるか?(事業とひも付きかどうか?)
- 保証債務はあるか?(事業とひも付きかどうか?)
これらを整理することで、配分を考えやすくなります。
また、「こう分けたい」と思う分け方をした場合に、特定の相続人に財産が偏り、「遺留分」を侵害していないかどうかを確かめることもできます。
財産の「たな卸し」をした結果、
- 預金口座や証券口座が多すぎる。使っていない口座もある。
- 売るのに時間がかかりそうな不動産がある。だれも欲しがらない不動産がある。
といったことが分かった場合は、お元気なうちから整理しておきましょう(これらの財産を遺言書に記載した後に処分しても、遺言書は無効になりません)。
相続税の試算をしてみる(相続税がかかりそうな人)
相続税がかかりそうな人(財産額>3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、いくらかかるか、相続してもらう財産で支払えるかを試算しておきましょう。
ここは、ご自身で試算するのもいいかと思いますが、専門の税理士に頼んだ方が無難です。
この試算によって、納税を考慮した配分や納税資金の事前準備が可能になります。
遺言執行者を決めておく
遺言書を書いておけば、その内容が自動的に実行されるわけではありません。
その内容を実行する人=「遺言執行者」を決め、その人に実行してもらう必要があります。
遺言の中で決めておけば問題はないですが、決めてなければ家庭裁判所で選任してもらう手間がかかります。
遺言執行者は、信頼のおける相続人でも構いませんし、第三者でも構いません(遺言作成に関わった士業者がなることも多いです)。
「付言事項」を考えておく
「付言事項」とは、遺言書の本文(誰に何をあげるといった内容)の後に記載する文章です。
何を書いてもよく、また、何も書かなくても問題はありません。
ここでよく書かれるのが、残された家族への感謝の気持ちや言い残したいことなどです。
法的な効力はありませんが、
- この遺言書を書いた経緯
- どうしてこのような配分にしたのか
- 配分が少ない相続人への配慮
などを書くことで、相続トラブルの回避や円満相続につながりやすくなります。
いきなりきれいな文書にするのは難しいので、まずは箇条書きなどにしてみるといいかもしれません(もしくは箇条書きのままでもいいかもしれません)。
遺言書に詳しい士業者に依頼するのであれば、箇条書きをわたすことで、それらしい文書にしてくれる人もいます。
まとめ
自分で書くにしろ、士業者に依頼するしろ、作成する前にある程度でも整理しておくことが、遺言書完成の近道です。
また、きっちりしたものは思いつかないけれども、とりあえず書いておいて安心したいということであれば、「とりあえずの自筆証書遺言」という手もあります。