青色申告なら出来る節税法

個人事業主やフリーランス、不動産賃貸などをされている方であれば、「青色申告」をすることを税務署に申請することで、様々な節税につなげることができます(以下、個人の場合についてお話します。会社にも青色申告はあります)。

 

 

青色申告とは

青色申告とは、確定申告をする際に、事業の収支を複式簿記などの方法で記帳する申告方法を言います。

昔は、青色申告をする場合は、実際に申告書や決算書が青かったそうです(私は電子申告が普及した時期にこの業界に入ったので、又聞きでしか知りませんが)。

 

 

青色申告をするには

青色申告をするには、まず税務署に申請書を出す必要があります。

その年から始めたい場合は、3月15日(今年は4月16日まで延びています)までに出します。
1月16日以降に事業を始めた場合は、開業から2か月以内に出す必要があります。

 

この申請書を出せば無条件で青色申告ができるわけではなく、帳簿をつける必要があります。
また、その帳簿を7年間保管しておく必要もあります。

 

また、後で述べますが、65万円の控除を受けたい場合は、貸借対照表(年始と年末の事業用の財産債務の一覧)を作る必要もあります。

 

 

青色申告の特典

青色申告をすると、次のような税務上の特典があります。

 

65万円or55万円or10万円の控除が受けられる

一番の特典は、利益から一定額を差し引くことができる点です。

引ける金額は、65万円55万円10万円のいずれかです。

いくら引けるかは、次のようにして決まります。

①複式簿記で記帳しているかどうか
 複式簿記なら、65万円または55万円の控除が可能です。
 この場合、損益計算書(収支)だけでなく、年始と年末の財産の一覧表(貸借対照表)も作る必要があります。

②(不動産賃貸の場合)規模が大きいかどうか
 部屋数にして10部屋以上、棟数にして5棟以上なら、65万円または55万円の控除が可能です。

③電子申告をしているかどうか
 ①の条件を満たしていれば65万円55万円の控除が可能(不動産賃貸をされている方は②も)ですが、令和2年分からは、電子申告をしていれば65万円を、していなければ55万円を控除することになります(電子申告をしている方が有利)。

 

家族への給料を経費にできる

家族への給料は、通常は経費にすることはできません(家庭内でお金が回っているだけなので)。

しかし青色申告なら、家族に支払った給料も経費にすることができます。

家族に給料を払っているなら、届出書を出して経費にしよう

 

ただし、次の点に注意が必要です。

  1. 不動産賃貸業の場合は、規模が大きくなければ経費にはできない(上記参照)。
  2. 当然ですが、働きに応じて支払うようにしましょう。働いた分や役割を超えて支払うと、経費として認められない可能性もあります。
  3. 経費とするかわりに、配偶者控除や扶養控除はできなくなります(控除額以上に支払った方が税金的には有利です)。
  4. 税務署に届出をする必要があります。

 

貸倒引当金を計上できる

売掛金や貸付金などが、将来回収できなくなる場合に備えて、あらかじめ損失額を見積もって、経費に計上した金額を、「貸倒引当金」と言います。

青色申告であれば、年末の売掛金などの残高の5.5%(金融業は3.3%)までを経費として計上することができます。
(青色申告でなくても、個々の売掛金などを評価して経費として計上することも可能ではあります)

 

30万円未満の資産を一括で経費にできる

事業で使う資産は、通常減価償却で何年かに分けて経費にしなければなりませんが、青色申告をしていれば、30万円未満のものであれば、買った年に一括で経費にすることができます。

その代わり、トータルで150万円以上(土地・建物・車を除きます)になると、固定資産税の課税対象になるので、注意は必要です。

(その年に一括で経費になるか、何年かに分けて経費になるかの違いだけで、最終的には全額またはほぼ全額が経費にはなります)

償却資産申告について

 

損失を3年間繰り越せる

事業で赤字が発生して、他の所得では相殺しきれない場合でも、翌年から3年間繰り越すことができます(翌年以降の利益と相殺ができます)。

また、前年に青色申告をしていて利益が出ている場合は、その利益と相殺させることで、前年の税金の一部を還付してもらうことも可能です。

 

青色申告をしているとどれだけ節税できるか

では、青色申告をしているとどれだけ節税につながるのでしょうか?

次のような前提で、所得税の税率別に比較してみました。

【前提】65万円控除を受けて、配偶者に月8万円(年間96万円)の給料を支払っている場合

※事業税は、利益が年間290万円を超える場合にかかります(上記は税率5%で計算しています)。

税務署への届出と記帳だけで(+電子申告+家族への働きに応じた給料の支給により)、これだけ節税することができます。

ここに、小規模企業共済や倒産防止共済を掛け合わせることで、さらに節税を図ることも可能です(もちろん、資金の許す範囲でやることが大事ですが)。

3つの共済制度で節税と積み立てをしよう!

 

また、国民健康保険に加入している場合は、所得に応じて保険料が決まるため、青色申告は健康保険料の節約にもつながります。

このように、個人事業主の場合は、少しの工夫と手間と努力で節税が可能なのです。