3つの共済制度で節税と積み立てをしよう!
利益が出すぎた!税金がたくさんかかりそう!という時にやってしまいがちなのが、経費をたくさん使って利益を圧縮することです。
どうしても今(または近い将来)必要なものを買うならともかく、そうでないならあまり意味はないと思いますし、積極的におすすめもしません。
目次
経費をたくさん使うことをおすすめしない理由
経費をジャブジャブ使う「節税」をおすすめしないのは、次の2つの理由からです。
- 利益の繰り延べでしかないから。
- お金が残らないから。
理由① 利益の繰り延べでしかないから
例えば、対策前の利益が、第1期:1,000万円 第2期:1,000万円 だったとします。
税率を30%とすると、税金は第1期・第2期ともに300万円ずつかかります(計600万円)。
そこで、第2期に買う予定だった備品200万円を、第1期の終了間際に購入したとすると、第1期の税金は次のようになります(減価償却は考慮しません)。
利益:1,000万円ー200万円=800万円
税金:800万円×30%=240万円(購入しなければ300万円)
確かに、第1期の税金は300万円から240万円に、60万円圧縮することはできましたが、逆に第2期において備品200万円の購入予定が無くなったため、このままでいくと第2期の税金は下記の通りになります。
利益:1,000万円+200万円=1,200万円
税金:1,200万円×30%=360万円(対策前:300万円)
結局、第2期の税金が300万円から360万円と、60万円増えています。第1期に支払うはずだった60万円の税金を第2期に繰り延べただけなのです。
もちろん、軽減税率の問題(中小企業の場合、利益が800万円以下の部分には軽減税率が適用されます)や、設備投資に対する減税措置(これらには期限があります)のこともありますので、単純に言い切れない点もあります。
また、必要な投資や購入を否定するつもりもありません。
しかし、「節税」と呼ばれているものは、今払う税金を将来に繰り延べていることが多いのです。
理由② お金が残らないから
理由①の第1期の例でお話します。対策をしない場合とした場合とで、お金の残り方は次のように変わります。
<対策をしない場合>
利益1,000万円ー税金300万円=700万円→残ったお金
<対策をした場合>
利益:1,000万円ー200万円=800万円
利益800万円ー税金240万円=560万円→残ったお金
このように、税金は確かに60万円減りますが、備品を買うために200万円のお金を使っているため、残るお金は140万円減ることになります。
「節税」と呼ばれているものの多くは、まずお金が先に出ていくことが多いのです。
(もちろん、この支出が、将来の利益獲得につながることもありますし、そのつもりで支出していることが多いと思いますので、単純に言い切れない部分もあります。)
おすすめの節税対策ー3つの共済制度
おすすめする節税対策として、「三共済」と呼ばれる、3つの共済制度があります。
- 小規模企業共済
- 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 中小企業退職金共済
これらはいずれも、掛け金が経費や所得控除になるというもので、経費を使って利益を圧縮するという点では、先述の例と変わらないのですが、違う点は、いずれも「積み立て」の側面も持っているという点と、独立行政法人という組織が運営している点です。
小規模企業共済
会社役員や個人事業主の退職金準備のために積み立てるものです。
月々1,000円~70,000円(年間24,000円~84万円)の範囲で掛けることができ、掛け金は全額所得から差し引くことができます。
老後に受け取る際は、分割払い・一括払いが選択でき、どちらにも税制上の優遇措置があります。
つまり、掛け金を支払っている時は節税ができ、受け取る時はあまり税金がかからないという制度です。
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
取引先が倒産して売掛金を回収できなくなった場合などに、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
無担保・無保証で、掛け金の最高10倍まで(上限8,000万円)借入することができます。
月々5,000円~20万円(5,000円刻み、年間6万円~240万円)の範囲、合計800万円まで掛けることができ、掛け金は全額経費とすることができます。
また解約する場合には、12か月分以上掛けていれば、掛け金の8割以上が戻り、40か月分以上掛けていれば、掛け金の全額が戻ります。
戻ってくる時は、収入に計上しなければならず、税金がかかります。
しかし、生命保険とは違うのは、ピークを過ぎると返戻率が下がるということがない(40か月以上納付で返戻率100%のまま)ので、好きなタイミング(赤字が出た年度、設備投資、役員退職金を払う時など)で解約しやすく、出口戦略が立てやすいというメリットがあります。
中小企業退職金共済
従業員の将来の退職金積み立てのための制度です。
月々5,000円~3万円の間の16種類の掛け金を支払うことができ、全額経費とすることができます(通常の退職金制度では、実際の退職金支払いまでは経費とすることができません)。
また、一定期間、国が掛け金の一部を助成してくれるほか、事務処理などを運営団体がしてくれるため管理が楽です。
ただし、掛け金を減額するには面倒な手続きがあることや、懲戒解雇した従業員にも退職金がきっちり支払われるなどのデメリットもありますので、注意は必要です(代わりの手段として養老保険やiDeCoなどがありますが、それは追々)。
まとめ
3つの共済制度は、いずれも積み立ての要素があり、出口戦略も立てやすいので、節税におすすめです。
しかし、これらもお金が出ていくものになりますので、資金繰りを無視して掛けすぎるのは注意が必要です。また、短期解約すると、全額戻ってこないこともあります。
例えば、定期預金や定期積金に回せる余剰資金があるなら、その一部を三共済に回すくらいがおすすめです。