相続対策=相続税対策 ではない③-相続手続対策

相続対策シリーズの最終回です。

相続の現場において、相続税申告・遺産分割協議と並んで手間がかかる仕事が
「相続手続き」です。

具体的には、預貯金などの解約換金手続きや不動産登記、その他財産の名義変更手続きなどを指します。

「どこに何があるか分からない」

 

相続手続きをしていく上でやっかいなのが、亡くなられた方の財産が「どこに何があるか分からない」ということです。

自宅や収益物件、メインバンクの口座くらいであれば、家族の方も知っていることが多いでしょうが、例えば次のようなことがあると、財産の計上漏れが発生することがあります。

  • 父が自分の出身地に山林を所有していた。
  • 父が自分のきょうだいと不動産を共有していた。
  • かつて単身赴任していた先の地元金融機関で口座を作っていた。
  • 色んな金融機関で銀行口座や株取引の口座を作っていた。
  • 保険料が支払済みになっている保険契約があった。
  • 家族にかけている保険契約があった。
  • 普段は離れて暮らしているため、親がどのような財産を持っているか、全く把握していないかった。

 

我々税理士が相続税申告をご依頼いただいた場合は、なるべく漏れがないように、次のような方法で財産の有無を調べることがありますが、それでも網羅しきれない可能性もあります。

  • (不動産の場合)役所で名寄帳を取り寄せ、共有になっている不動産がないか調べる。
  • 預貯金の履歴から、他に保険契約がないか調べる。
  • ご家族からヒアリングをする(各種財産の有無、取引銀行、経歴など)。

「どこに何があるか分からない」ことのないようにするには?

「どこに何があるか分からない」という状態を回避するには、大きく分けて2つの方法があります。

  1. 「どこに何があるか」をはっきりさせる。
  2. 財産の整理をする。

「どこに何があるか」をはっきりさせる

一番シンプルなやり方です。

方法としては2つあります。

  1. 遺言書に書く。
  2. エンディングノートを書く。

 

遺言書では、どの財産を誰にあげるかを書きますので、「どこに何があるか」が一目瞭然です。

また、エンディングノートは、遺言書のような法的効力はありませんが、次のようなメリットがあり、遺言書の補完手段として有効です。

  • ネットバンキングなどのネットサービスのID・パスワードを記載しやすい(遺言書だとそうもいかないと思います)
  • 財産に関する書類がどこにあるかを記載しやすい。
  • 市販のエンディングノートは、遺言書よりも見やすい。情報が整理しやすい。

財産の整理をする

銀行口座の数が多岐にわたっている場合などは、今のうちに整理しておき、数を減らすことで、漏れが少なくなります。

  • 昔作ったけど、今はほとんど動いていない口座
  • 近くに支店がない銀行の口座

こういった口座を整理していくことで、残された家族が解約換金手続きをする時に、色んな銀行を回らなくて済みます。

また、残高がわずかな口座を相続手続きで解約換金しようとすると、口座残高よりも手数料の方が高くつくということもあるので、自分が動けるうちに整理しておくのが良いでしょう。

まとめ

ここまで、相続税対策以外の相続対策についてお話してきました。

子や孫に生前贈与をすることだけが、節税のための物件を購入することだけが、保険に入ることだけが相続対策ではありません。

相続税の節税だけに囚われるのではなく、納税・円満な分割・相続手続きなど、広い視野で対策をするようにしましょう。