法人税や消費税の申告は「短縮」ができる

法人税や所得税、消費税の申告は、会社も個人も、通常1年間(12か月)であることがほとんどであり、それが当たり前だと思われている方も多いかと思います。

しかし、この期間は「短縮」することが可能なのです。
特に消費税については、「短縮」を利用することで、納税額を抑えることも可能です。

 

会社の場合ー1年以内ならOK

会社の場合は、期間が1年を超えてはならないとされていますが(決算月を変える場合は、最初だけOK)、1年を超えなければ、会社が好きなように期間を定めることができます。

数はあまり多くありませんが、半年ごとの事業年度の会社などは一定程度存在します(年1回決算の会社が約260万社に対して、年2回決算の会社は約2.6万社)。

 

年2回の決算をする一番のメリットは、「役員報酬の改定がしやすい」ことです。

役員報酬の改定は、通常であれば期首から3か月以内にしか変えることができません(3か月経過後に変えてもいいのですが、一定額が経費として認められなくなります)。

 社長へのボーナスを経費にするのは、ハードルが高い!-役員賞与について

 

そのため、年1回・3月決算の会社であれば、7月以降の9か月間は、役員報酬の金額を変えにくくなります(業績が急激に悪化した場合は、変えても経費として認められることもあります)。

しかし、年2回・9月/3月決算の会社であれば、役員報酬を変えるタイミングは、4~6月だけでなく、10~12月にも発生します。

役員報酬の金額を変えにくいのは、7~9月と1~3月の6か月間だけになります。

 

年2回決算と申告をしなければならず、手間は増えますが、1年先まで業績が見通しにくい会社や、業績変動の大きい会社は検討する価値はあるのではないでしょうか?

 

 

消費税の計算期間を短縮するメリット

消費税単体で計算期間を短縮することもできます(会社・個人関係なく)。

消費税の場合は、1か月ごと(年12回)3か月ごと(年4回)のいずれかに短縮することができます。

わざわざ消費税の計算期間を短縮させるねらいは、次のようなものがあります。

 

早く還付してもらうため(輸出取引が多い人向け)

1つは、消費税を早く還付してもらい、資金繰りを少しでも良くするためです。

年1回だけの申告であれば、還付してもらえるのも年1回だけになりますが、年12回や年4回の申告であれば、還付のタイミングも毎月あるいは3か月に1回となり、それだけ資金繰りは楽になります。

 

この方法は輸出取引の多い事業者に向いています。

輸出での売上には消費税はかかりませんが、そのための仕入や経費には消費税がかかっています。

消費税の申告をすれば、仕入や経費にかかった消費税を還付してもらえるので、還付してもらえるなら早い方がよいというわけです。

 

簡易課税を年の途中から受けるため(または止めるため)

もう1つは、年の途中から簡易課税を受けるため、または簡易課税を止めて原則課税に戻るためです。

 原則課税・簡易課税については→こちら

簡易課税を受けたい場合または原則課税に戻りたい場合は、通常は年度が始まるまでに税務署に届出をしなければなりません。

  • どちらが有利か読めなくて、とりあえず原則課税にしたが、始めてみれば簡易課税の方が有利だった。
  • ずっと簡易課税で申告していたが、大きな設備投資をすることが急遽決まり、原則課税にしたい。
  • 年度始めまでに届出を出すのを忘れていた(税理士に継続的に見てもらっていれば、そんなことがあってはいけないのですが)。

 

途中で原則課税→簡易課税 または 簡易課税→原則課税 としたい場合、計算期間を1か月ごと(年12回)3か月ごと(年4回)に短縮し、短縮後最初の計算期間が始まるまでに届出を出せば、その計算期間から原則課税→簡易課税 または 簡易課税→原則課税 とすることができます。

 

デメリットは・・・

いいことばかりに見えますが、デメリットもあります。

1つは、消費税の申告回数が年12回または年4回に増えることです。

もう1つは、計算期間を短縮した後、すぐにまた変えることはできないことです。
もとに戻したい場合や、3か月→1か月 または 1か月→3か月 に変更したい場合は、2年待つ必要があります。

 

 

まとめ

決算や消費税の計算期間を短縮することは、手間が増える半面、メリットも多いです。

納税の回数が増えるので、資金繰りの平準化にもつながりやすいという面もあります。
また、会社の数字を見る機会も増えるいいきっかけにもなるかもしれません。

「決算・申告=年1回」

でなくてもいいんだという気づきになれば幸いです。