準確定申告で注意すること
一昨日、準確定申告についての概要をお話しましたが、これに関して注意すべき点をまとめてみました。
所得税の納税額は「債務」、還付額は「財産」
準確定申告の結果、納税額が出た場合は、亡くなった方の「債務」となり、相続税の計算では財産から差し引かれることになります。
一方、還付となる場合は、亡くなった方の「財産」(未収入金)となり、これも相続税の課税対象になります。
一旦返ってくるけれども、その一部が相続税として取られるわけです。
消費税の準確定申告をしている場合も同様です。
また、忘れがちなのが、「個人事業税」です。
事業や不動産賃貸での利益が年間290万円(年の途中で開業・廃業した場合は、月割)を超えると、その超えた部分に対して5%(業種によって率が異なる場合もある)の事業税が課されることがあります。
準確定申告した後、遅れて個人事業税の通知書が都道府県から送られてきます(「事業税を○○円払って下さい」というものです)。
この個人事業税の納税が結構漏れがちなのですが、個人事業税も同様に亡くなった方の「債務」となりますので、通知書を無くさないようにしましょう。
届出もお忘れなく
相続税の申告や相続手続きに気を取られて、忘れがちなのが、税務に関する各種届出です。
亡くなった方が、生前に
- 青色申告をしていたり、
- 消費税で簡易課税を受けていたり、
していた場合、亡くなった方の事業(商売や不動産賃貸業)を引き継いだ人も無条件でこれらの特典を受けられるかというと、そうではないのです。これらの効力までは、相続人には引き継がれません。
なので、決まった期限までに届出や申請が必要になります。
一番ポピュラーな、「青色申告承認申請書」について説明すると、亡くなった日によって次のように提出期限が変わります。
亡くなった日 | 提出期限 |
1月1日~8月31日 | 亡くなってから4か月以内 |
9月1日~10月31日 | その年の12月31日まで |
11月1日~12月31日 | 翌年2月15日まで |
相続が発生した後のバタバタを考えると、特に9月以降に亡くなった場合は、期限がタイトだと思います。
(ちなみに、通常の場合はその年の3月15日までor開業年は開業日から2か月以内です。)
なお、消費税の簡易課税制度の選択届出書は、亡くなった年の12月31日までです。
(ちなみに、通常の場合は、前年の12月31日までです。)
ただし、亡くなった日が期限前のおおむね1か月以内(つまり12月中)の場合は、12月末までに提出することが難しいと思われますので、その場合は「特例承認申請書」というものを出して認められれば、簡易課税を受けることができます。
なお、相続人がもともと自分で商売をしていた場合には、簡易課税が受けられないパターンもありますので、亡くなった方が消費税の申告をしていた場合には、税理士や税務署に確認するなどして、よくよく注意した方がいいでしょう。
※他にも届出書がありますが、ポピュラーではないので、ここでは割愛しております。
収入も経費も亡くなった日の分まで
準確定申告は、1月1日から亡くなった日までの所得を計算しますので、当然ですが、収入も経費も亡くなった日の分までとなります。
これもポピュラーなところを挙げていきたいと思います。
公的年金
公的年金は、通常、偶数月の15日に支払われます。
例えば、亡くなったのが5月10日だとすると、準確定申告で課税の対象となるのは、2月15日と4月15日に支給された年金だけになります。
しかし、年金は後払い方式(4・5月分を6月15日に支給)となっているので、5月に亡くなった場合、6月15日にも年金が支給されることになります。
この6月支給の年金については、亡くなった方の所得にはなりませんが、遺族が受け取った場合は、遺族の所得(一時所得)となりますので、注意が必要です(50万円以内なら税金はかからない)。
配当金
亡くなった後にもらった配当金であっても、基準日(通常、その会社の決算日)が亡くなる前であれば、その配当金も配当所得となります。
例)亡くなった日:4月3日
基準日 :3月31日
配当支払日 :6月30日
→この配当金も亡くなった方の配当所得(未収配当金として、相続税の課税対象にもなる)
不動産賃貸の利益の帰属問題
準確定申告の話からは少し逸れますが、これはとても重要な問題です(この問題だけで1件記事を書けるくらいです)。
亡くなった日までの不動産賃貸の利益自体は、亡くなった方の所得として申告しますので、特に問題はありません。
問題は、亡くなった日から、その収益物件を誰がもらうか決まった日までの利益の帰属です。
この期間の利益は、「相続人共同の所得」になります。そのため、この期間の利益は、法定相続分で分け合わないといけません(当然、法定相続分で分け合った後の利益は、各相続人で確定申告をしなければなりません)。
もらう人が決まった後は、もらう人の利益となります。
線表にすると、こんな感じです。
表分け方がすぐに決まるならいいでしょうが、そうでない場合は、分け方が決まるまで法定相続分で按分して、全員が確定申告をし続けなければなりません。
そのため、収益物件をお持ちの方は、収益物件だけでも遺言書を書いておかれることをお勧めします。
所得控除
医療費控除や生命保険料控除などについても、亡くなるまでに払った分が対象となります。
亡くなった後に支払った病院代などは、亡くなった方の「債務」として、財産から差し引かれることになります。
また、配偶者控除や扶養控除は、亡くなった日の現況で、適用するかしないかを判定します。
まとめ
相続税の申告とは違い、準確定申告は自分でされる方も多いです。
しかし、通常の確定申告には無い注意点が多いので、気を付けましょう。