相続直後の資金需要への備え方
家族が亡くなった直後は、お葬式の費用や最後の病院代・施設代、諸費用(水道光熱費、通信費など)当面の生活費(亡くなった方のお金で生活していた場合)など、何かとお金が必要な場面があります。
しかし、亡くなったことが金融機関に分かってしまうと、銀行口座が凍結されてしまい、基本的にはお金の引き出しや口座振替などができなくなってしまいます。
このような状況に、生前から備えておく方法をまとめました。
実は引き出せるようになっている!
口座が凍結されてしまうと、基本的にはお金が引き出せないと申し上げましたが、実は一定額までは引き出せるように法律が変わっています。
「相続預金の払戻し制度」
と呼ばれるもので、昨年の7月1日から始まっています。
家庭裁判所の判断を経るかどうかによって、2つの方法があります。
- 家庭裁判所の判断を経る場合
生活費などの理由で必要と認められ、他の相続人にとって不利とならなければ、家庭裁判所が必要と認めた金額を払戻しできます(家庭裁判所が「審判書」という書類を出してくれるので、それと印鑑登録証明書を銀行に持っていきます)。 - 家庭裁判所の判断を経ない場合
この場合は、亡くなった方や相続人の戸籍謄本、印鑑登録証明書などを持っていけば、次の金額の払戻しを受けることができます。その金融機関での預金額×1/3×払戻しをうける相続人の法定相続分(150万円が上限)
例えば、相続人が妻と子供2人で、A銀行に預金が600万円あり、妻が払戻しを受ける場合は次のようになります。
600万円×1/3×1/2=100万円→払戻し可
しかし、どちらの方法も手間がかかるというデメリットがあります。
生命保険を活用する
当面の資金に必要な金額だけ、生命保険に加入しておくという方法もあります。
生命保険は、すべての必要書類(請求書類、死亡診断書、保険証券、受け取る人の本人確認書類、被保険者が亡くなったことが分かる書類など)が保険会社に到着した翌日から5営業日以内で保険金を支払わなければならないと決まっている(遅れたら遅延利息を加算しないといけない)ので、まとまったお金を早く手に入れることができます。
しかし、請求書類を保険会社から取り寄せないといけなかったり、請求書類の書き方が難しかったり(付箋やマーカー等をしてくれていることもありますが)といったデメリットもあります。
なので、保険証券のありかや保険の詳細(誰がいくら貰えるか)、保険金請求の際の連絡先などを家族で共有しておく工夫も必要かと思います。
最近では、「葬儀用の保険」というものもあります。
掛け金が安い・高齢の方でも加入しやすい・保険金の支払いが速い(資料が揃った翌営業日というところも)といった特徴があり、お勧めです。
ただし、亡くなった方が契約者であり、被保険者である場合は、相続税の課税対象となる場合もありますので、注意が必要です。
(あえて)名義預金を作っておく
「名義預金」とは、口座の名義は家族(奥さんや子どもなど)だが、お金は亡くなった方が入れていて、口座の管理もしていたという預金です。
通常、このような名義預金も亡くなった方の財産として、相続税の課税対象となり、マイナスのイメージを持たれることも多いのですが、相続直後の資金需要に活用できるというメリットもあります。
なぜなら、口座の名義は「奥さん」や「子ども」なので、亡くなったことが金融機関に知られたとしても、凍結の対象となることはありませんし、引き出しも可能です。
なので、必要となりそうな金額分、名義預金を作っておくというのも1つの方法です。
ただし、次の3点に注意が必要です。
- 亡くなった方の財産として相続税の課税対象となること。
- 口座の存在を知らせておくこと(あることを知らなければ意味がありません)。
- 口座の名義人が自由に使える場合は、贈与になる(贈与税の課税対象になる)。