相続税申告は必要なくとも、「準」確定申告は必要かも

財産の総額が一定額(3,000万円+600万円×相続人の人数)を超えると、相続税の申告が必要になります。

しかし、相続税申告が必要な人の数は、全国平均で100人中8人ほどです。

地域によってバラツキはありますが、増税が行われたとは言っても、まだまだ大多数の人にとって相続税は縁のないものかもしれません。

しかし、亡くなる直前まで何らかの所得があれば、所得税の確定申告が必要な人、または確定申告をした方がよい人が多いかと思います。

準確定申告とは?

通常、1年間(1月1日~12月31日)の所得を計算して、翌年3月15日までに申告・納税を行うのが「確定申告」です。

もし年の途中で亡くなった場合には、1月1日から亡くなった日までの所得を、亡くなった日から4か月以内に確定申告する必要があります。

これを「準確定申告」と言います。

納税が発生する場合は、4か月以内に申告しなければなりませんが、還付となる場合はこの期限を過ぎてもペナルティなどはありません。

実務的には、還付が発生する場合で相続税申告が必要な人は、相続税申告と準確定申告を同時にすることも多いです。

生前に事業や不動産賃貸などをしていた人たちは、準確定申告で納税が発生する場合が多いです。

一方、収入が年金だけの人たちも、準確定申告をすることで、年金から天引きされた源泉所得税が還付されることが多いです。

 

他には、次の2点も注意が必要です。

  1. 1月1日から3月15日までの間に亡くなった場合で、亡くなった日までに前年分の申告できていなければ、前年分の申告期限も亡くなった日から4か月以内になります(前年分の申告期限が少し延びることになります)。
  2. 生前に消費税の申告をしていた場合は、消費税についても準確定申告が必要になる場合があります。

 

準確定申告書独自の書き方・書類

準確定申告書の作り方は、基本的に通常の確定申告書と同じです。

しかし、準確定申告独自の書き方・書類があるので、注意が必要です。

準確定申告書の書き方

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申告書の第1表と第2表です。書き方は通常の確定申告とほぼ同じですが、違うのは

  • 申告書名は「準確定」申告とすること
  • 亡くなった方の名前の頭に「被相続人」をつけること

の2点です。

独自の書類

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準確定申告には独自の必要な書類が2つあります。1つが上の「確定申告書付表」です。

相続人が2人以上いる場合に必要な書類です。

相続人に関する情報(氏名・生年月日・続柄・住所・マイナンバーなど)を書いて、誰がいくら納税額を負担(または還付額を受領)するかを書きます。

通常は、法定相続分で負担(または受領)することが多いです。

また、還付金を誰か1人が代表して受け取る場合は、下記の「委任状」も作成する必要があります(各地域を管轄する国税局ごとに様式が若干違うようです。下は大阪国税局独自の様式です)。

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電子申告でも準確定申告ができます

これまで、相続税申告と準確定申告は電子申告には対応しておらず、紙で提出する必要がありました。

しかし、下記の通り、これらについても電子申告が可能となりました。

  • 相続税:昨年10月から電子申告可(令和元年中の相続分から)
  • 準確定申告:今年1月6日から電子申告可(令和2年分以後の準確定申告から)

準確定申告については、「委任状」以外の書類は電子申告で提出することができます(委任状だけは紙提出)。

なお、令和2年分以降、青色申告で65万円の特別控除を受ける場合は、従来の要件に加えて、電子申告をする必要があります(紙で提出する場合は55万円の控除)。

そのため、準確定申告でも電子申告をしなければ65万円の特別控除が受けられず、55万円の特別控除となってしまいますので、注意が必要です。

また、相続人代表の「利用者識別番号」(ID)を使って申告するので、下記のような「確認書」に署名と捺印をしたものをPDF化して、一緒に電子申告で提出するする必要があります。

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他にも注意が必要な準確定申告

今回は準確定申告の概要だけでしたが、他にも提出すべき書類や計算方法など、注意すべき点がたくさんあります。

それについては、明日以降触れたいと思います。