相続税申告書や関係書類は何年とっておけばよい?
会社や個人事業主については、会計に関する資料(元帳、領収書、請求書など)の保管期限が法律で定められています。
では、相続税申告や贈与税申告に関する資料(申告書や申告のために収集・作成した資料など)は何年間保管しておかなければならないのでしょうか?
答えは、「なし」です。
何年間保管しておかないといけないという決まりはありません。
しかし、長期間保管しておくことをおすすめします。
そうすることで、さまざまなメリットがあるからです。
目次
3年間保管しておくメリット
3年間保管しておくメリットは次の2つです。
税務調査に備えて(相続税)
相続税申告の税務調査は、申告期限(亡くなってから10か月後)からだいたい1~2年後のタイミングでやってきます。
税務調査に備えて、相続税申告の関係書類は3年はとっておくようにしましょう。
生前贈与加算の参考資料になる(相続税・贈与税)
亡くなる3年以内にした贈与金額については、相続財産に加算した上で相続税を計算するきまりがあります(相続した人や遺言で財産をもらった人への贈与にかぎられます)。
無くしてしまっていても、税務署に請求すれば、贈与税申告があったかどうかを確認できますが、手間も時間もかかりますので、そうならないように贈与税の申告書は3年はとっておきましょう。
5年間保管しておくメリット
計算を間違って相続税を多く払い過ぎていた場合でも、申告期限から5年以内であれば、還付の請求をすることができます(「更正の請求」といいます)。
その請求の参考資料として5年はとっておきましょう(ただし、請求がかならず認められるとは限りません)。
10年間保管しておくメリット
前回の相続から10年以内に次の相続が発生した場合は、前回の相続税申告でしはらった相続税を次の相続税申告で控除することができます。
これを「相次相続控除」といいます。
ただし、次の2点に注意が必要です。
- 前回の相続税申告で相続税をしはらった人が亡くなり、相続税申告が必要なこと。
- 経過年数や財産の増減具合などにより、前回しはらった相続税を全額控除できるわけではないこと。
「相次相続控除」の計算に必要な数字が前回の相続税申告書にのっていますので、きちんととっておきましょう。
ずっと保管しておくメリット
将来の相続税申告の役に立つ(相続税)
相続税申告にかんする資料をずっととっておくことで、将来の相続税申告や遺産分割の「重要参考書類」になります。
たとえば、不動産については、前回の申告でどのように評価したかがわかり、次の申告において参考となります(前回の申告内容にとらわれてはいけないのですが)。
評価につかった図面をのこしておいてあげると、より親切です。
また、専業主婦や若い人が預貯金をたくさん持っている場合、ご主人や親の相続税申告でいわゆる「名義預金」とみられる可能性もありますが、預貯金をたくさん持っている理由が「実家の親から相続した」「祖父母から遺言で財産をもらった」などであれば、「名義預金」とはなりません。
それを裏付けるものとして、過去の相続税申告に関する資料はたいへん有用です。
相続時精算課税制度で贈与した財産の把握に役立つ(相続税・贈与税)
通常の贈与にかえて、「相続時精算課税制度」による贈与を選択することができます。
(制度の概要、比較については、下記の記事をご参照ください。)
相続時精算課税制度により贈与した財産金額については、通常の贈与とはちがい、何年前のものであっても、相続財産に加算した上で、相続税を計算する必要があります。
(2003年から始まった制度ですので、いまのところは最長でも17年ですが)
このため、同制度による贈与税申告書は、すくなくとも贈与者の相続税申告まではとっておいた方がいいです。
まとめ
相続税や贈与税の申告書を紛失してしまっていても、税務署で閲覧することができますが、コピーをもらうことはできません(手書きで写すか、写真をとる(動画不可)しかありません)。
また、相続税申告書を提出した人全員で税務署に行くか、行けない人がいる場合は委任状と印鑑証明書を用意しなければならず、とても面倒です。
それならば、場所をとるかもしれませんが、長期間保管する方がおすすめです。