申告期限まで日がない時の相続税申告①

相続税の申告と納付は、通常、相続発生(亡くなられて)から10か月以内にしないといけません。仮に、今日(2020年1月9日)相続が発生したとすると、申告と納付の期限は、2020年10月9日となります。逆に、今日(2020年1月9日)が申告・納付の期限となるのは、2019年3月9日に亡くなられた方が対象です。

しかし、

  • 仕事が忙しくて、何も手を付けられていない・・・
  • 相続税がかかるとは思っていなくて、何もしていなかった・・・
  • 後でやろうと思っていた・・・

などの理由で、申告期限が間近になった時、どのように対処すればよいのでしょうか?

相続税申告は、やることが多いし、時間がかかる・・・

相続税申告においてやるべき作業は、ざっくり言うと次の通りです。

  • 相続人の確定
  • 相続財産と債務の調査・金額算定
  • 遺産分割協議(遺言書がない場合)
  • 申告書作成・提出
  • 納税

相続人の確定

誰に相続権があるか、相続人は何人かを確定させる作業です。具体的には、

  1. 亡くなられた方の出生から死亡までの間に作られた戸籍
  2. 相続人の現在の戸籍謄本

を集める必要があります。相続税的には、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)の法定相続人数を確定させるのに必要です(申告書に添付が求められています)。

出生から死亡まで同じ自治体が本籍地であれば、その自治体の役所に行けば1回で済みます。しかし、結婚や転籍などで、本籍地が何回も変わっていると、それぞれの自治体で戸籍を集める必要があります。遠方にある場合は、郵送で取り寄せなければならず、時間がかかってしまいます。

また、後述する残高証明書を取り寄せや、相続財産を解約換金する手続き、不動産の相続登記などでも戸籍謄本が必要なので、場合によっては複数部取っておく必要もあります(いったん提出して、あとから原本の還付を受けることができる所も多いですが)。

なお、最近では、「法定相続情報一覧図」というA4の紙1枚で代用することができます。これは、戸籍謄本類一式を法務局に持ち込み、A4の紙1枚に相続人の関係図(家系図のようなもの)と必要事項を書いたものと一緒に提出し、認証を受けたものです。この紙1枚で、税務署提出用にも、相続手続き用にも使うことができます。

相続財産と債務の調査・金額算定

相続税は、財産から債務を引いた正味の財産額(と相続人の数)によって決まりますので、何があるかと、それがいくらなのかということを調べる必要があります。主だったものは、次の通りです(これ以外にも多岐に渡ります)。

  • 不動産(土地・家屋)
  • 有価証券(株、投資信託、国債、社債など)
  • 預貯金
  • 生命保険金・死亡退職金
  • 未納の税金
  • 病院代
  • お葬式の費用
    (最後の3行は債務)

これらの調べ方・計算の仕方を1つ1つお話しているとキリがありません(本題でもありません)が、共通する手順としては次の通りです。

  1. 資料・情報集め
    →名寄帳、固定資産評価証明書、図面(以上、不動産用)、残高証明書、通帳、保険金の支払明細書、領収書、請求書など
  2. 金額算定
    →基本的には「財産評価基本通達」という通達によって計算します。

1の資料・情報集めは、近隣に(不動産が所在する)役所や金融機関があればまだよいのですが、遠方にある場合は、やはり郵送などで対応する必要があり、必要な資料を送って、証明書等を返送してもらうのに時間がかかります。

役所や金融機関は、基本的に平日の日中しか開いていないところが多いですので、お仕事をされている相続人の方が取得しようと思えば、仕事を休まなければならないこともあります。

さらに、資料を集める前段階として、戸籍謄本や本人確認書類(免許証など)など、様々な書類を用意する必要があり、かなり面倒です。

また、不動産(特に土地)の評価に当たっては、どのような土地かを現地で確認する必要があります(少なくとも、私が申告のご依頼をいただいた場合は、立ち入って行けるところは必ず行っています)。

資料や情報が集まれば、これらをもとに財産や債務の金額を計算していきます。集めた資料に書かれている数字を落とし込めばいいものもありますが、土地の評価は、注意しなければ、評価減の要素を見落とすことが多く、高めで計算しかねません。

遺産分割協議(遺言書がない場合)

遺言書がない場合で、相続人が2人以上いる時は、どの財産を誰がもらうかの話し合いをする必要があります(遺産分割協議)。

それが決まれば、「遺産分割協議書」と書類を作成して、全員の署名と捺印(実印)をする必要があります。

仲良く、すんなりと決まればよいのですが、そうでない場合にはやはり時間がかかってしまいます。特に働いている相続人がいれば、話し合いのために全員が集まるのにも一苦労です。

また、次の相続(例えば、今回お父さんが亡くなった場合には、将来のお母さんの相続)のことを考えて、今回の相続で分け方を工夫しようとするなら、それを考える時間も必要です。

申告書の作成・提出

ここまでくれば、後は申告書を清書して、税務署に提出するだけですが、相続税の申告書は、確定申告とは違い、添付する資料の量が膨大になります。

納税

相続税の納付書(税務署の窓口でもらえます)に納税額を記載し、金融機関で納付します。相続した財産から支払う場合は、解約換金の手続きが必要ですし、足りない場合は工面が必要です。

期限ぎりぎりの時はどう対処する?①

ざっくり書いただけでも、相続税申告ではこれだけやることがあります(細かいことを言えば、本当はもっとやることがあります)。

財産の内容にもよりますが、きっちりやろうと思えば、少なくとも2,3か月は時間が必要です。

では、期限が間近に迫っているにも関わらず、何も手を付けられていなければ、どう対処すればよいのでしょうか?考え方としては、次の2つがあります。

  1. 期限を過ぎてもよいから、きっちり仕上げてから提出する。
  2. 100点満点の出来でなくてもよいから、とりあえず期限までに提出する(後から修正申告する)。

長くなりましたので、続きは明日(1/10)お話します。