申告期限まで日がない時の相続税申告②

昨日(1/9)の続きです。昨日の記事では、相続税申告にはやることがいっぱいあるにも関わらず、期限間近になっても何も手をつけられていなかったら、どうするかというところで終わっていました。

期限ぎりぎりの時はどう対処する?②

その方法は、2つあります。

  1. 期限を過ぎてもよいから、きっちり仕上げてから提出する。
  2. 100点満点の出来でなくてもよいから、とりあえず期限までに提出する(後から修正申告する)。

これらについてお話する前に、申告期限に間に合わなかった場合のデメリットについて説明します。

デメリット① 無申告加算税と延滞税が課される

相続税に限らず、どの税目にも言えることですが、税額が出る場合に、申告が遅れると、「無申告加算税」と「延滞税」が課されることがあります。

デメリット② 各種特例が使えないことがある

相続税申告には、税額を大きく減らせる特例としてよく使われるものに、次の2つがあります。

  1. 小規模宅地等の特例
    事業用や自宅用の宅地を相続した場合に、評価額の最大5割または8割を相続税の課税対象から減額できるという特例です。

  2. 配偶者の税額軽減
    配偶者が相続した財産額が、法定相続分と1億6千万円のどちらか大きい方までであれば、相続税がかからないという特例です。

これらの特例は、申告期限までにどの財産を相続するか決まってなかったり、期限までに申告していなければ、受けられない場合があります(受けられる場合・受けられない場合は後段で)。

期限を過ぎてもよいから、きっちり仕上げてから提出する場合

この方法のメリットは、もう1つの方法に比べ、申告の手間は1回で済むという点です。

上で述べた「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などを使って、相続税をゼロにできるのであれば、無申告加算税などのペナルティがかからないので、こちらの方がいいかもしれません。

期限後に申告をした場合でも、申告書の提出までに分割方法(分け方)が決まっていれば、特例を受けることができます。

なお、分割方法が決まっていない場合でも、
「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を一緒に出し、3年以内に分け方が決まった段階で、修正申告(または更正の請求)をすれば、最終的には特例を受けることができます。3年以内に決まらなければ、延長も可能です。

逆に、この「分割見込書」を一緒に提出できていなければ、特例を受けることができませんので、注意が必要です。

とりあえず期限までに提出する(後から修正申告する)

期限までに100点満点の申告書ができなくても、分かっているところまでで取り敢えず申告しておき、その後、財産の精査ができれば、申告をやり直す方法です。

やり直した結果、税金が増える場合は「修正申告」、減る場合は「更正の請求」という手続きをします。

この方法であれば、取り敢えず期限までには申告したという事実ができますので、無申告加算税が課されることはありません。

また、最初の申告の時点で分割方法が決まっていなければ、仮に法定相続分で取得したものとして相続税を計算します。

この場合も、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておかないと、後から各種特例が受けられませんので、必ず提出しておく必要があります。

財産金額の計算をする上で、本来であれば役所や金融機関から証明書などを発行してもらう必要がありますが、そんな時間的余裕がない場合、例えば次のような資料があれば、概算的な計算はできます。

  • 不動産
    ・固定資産税の納税通知書・・・毎年5月頃に、不動産がある自治体から届きます。場所の特定と大体の評価額が分かります。
    ・GoogleMap・・・遠方でも簡単な現地確認ができます(ただし、タイムラグあり)。
  • 有価証券
    ・取引残高報告書・・・証券会社から定期的に届く、保有銘柄の一覧や取引履歴です。どのような銘柄を持っていたかが分かります。
  • 預貯金
    ・通帳・定期預金証書・・・口座が凍結されていなければ、ATMで記帳することで、亡くなられた日の残高が分かります。分からなければ、直近の残高を使います。
  • 生命保険金
    ・保険証券・保険内容のお知らせ・・・保険金を請求していなくても、大体いくら貰えるかは分かります。
  • 最後の病院代、お葬式費用
    ・領収書、請求書・・・これは手元にあるかと思います。

各種特例を使っても相続税が出そうな場合は、こちらの方法が良いでしょう。

当事務所で、期限間近(期限前2か月以内)にご依頼いただいた場合は、財産の多寡に関わらず、こちらの方法を取ります(もちろん、集められる資料や情報はぎりぎりまで集めます)。

まとめ

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の特例は、申告をしないと使えないのですが、これを使えば相続税がゼロになるから、申告しなくてもいいと思われる方も多いようです。

昨日の記事でも述べたように、相続税申告は確定申告などと比べると、集める資料ややることがとても多いです。

余裕をもって取り組むようにしましょう。