子や孫に「大金」を贈与することは「いいこと」なのか?

3日連続で贈与の話をします(3部作というわけではありませんが・・・)。

子や孫に「大金」を贈与するのはいいことなのか?

相続税対策としてよく取られる手法が、お子さんやお孫さんへ毎年まとまったお金を贈与する方法(「暦年贈与」といいます)です。

非課税枠の110万円以下に抑えることもあれば、ある程度相続税がかかると予想される方は、贈与税を支払ってでも200万円、300万円贈与するケースもよくあります。財産規模がさらに大きい方は、500万円贈与するケースもあります。

税務的には何ら問題のない方法です。しかし、税金の話は抜きにして、お子さんやお孫さんに、こんな「大金」を贈与するのは、本当によいことなのでしょうか?

何円から「大金」なのかは人それぞれでしょうが、決して少なくはない金額です。300万円とか500万円であれば、若い人にとっては年収に匹敵、あるいは年収を超える金額です。

そんな「大金」を毎年もらえると分かっていたら、まじめに働かなくなる人も中にはいるでしょうし、好き放題使ってしまう人もいるでしょう(もちろん、将来のために貯蓄したり、投資に回したりする人もいるでしょう)。

もちろん、昨日(1/7)の記事で、贈与の要件として、「もらった人がもらった財産を自由に処分できること」と書いており、好き放題使っても何ら問題はありません。

しかし、いわゆる教育的な観点から、相続税対策のためとはいえ、贈与をためらったり、お子さんやお孫さん名義口座は作っているけれどもその存在を知らせなかったりすることもあるかと思います。

今日は、相続税対策として有効な生前贈与をしつつ、お子さんやお孫さんのためにもなる贈与についてお話をしたいと思います。

「毎年」「同じ時期に」「定額」贈与をしない

有効な贈与方法の1つとして、「毎年」「同じ時期に」「定額」贈与をしないことがお勧めです。

理由は単純で、毎年もらえると分かっていたら、期待をしてしまうからです。

例えば、
2020年は、1月に200万円をあげる。
2021年は、何もあげない。
2022年は、4月に300万円をあげる。
・・・
という具合です。

人によっては、毎年贈与しないと相続税対策の効果が薄まる恐れもありますが、お子さんやお孫さんが複数人いる方は、毎年あげる相手を変えるという方法もあります。その場合は、なるべく不平等にはならないように注意が必要です。

使い道を限定して贈与する

もう1つは、使い道を限定して贈与する方法です。

繰り返しになりますが、贈与は「もらった人がもらった財産を自由に処分できること」が要件の1つですので、もらった人は好きなように使うこともできます。

しかし、もらう(予定の)人がまとまったお金を必要とするタイミングで、その資金を贈与することで、結果的に使い道を限定することも可能です。

若い世代の方が、まとまったお金を必要とする人生のイベントは、次のようなものがあるのではないでしょうか。

  1. 進学・留学
  2. 結婚・出産・子育て
  3. 住宅購入

これらのイベントのために、まとまったお金を贈与した場合でも、贈与税が非課税になる措置がそれぞれ手当されています。

  1. 進学・留学→教育資金の一括贈与の非課税特例(最大1,500万円)
  2. 結婚・出産・子育て
    →結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例(最大1,000万円)
  3. 住宅購入→住宅取得等資金贈与の非課税特例(今年3月末までは最大3,000万円)

なお、1と2は、将来の分も含めて一括で贈与しても非課税になるという制度ですが、昨日(1/7)の記事でも述べたように、必要な都度(大学に進学した時、結婚式をする時等)必要な金額だけ渡すのであれば、110万円の非課税枠は関係なく、贈与税の課税対象とはなりません。

将来のために貯蓄・投資させる

お子さんやお孫さん名義の口座に振り込む形でお金を贈与した後、そのお金を原資に、将来(お子さんやお孫さんがリタイアした後)のために貯蓄や投資をさせるのも、有効な方法です。

そのまま口座に預けていてもよいのですが、その口座を振替口座として、次のようなことに使わせることで、お子さんやお孫さんの老後への備えや資産形成が可能です。

個人年金保険

一定の年齢(60歳や65歳など)になったら、一定期間(5年、10年、20年など)、毎月(または毎年)一定額の年金をもらうための保険です。お子さん達が保険契約者・被保険者・受取人になり、その口座から掛け金を支払います。
そうすることで、お子さん達の所得税の節税にもなります(生命保険料控除)。

iDeCo

個人型の確定拠出型年金で、積立金は60歳まで引き出しが出来ませんが、60歳以降に年金または一時金で受け取ることができます。掛け金(職種などにより月1.2~6.8万円)の運用益は非課税です。また、お子さん達の所得税の計算で、掛け金全額を控除することができ、節税のメリットが大きいです。

NISA・つみたてNISA・ジュニアNISA

毎年一定額の非課税投資枠が設定され、株などの配当金や売却益が非課税となります(NISA:120万円、つみたて:40万円、ジュニア:80万円)。

特に、投資をするための余剰資金がない、二の足を踏んでいるという人には、もらったお金なので使いやすいのではないかと思います。

まとめ ー「何もしない」という対策

ここまで述べてきて身も蓋もないのですが、「何もしない」というのも1つの考え方かと思います。理由は次の通りです。

  1. 若い人たちには敢えて苦労をさせたい。
  2. 納税資金が十分にあるのなら、わざわざあげなくてもよい。
  3. 贈与であげてしまうと、自分たちの生活資金が不足してしまう。介護費用のために取っておきたい。

このような考え方もありだと思いますし、税金だけに囚われない考え方も持っておく必要があるのではないでしょうか?

【編集後記】
昨日は、以前使っていたパソコン(開業前に使っていたもの)やスマホ、ガラケーを無料で引き取ってもらいました。資源として有効活用してもらえたら幸いです。