その「贈与」、本当にできていますか?~贈与成立の条件~

昨日(1/6)の記事の中で、贈与が成立する条件として、次の3つを挙げました。

  1. あげる人が「あげます」という意思表示をしていること
  2. もらう人が「もらいます」という意思表示をしていること
  3. もらった人が、もらった財産を自由に処分できること

今日は、この条件についてお話したいと思います。

「あげます」「もらいます」の意思表示の仕方

「あげます」「もらいます」の意思表示は、口頭でもOKです。

しかし、それでは、本当に意思表示があったのかが後から疑われる(税務署や他の相続人などから)ことにもなりかねないので、形に残すことが必要です。

贈与契約書の作成方法

形に残す方法として有効なのが、贈与契約書の作成です。

贈与契約書

ここでのポイントは、次の通りです。

  1. あげる人・もらう人双方が意思表示をしていること。
  2. どのような財産を、いつまでに、どのような方法であげるかを明示していること
    (ここでは、【現金300万円】を【令和〇年〇月〇日】までに【銀行振込】によってあげることとしています)。
  3. 最後に、契約年月日の記載と、あげる人・もらう人双方が署名・押印していること
    →本文はパソコンで作成してもよいのですが、最低限、最後の署名だけはあげる人・もらう人双方の自筆が必要です。それぞれの筆跡によって、贈与契約の意思があったことの証明になるからです。
  4. 2通作成し、あげる人・もらう人それぞれで保管していること。

なお、もらう人が未成年者である場合は、その親権者(親)が代わりに署名・押印する必要があります。

その場合は、もらう人の後ろに、親権者の住所・氏名欄を追加します。ただし、親(父)から子への贈与の場合は、もう1人の親(母)が親権者として署名・押印します。

実際に贈与を実行する

贈与契約書さえ作っておけば安心というわけではありません。当然の話ですが、実際に贈与(財産の移動)をして、意思を実行おきましょう。

現金であれば、もらう人名義の口座に振り込みます。こうすることで、口座に贈与の記録を残すこともできます。

不動産の場合は、登記が必要です。

余談ですが、不動産を贈与した場合は、贈与税の他に、不動産取得税と登録免許税がかかります。不動産を相続した場合は、不動産取得税は不要、登録免許税は贈与の場合の5分の1で済みます。こういった点も踏まえ、不動産を贈与する・しないを考えましょう。

「自由に処分できる」とは?

それでは、3つ目の「もらった人が、もらった財産を自由に処分できる」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

端的に言えば、「使おうが、貸そうが、売ろうが、捨てようが自由」と言うことです。

もし、この「処分」をする際に、あげた人の許可がいるような状態であれば、「自由に処分できる」とは言えませんし、そもそも、もらった人が手元で使える状態でなければ、贈与が行われたとは言えないのです。

現金を例に取ると、おじいさんが孫名義の預金口座に贈与資金を振り込んだとしても、その預金口座の通帳や印鑑をおじいさんが保管していて、孫が自由に使える状態でなければ、そもそも贈与が成立したとは言えません。

また、贈与契約もなく、孫やその親(子)が孫名義の預金口座があることを知らないということなら、「あげます」「もらいます」の意思表示も成立していません。

このような孫名義の預金口座は、いわゆる「名義預金」と呼ばれ、おじいさんの財産とみなされ、おじいさんの相続税の対象となることがあります。相続税の税務調査でもよく問題になります。

よく、贈与税の申告がされていて、贈与税を納めていればOK(税務署の受付印がある申告書と納付書の控えが証拠になる)という話がありますが、贈与税の申告・納税は贈与成立の条件ではありませんので、注意が必要です。

まとめ

相続税対策のつもりで「贈与」を続けていたけれども、実は贈与にはなっていなかったというケースも多いものです。

形式(契約書を作る・名義を変える)と実質(もらった人が自由に使える)の両方を満たした贈与になるように気を付けましょう。

 

【編集後記】
昨日は、子どもたちと一緒にヨドバシカメラ梅田に行きました。もらったお年玉で好きなものの買い物をさせました。
残りは本人たちの口座に貯金です。