【不動産を売却した人向け】購入金額が分からない!時の対処法
昨年不動産を売却し利益が出た場合には、確定申告が必要です。
(マイナスになった場合も申告をした方がいい場合もあります。)
この利益金額は、次のように計算されます。
売却益=売却金額ー取得費ー諸経費
この「取得費」とは、いわゆる購入金額に経年劣化を反映させたものですが、昔に購入したものだと購入時の資料(売買契約書など)が残っていない場合があります。
しかし、そこで諦めてしまうと、売却金額から引けるものが極端に少なくなってしまいます。
そんな時の対処法についてお話したいと思います。
目次
購入金額が分からない!時の対処法
過去の確定申告書を見てみる(事業用の不動産限定)
事業用の不動産(商売で使用していた不動産や収益物件など)については、過去に確定申告で「減価償却」をしているかと思いますので、決算書(白色申告なら収支内訳書)を読めば載っているかもしれません。
登記事項証明書(登記簿謄本)の「乙区」を見てみる
その不動産を、金融機関からの借入でもって購入している場合には、その不動産を担保にお金を借りていることが多いです。
その場合は、その不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)の「乙区」という欄を見てみましょう。
そこには、登記の目的として「抵当権の設定」とあり、次のようなことが書かれています(関係するところだけ抜き出し)。
- 登記の原因:何のために抵当権を設定したか(〇年〇月〇日金銭消費貸借同日設定と書かれていることが多いです)
- 債権額:借入金額のことです。
- 債務者:お金を借りた人(通常はその不動産の当時の所有者です)
- 抵当権者:お金を貸した人(金融機関など)
このうち、「登記の原因」のところで金銭消費貸借(お金の借入)の日付が購入日と近ければ、この不動産を購入するためにお金を借りたということが分かります。
その借りた金額は「債権額」で分かりますので、その「債権額」=「不動産の購入額」と言えるかと思われます。
パンフレットやチラシを探してみる(取り寄せてみる)
キャッシュで不動産を購入されている場合は、乙区に何の記載もありませんので、いよいよ不動産の購入金額が分からなくなります。
その不動産がマンションである場合は、分譲時に販売会社などがパンフレットやチラシを出していることが多いです。
過去のパンフレットを販売会社や不動産業者などから取り寄せられないか一度聞いてみるのもいいかと思います。
パンフレットには、部屋のタイプ別に販売金額が記載されており、有力な証拠になり得ます。
それでも分からない!場合
それでも購入金額が分からない場合は、取得費を売却金額の5%で計算せざるを得ないのですが、不動産の売却で出た利益に対しては、その税額を軽減(または繰越)するための様々な特例が設けられています。
それを使えば、どちらにしても税金がかからない場合やかなり安くなる場合は、無理して購入金額を調べなくてもいいかと思います。
また、それらの特例も使えず、税金がかかるとしても、売却金額<税金となることはありませんので、税金分(+人によっては健康保険料分も)のお金だけ取っておくのがよいかと思います(購入から売却の期間などにより、約14~40%ほどかかります)。
土地と建物の金額の内訳が分からない!時の対処法
土地・建物合わせた購入金額は分かったものの、その内訳が分からないということもあり得ます。
なぜ内訳を知らないといけないかと言うと、建物については経年劣化した分の金額を購入金額から差し引いて考える必要があるからです(減価償却といいます)。
購入時の契約書があって、そこに購入金額に含まれる消費税額が書いてあれば、その当時の消費税率から逆算して建物の金額を割り出すことも可能ですが(消費税がかかるのは建物だけ)、古い不動産だと消費税額が書いてないことも多く、また登記簿謄本やパンフレットなどから調べた場合は余計に分かりません。
その場合の対処の仕方についても解説します。
「建築標準価額」から建物代を割り出す
この方法は、国税庁が公表している「譲渡所得の申告のしかた」という手引きにも載っている方法です。
簡単にいうと、次のように計算します。
- 構造別・建築年別に設定された「1㎡あたりの建築単価」に床面積を掛けて、新築当時の金額を計算する。
- 1の金額から、「新築~購入までの経年劣化した金額(減価償却費)」を引く。
詳しくは、こちら↓です。
こうして計算できた建物代と全体の購入金額との差額が土地代となります。
当時の土地代を割り出す
逆に、当時の土地代を割り出すという方法もあります。
購入当時の「路線価」が分かる場合は、
- その路線価を使って、土地の「相続税評価額」を計算し、
- 【相続税評価額÷80%】で時価を割り出す
という方法です。
平成26年分までは国税庁のHPでも公表されていますし、それより前の分については都道府県立の図書館などに所蔵されていることが多いです。
ただし、「相続税評価額」の計算は結構難易度が高めなので、ご注意ください。
まとめ
不動産の購入金額が分からないと、売却後の申告の時に不利ですし、不便です。
自分の代で売却するにしても、次の代で売却するにしても、購入時の契約書は大事に取っておきましょう。