最初の申告で適用しておかないと後からやり直しが効かない制度
所得税の確定申告では、税金が優遇される制度が色々設けられています(所得税に限らず、法人税や相続税でもそうですが)。
これらは、最初に申告した時には適用を忘れていても、後からやり直しが効くものもありますが、忘れたまま申告してしまうと取り返しのつかないものもあります。
これを専門用語で「当初申告要件」と言います。
「当初申告要件」に該当する所得税の制度についてお話したいと思います。
目次
当初申告要件が存在するポピュラーな制度
住宅ローン控除
一番有名な制度が、「住宅ローン控除」です。
ローンを組んで自宅を購入した場合は、10~13年間、毎年最大40万円(長期優良住宅なら50万円)の控除を受けられるという制度です。
これについては、最初の確定申告で適用することが条件になっており、基本的には後からのやり直し(更正の請求)では適用ができないことになっています。
ただし、杓子定規に「やり直しはできません」としていると、かなりの数の人々が影響を受けるため、更正の請求を出せば後から住宅ローン控除が認められることもあるようです。
法律でも「やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは」後出しでも住宅ローン控除を認める旨の記載はあります。
ただし、「基本は」最初の申告で適用させないといけませんし、必ずやり直しが認められるとは限りませんので、そこはご注意ください。
マイホームの3,000万円特別控除
自宅を売却した場合には、売却益から最大3,000万円を控除できる制度です。
これについても同じように、通常は最初の申告で適用させなければならず、後出しで認められるのは「やむを得ない事情があると税務署長が認めるとき」と定められています。
とくに3,000万円控除については、売却のタイミングによっては、「住宅ローン控除」との二者択一になることもありますが、最初の申告でどちらか一方を選択していて、後から修正でもう一方に変える、ということはできませんので、注意が必要です。
株取引(配当金や売買、損失繰越など)関係
- 上場株式などの配当金
- 特定口座での売買損益
- 前年からの売却損失の繰り越し
これらについては、当初の申告で「申告する/しない」や課税方式(総合課税/分離課税)などを選ぶ必要があります。
当初の申告で選択した方法については、後からやり直しが効きません。
特に、これらについては「やむを得ない事情」という文言が法律にはありませんので、さらに注意が必要です。
期限内なら何回でもやり直し可能!
ただし、本来の申告期限(令和2年分なら令和3年4月15日)までであれば、上の制度も含めて何回でもやり直しが可能です。
期限を過ぎてからやり直しする場合は「修正申告」(税額が増える場合)や「更正の請求」(税額が減る場合)という方法になりますが、期限内にやり直しする場合は「訂正申告」と言って、当初申告と同じ扱いになります(当初申告の上書きになります)。
当初申告=期限内申告 ではない!
1つ注意していただきたいのは、「当初申告=期限内申告」ではない、ということです。
「当初申告」とは、最初に出した申告、ということなので、期限を過ぎていてもその年度について初めての申告なら「当初申告」ということになります。
「本来の期限に遅れてしまったから、特例(住宅ローン控除など)は受けられない!」ということはなく、それがその年度分最初の申告なら、期限後でも特例の適用は可能です。
ただし、期限後の申告の場合は、出した瞬間が「申告期限」となりますので、その後訂正申告はできません(つまり、そこから上で述べた特例を受けるためのやり直しは、基本的にはできません)ので、要注意です。