生命保険契約は【契約者】【被保険者】【受取人】が違えば税金も違う!-契約の際は気をつけましょう

 

「相続対策に」ということで、保険への加入を勧められた経験はありませんか?

しかし、入り方に気をつけないと、せっかくお金をかけたとしても、狙った効果が得られない可能性があります。

 

生命保険の3人の登場人物ー【契約者】【被保険者】【受取人】

生命保険の契約には、登場人物が3人存在します。

  • 契約者
    生命保険の契約を保険会社と結ぶ人。
    保障内容の決定や変更、保険料の支払いなどもこの人がおこなう。
  • 被保険者
    保険の対象となる人。
    かんたんに言うと、被保険者に何か(死亡、病気、入院、一定の年齢に達する等)があれば、保険金がおります。
  • 受取人
    保険金を受け取る人。

同一人物がこれらの役割のうち2つ以上を兼ねることもあります。

 

3人の登場人物が誰になるかで税金のかかり方が違ってくる

そして、この3人の登場人物が誰になるかで、税金のかかり方が次のように異なってきます。
(Aという人が亡くなった場合を前提にお話します。)

No. 契約者 被保険者 受取人 税金 備考
A A 相続人 相続税 非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用
A A 相続人以外の人 相続税 ・非課税枠の適用なし
・通常の1.2倍の相続税がかかる。
A A以外の人 誰でもOK 相続税 ・非課税枠の適用なし
・Aの相続人が相続します。
B A B 所得税 Bの所得税の課税対象になります。
B A C 贈与税 BからCへ贈与があったものとなります。

この中で、相続対策としておすすめなもの、相続対策として使うなら気をつけるべきものを挙げてみたいと思います。

相続対策としておすすめな保険のタイプ

相続対策としておすすめなのは、①と④です。

①については、手持ち資金に余裕があり、非課税枠(500万円×法定相続人の数)に空きがあるなら、相続税対策としておすすめです。

高齢の方で、通常であれば保険に加入できない方でも、「一時払い終身保険」(保険料を一度に全額支払うタイプの終身保険)であれば加入できることも多いです。

また④については、AからB(Aの相続人となり得る人)へ保険料相当額のお金を贈与し、Bが保険に加入することで、Aの相続税対策にもなりますし、Bの納税資金確保にもつながります。

Bが受け取る保険金は、所得税の課税対象となるのですが、対象となるのは下記の計算式で計算した金額なので、そこまで税金の負担は大きくはないかと思います。

(保険金ー掛けてきた保険料ー50万円)×2分の1

Aが保険に入れなければ、B自身を被保険者にするのもありです。

Aに万が一のことがあれば、Bは保険を解約して、解約返戻金を使うこともできます(税金のかかり方は同じです)。

相続対策として使うなら気をつけるべきもの

一方、注意が必要なものは、②・③・⑤の保険です。

②:相続人以外の人が保険金を受け取ると、通常よりも相続税がかかる

子どもが相続人になる場合は、孫や子どもの配偶者、きょうだい、甥姪は相続人にはなれませんが(代襲相続や養子になっている場合などは除きます)、保険を使うことで、相続人でなくても財産を遺してあげることはできます。

相続人ではないけれども、どうしてもこの人に財産を遺したいという場合は、遺言とともに検討してもよい手段かもしれません。

ただし、その場合は、相続人が受け取るよりも相続税が多めにかかるというデメリットがあります。

  • 相続人以外が受け取れば、非課税枠(500万円×法定相続人の数)がない!
  • 相続税がかかる場合は、通常の2割増しとなる!

③:被保険者≠被相続人であれば、通常の財産と同じ扱い

被保険者≠被相続人(ここではA)であれば、被保険者が亡くならなければ、保険金は発生しません。

ただし、つみたて型の保険(解約すれば解約返戻金が多額に出るもの)であれば、解約返戻金分の財産価値がありますので、いわば「預金」と同じような扱い(保険会社に保険料という名のお金を預けているイメージ)となり、相続税の課税対象となります。

そのため、非課税枠の適用(500万円×法定相続人の数)もありません。

また、遺言書を書いていなければ、話し合い(遺産分割協議)で新しい契約者を決めなければならず、手間がかかってしまいます。

このタイプの契約は、Aが高齢で保険に入れなくて、やむなく家族を被保険者にする、というケースで発生する契約ですが、相続税は普通にかかって、手続き先(保険会社)が1つ増えてしまうというデメリットがあります。

契約者の地位を被保険者でもある相続人が引き継ぐことで、二次・三次の相続税対策としては使えるメリットもありますが、注意は必要です。

⑤:登場人物が全員違うと贈与税がかかることがある

【契約者】【被保険者】【受取人】が3人とも別の人物で、被保険者が亡くなると、【契約者】(保険料を負担した人)から【受取人】(保険金をもらった人)への贈与があったものとして、贈与税の課税対象になります。

この場合は、相続税のような非課税枠(500万円×法定相続人の数)も、所得税のような軽減策(保険料や50万円を引いた後に2分の1)もありませんので、保険金に対してほぼダイレクトに贈与税がかかってきます。

※一応、110万円の基礎控除額や「相続時精算課税制度」という選択肢はあるにはありますが・・・

このタイプは特に注意が必要かと思います。

 

まとめ

言われるがままに保険に入ろうとすると、その契約形態によっては、狙った効果が得られないばかりか、かえって余計な税金を支払ったり、手間だけがかかったりする恐れがあります。

本当に相続対策になるのか、加入前によくよく検討するようにしましょう。