今年の年末調整、「基礎控除申告書」に注意!
2017年の年末調整までは、役員・従業員に書いてもらう申告書は2枚だけ※でした。
※住宅ローン控除(2年目以降)を年末調整で行う場合はプラス1枚になります。以下も同じ。
しかし、2018年より「配偶者控除等申告書」というものが加わり、さらに今年(2020年)の年末調整よりこの申告書が2つの申告書も兼ねるようになり、かなり複雑になりました。
- 扶養控除等申告書
- 保険料控除申告書
- 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
最後の「基礎控除申告書兼~」(以下、このように表現します)は、ちょっと注意が必要です。
「基礎控除申告書兼~」とは?
「基礎控除申告書兼~」とは、3つの控除額を計算するための書類です。
基礎控除申告書
これまでは、個々の事情(収入、家族、保険料の支払など)に関係なく、一律38万円を所得から控除できていました。
しかし、2020年分からは以下のように変わり、無条件で一定額を控除できなくなりました。
- 控除額38万円→48万円に増加
- ただし、「合計所得金額」に応じて基礎控除額が、下記の表の通り変動
- 年末調整で「基礎控除申告書」の欄に記載がなければ、基礎控除を受けることができない。
合計所得金額 | 基礎控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
この欄に関しては、後述します。
配偶者控除等申告書
年末調整をする人の年収や配偶者の年収によって、「配偶者控除」(または配偶者特別控除)額が変わるようになったため、どの控除額になるかを選ぶための申告書です。
昨年(2019年)まではこの機能だけでしたが、今年(2020年)より前項と次項の機能も追加されています。
所得金額調整控除申告書
年間の給与収入が850万円を超える人については、超える部分の10%(上限15万円)を給与所得から差し引けることになりました。
ただし、850万円超なら誰でもOKというわけではなく、下記のいずれかに該当する人のみが「所得金額調整控除」を受けることができます。
- 本人、配偶者(同一生計)、扶養している親族の誰かが「特別障害者」に該当
- 扶養親族が23歳未満
給与以外に大きな収入があるなら、基礎控除が受けられないかも?
基礎控除については、給与所得が2,400万円を超えなければ(総額にすると2,610万円超えでなければ)、受けることができます(そもそも総額が2,000万円を超えれば、年末調整はできず、確定申告をしなければならないのですが)。
ただし、基礎控除申告書では、給与だけでなく、他の収入を書く欄もあります。
これも合わせて2,400万円超なら、基礎控除額に制限が加わりますので、注意が必要です。
たとえば、「普通の」サラリーマンの方でも、下記のような収入があれば、2,400万円を優に超える可能性はあります。
ケース | 備考 |
不動産を売却した場合 | 3,000万円控除などを考慮する前の金額です。相続で取得した不動産なら、購入金額が分からないことが多いですので、「売却益」が多額になる可能性もあります。 |
株や先物取引の運用益 | 前年以前からの損失がある場合は、その損失との相殺前の金額です。 |
退職金 |
なお、この欄は(配偶者控除の欄もそうですが)見積金額を書くようになっていますので、実際の金額とはずれる可能性もあります。
その場合は、確定申告で計算し直すこともできますので、この申告書を書く段階ではそこまで神経質にならなくてもいいかと思います。