遺言で財産を寄附したら税金はどうなる?

遺言書で指定をすれば、相続人以外の人にも財産を渡す(遺贈)ことができます。

この「相続人以外の人」には、個人(人間)だけでなく、法人(会社など)も含まれます。

「自分が亡くなったら、財産はどこかに寄附したい」とお考えの方も多いかと思いますが、税金面はどうなるのでしょうか?

 

寄附のタイプでかかる税目が異なる

  1. 寄附する相手は個人か法人か
  2. 何を寄附するか
  3. 寄附された人がどのように運用するか

この3点によって、どんな税金がかかるか、そもそも課税されるか非課税となるかが変わってきます。

寄附先 パターン 誰に どんな税金がかかる?
個人 原則 寄附先 相続税
公益事業(社会福祉事業や学校運営など)に使う場合※1 寄附先 非課税
PTAや同窓会、サークルなど※2 寄附先 相続税
法人 原則 寄附先 法人税
現金以外の現物資産を寄附した場合 被相続人
(納めるのは相続人)
所得税※3
(相続税の計算で債務控除できる)
親族が支配する社団・財団法人や医療法人などに寄附した場合 寄附先 相続税※4

 

※1:もらった日から2年以内に公益事業に使わないと相続税の課税対象になります。
※2:法人として登記されていない団体などが該当します。
※3:時価で売却したものとして、所得税が計算されます。
※4:このような法人は、持ち分(株式や出資など)がないので、そのままだと永遠に相続税から逃れられることになるためです。

もらった人(個人)が公益事業目的で使用する以外は、何らかの税金がかかることになります。

他、税金に関して注意すべき点は、次の2点です。

  1. 相続税がかかる場合は、通常の2割増しの金額になります。
  2. 相続税がかからない場合は、寄附した財産を含めずに(他の人の)相続税を計算します。

 

遺言で寄附する場合に注意したいこと

財産を寄附してくれるのは、寄附先にとっては嬉しい半面、寄附の仕方を気を付けないと、かえって寄附先に迷惑をかけることになります。

遺留分に注意

「遺留分」とは、遺言書でどんな書かれ方がされてあっても、相続人が主張できる最低限の取り分です(ただし、兄弟姉妹や甥姪は主張できません)

例えば、遺言で全財産を寄附する遺言を書いたとしても、相続人がそれに反対すれば、一部を返さなくてはいけません。

寄附先と相続人が争いにならないよう、遺留分を侵害しない範囲での寄附に留めるのがよいかと思います。

包括遺贈(全財産の〇分の1を寄附する)ではなく、特定遺贈(財産Aを寄附する)を

遺贈(遺言で財産をあげること)には、2種類あります。

  • 包括遺贈:「全財産の〇分の1をあげる」というように、遺贈する割合だけ指定する方法
  • 特定遺贈:遺贈する財産を特定(土地A、現金1,000万円など)する方法

このうち、包括遺贈の場合は、寄附された人が相続人と同等の地位を得てしまうことになります。
そうなると、寄附された人は遺産分割協議に参加しなければならなくなります。
(どの財産をもらうことで「全財産の〇分の1」を得るかの話し合い)

また、包括遺贈の場合は、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借入金などの債務)も引き継ぐことになります。

このため、寄附先に余計な手間をかけさせないよう、具体的な財産を指定して寄附するようにしましょう。

現物の寄附に注意

現物財産(不動産や有価証券など)を寄附した場合は、上で述べたように、被相続人に所得税がかかります。

ただし、申告(所得税の準確定申告)と納税をするのは、その寄附財産をもらえない相続人です。
相続人がこのことを事前に了解していなければ、不満を持つことになりかねません。

また、特に不動産であれば、ものによっては売却価値や利用価値がなく、逆に費用(整備費用、管理費用、固定資産税など)だけがかかるようなケースもあります。

こうなると、寄附先にとっては迷惑にしかならず、せっかくの寄附財産が宙に浮いてしまいます。

こうならないよう、次のような対策が必要です。

  • 寄附するのは現預金または金融財産(上場株式など)にする。
  • 寄附するものが不動産しかなければ、事前に売却して、お金に換えておく。

 

まとめ

遺贈寄附は、寄附する財産や寄附額、寄附の仕方に気を付けないと、かえって寄附先や相続人に迷惑をかけることになりかねません(気を付けたとしても、何らかの税金がかかることが多いです)

寄附予定先への事前了解や寄附した場合のシミュレーション、寄附財産のチョイスなど、事前準備が重要です。