故人がお金を貸していた/貸付金を遺す場合の対処法

故人が人にお金を貸していた場合、その貸付金(利息を取る約束なら未収利息も)も相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。

その貸付金は、毎月きっちりと返済してくれているものであればいいのですが、そうでない場合(頼まれて貸したけれども返済が滞っているetc)も多いかと思います。

  • 相続前の対処法
  • 相続時の対処法
  • 相続後の対処法

についてお話したいと思います。

 

返済の見込みがなければ相続財産から外せることがありますが、そのハードルは高い!

返済の見込みがないなら、相続財産から外したいところですが、「返済の見込みがない」に該当するためのハードルは高いです。

国税庁の通達では、次のように書かれています。

(前略)貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき

ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき

ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき

ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき

ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき

ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額

イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額

ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

つまり、お金を貸している相手が、「相続前に」上の通達に書かれているような状況(破産手続開始決定や債権の切捨てなど)に当てはまっていなければ、貸付金を相続財産から外すということはできません。

「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」と言えるかどうかについても、客観的な証拠を集めなければならず、ハードルは高いと言えます。

単に「返済が滞っている」「返せなさそう」というだけであれば、貸付金を相続財産に含めなければなりません。

 

相続前・相続時・相続後の対処法

このような滞留している貸付金がある場合の対処法を、相続前・相続時・相続後の3つの時期に分けて解説したいと思います。

相続前の対処法

貸し付けている本人がまだ自分で何とかできるのであれば、次のような対策ができます。

  1. 返済の催促(「返してくれ」と言う)
  2. 貸付金の放棄(「もう返さなくていいよ」と言う→書面が必要です)
  3. 貸付金の存在を家族に知らせておく。
  4. 貸付金に関する資料を整理しておく。
  5. 遺言書を書いて、相続させる人を工夫する。

5については、次のような方法が考えられます。

  • 配偶者に相続させる。
    →配偶者は一定額の相続までなら無税となるので、それを有効活用する。
  • 納税資金に余力のある相続人に相続させる。

相続時の対処法

被相続人が特に何もせず亡くなった場合の対処法です。

  1. 「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」場合に該当するかどうか調べる。
  2. 配偶者または資金に余力のある相続人が相続する。

1については、破産や会社倒産などに関する情報は「官報」で調べることができます。
インターネットで見られるのは過去30日分だけですが、都道府県立図書館などであれば昔の官報も検索することができます(キーワード検索できるのは昭和22年5月3日~)

相続後の対処法

やむなく相続した場合は、その次の相続に向けて対策をしておく必要があります。

  1. 返済の催促
  2. 貸付金の放棄

 

まとめ

返済の見込みが薄い貸付金は、税金がかかるばかりの厄介な財産です。

残された家族が困らないよう、返済催促などのアフターフォローや相続に備えた手当をやっておきましょう。