法人成り/個人成りの3つの判断ポイント

「事業が大きくなってきたから、会社にしたい」

「事業が小さくなってきたから、個人事業主に戻りたい」

そんな時の判断ポイントについていくつか挙げてみたいと思います。

 

判断ポイント① 税金負担と手取りから考える

法人成り/個人成りを考える上で最も重要と言えるポイントは、どちらの方がより税金等の
負担が小さいか、そしてどちらの方がより手取りが多くなるかです。

会社であっても、個人事業であっても、【収益ー経費】で利益金額が求められ、
その利益金額をもとに税金が計算される点は同じです。

しかし、個人事業主の場合は、この利益金額に対してダイレクトに税金や社会保険料が
かかってきます(国民年金保険料は定額)。

一方、会社の場合は、社長自身への給与(役員報酬)も経費にすることができ、役員報酬
を引いた残りに対して法人税などがかかってきます。

ただし、社長の役員報酬にも所得税や住民税がかかりますし、社会保険料(健康保険料・
厚生年金保険料)は役員報酬の額に応じて増減しますし、社長が負担する社会保険料と
同額を会社も負担する必要があります(会社が負担する
社会保険料は会社の経費にする

ことができます)。

また、同じ利益金額でも、会社と個人とでは適用される税率が異なります。
(一般的に、利益が増えるほど、会社の方が有利です。)

これらを踏まえ、
【会社の税金・社会保険料】【社長の税金・社会保険料】と【個人事業主の税金・社会保険料】
のどちらか少なくなる方、その結果手取りがより多い方を選ぶというのが1つの判断ポイントです。

 

判断ポイント② 手間から考える

会社であっても、個人事業主であっても、年度が終了したら決算と申告をしなければならない
点は同じです。

しかし、それにかかる手間という点では、会社の方が圧倒的に大きいです。

  会社 個人事業主 備考
税務署に提出する書類 ・法人税申告書
・決算書
・勘定科目内訳明細書
・事業概況説明書
・確定申告書
・青色申告決算書(収支内訳書)
 
自治体(都道府県・市町村)への申告 必要 不要 個人事業主の場合は、税務署に提出した確定申告書をもとに自治体が住民税や事業税、健康保険料を計算してくれます。

 

このように、出さなければならない書類も提出先も多いという点では、会社の方が
圧倒的に手間がかかります。

また、会社の場合は、社長1人でやっていたとしても、次のような手続きが定期的に必要です。

  • 法定調書合計表・給与支払報告書の提出(1月末)
  • 源泉所得税の納付(年2回、1/20と7/10まで)
  • 算定基礎届の提出(7/10まで)
  • 役員の重任登記(最長10年に1回、株式会社の場合)

個人事業主の場合は、税理士に頼らず、自分自身で申告をするという方も多いですが、
会社の場合は、これだけの手間がかかり、申告書作成の難易度も高いので、税理士に
依頼する方が多いです。

 

判断ポイント③ 法人/個人事業主でなければならないかどうか

最後は、その事業をする上で、会社形態/個人事業主でなければならないか、また会社形態/
個人事業主である方が取引の面で有利かどうかという点です。

法律上、会社形態または個人事業主を強制される業種が世の中にはあります。

例えば、我々税理士などの士業はその最たるものです。

税理士の有資格者が代表者1人だけの場合は、その事務所は個人事業主でやらなければならず、
法人(税理士法人)にすることはできません。
(ただし、税理士業務は個人事務所で行い、それとは別に会社を立ち上げてコンサルティング
業務や保険代理店などをすることはできます。)

また、取引の有利不利については、特に大手の会社の中には、与信管理などのために、
取引先が会社形態であることを求めてくるところもあります。

会社をたたんで個人事業主になったら、取引を打ち切られた、ということもあるようです。

さらに、許認可が必要な業種では、法人成り/個人成りしたら、許認可の取り直しが
必要な場合もあります。

 

まとめ

法人成り・個人成りどちらにも一長一短があり、どちらの方が絶対的に良いということは
言えません。

法人成り・個人成りどちらの場合も、それなりに手続きに手間とお金がかかりますし、
後から「やっぱりやめた」となっても、またそこで手間とお金がかかりますので、
法人成り/個人成りするなら慎重に考えたいものです。