会社をたたむ時の手続きと注意点

今回はあまり前向きな話ではありませんが、会社をたたむ(=清算)時の手続きについて
お話したいと思います。

個人が亡くなったら相続税の申告が必要な場合があるように、会社をたたむ時も
申告(法人税)が必要です。

会社をたたむのには、自主的に行う場合と強制される場合とがありますが、今回は
自主的に行った場合についてお話します。

 

会社をたたむためにやらなければならないこと

会社をたたむためには、以下の11項目をやらなければなりません。

やること 解説
①株主総会で解散を決議
 +「清算人」を選任する。

・「解散」とは、会社をたたむために事業活動を終了して、たたむための手続きに入ることを言います。簡単に言うと「会社をやーめた!」と宣言することです。

・この決議には、議決権数の3分の2以上の賛成が必要です。

・「清算人」とは、会社の清算業務を行う人のことです。もともとの取締役が就くことが多いです。

・この後の登記で、株主総会議事録が必要になりますので、作っておく必要があります。

②【解散したこと】と【清算人】の登記を行う 登録免許税39,000円が必要になります。
③諸官庁に解散の届出をする ・税務署、都道府県・市町村の税務関係部署、年金事務所、労基署、ハローワークなど
④解散日時点の貸借対照表(B/S)と財産目録を作成する

期首~解散日までを1事業年度として決算を行うイメージです。

・この後、税務署への申告も必要になりますので、損益計算書(P/L)も作成しておきます。

⑤「公告」または個々の債権者に連絡する

・「公告」とは、「官報」(国が出している新聞)に記事を掲載して、世の中に知らせることを言います。

・解散することに対して、債権者などが異議申し立てをする権利を与えるために、公告を行います。

・債権者には、2か月間の異議申し立てをする期間が与えられます。

・個別に連絡が取れる債権者には、解散する旨を連絡します。

⑥税務署へ申告をする 期首~解散日の損益について、通常の申告と同じように申告をします(解散日から2か月以内)。
⑦残余財産の確定と分配

・会社に残っている資産(売掛金、固定資産など)を現金化し、負債(買掛金、借入金など)を返済していきます。

・最後に残ったお金を株主に分配します。

⑧税務署へ申告をする

解散日翌日~残余財産確定日の損益について、申告をします。

・この場合だけ、期限は残余財産確定日から最長1か月以内となります。

清算事務報告書を作成する

・④⑤⑦の業務を行った事実と、資産負債・分配額・かかった費用などを報告します。

⑩株主総会で承認を得る

・残余財産の額と分配額について承認を得ます。

・承認を得た時点で「清算結了」となります。

⑪清算結了の登記をする ・清算結了日から2週間以内に登記をして、手続き完了です。

 

様々な機関への届出が必要だったり、最低2回の税務申告が必要だったりと、
手間は結構かかります。

また、債権者の異議申し立てのために2か月は待たなければならず、早く済んでも
2~3か月はかかります。

 

税金面で気をつけなければならないこと

会社をたたむのにやらなければならないこととしては、ざっと上記の通りですが、
税金面で気をつけなければならないことについて特記します。

出資額以上に分配できる場合

例えば出資額が500万円で、会社をたたんだ結果、700万円の分配を受けられた、
幸せなケースです。

この場合、差額の200万円は「配当金」とみなされるため、20.42%の所得税を
源泉徴収する必要があります(この場合なら408,400円)。

また、出資者の側では、翌年2~3月に確定申告が必要になりますが、
配当額の10%を税額控除することができ、還付を受けられる場合もあります。

多額の役員借入金がある場合

多額の役員借入金があって、会社の資産を現金化しても返済しきれない場合は、
最終的には返済を免除してもらう必要があります

返済を免除してもらうと、その金額は「債務免除益」として収入に計上します。

債務超過(資産よりも負債の方が多いこと)の場合は、過去の赤字と相殺させる
ことで税金は発生しなくなります。

この「過去の赤字」は、通常は過去9年の間に発生したものに限られますが、
会社をたたむ場合に限り、さらに昔の赤字とも相殺が可能です。

 

まとめ

事業不振や後継者不在などで会社をたたむケースが多いですが、例えば次のように、
むしろ会社の形態をやめて、個人事業主になる(いわゆる「個人成り」)ことを選択した方が
いい場合もあります。

  • 会社よりも個人事業で商売をやった方が税金や社会保険などの面で有利な場合
  • 多額の役員借入金があって相続税に影響を与えそうな場合

会社を「続ける」か「やめる」かの2択だけでなく、「個人成り」という「戦略的撤退」の
道、そのための「会社清算」もあるのだということを知っていただければと思います。