専業主婦(主夫)に立ちはだかる「〇万円の壁」

専業主婦(主夫)が働く時に、いくらまでなら税金や社会保険的にお得なのか、の目安と
してよく口にされるのが「〇万円の壁」です。

収入が増えれば、税金や社会保険料にどう影響するのか見ていきたいと思います。

※以下、この記事での「収入」は、便宜上「給与収入」とします。
※令和2年分以降の税金や社会保険料についてお話します。

 

103万円の壁ー本人に税金がかかり始める

まず「〇万円の壁」で一番ポピュラーなのが、103万円の壁です。

給与収入が103万円を超えると、給与をもらっている専業主婦(主夫)本人に所得税(5%~)や住民税(10%)がかかり始めます。

ただし、超えた分に対してしか税金はかからないので、手取りが減ることはありません。
※ただし、100万円を超えてくると住民税の均等割がかかることがあります(大阪市で年間5,300円)。

 

106万円の壁ー勤め先や働き方次第で、社会保険料がかかり始める

年間で106万円以上となる場合、次の要件を満たすと社会保険に加入し、
給料から社会保険料が天引きされるようになります。

  • 勤め先の正社員が501人以上
  • 収入が月88,000円以上
  • 雇用期間が1年以上
  • 週の労働時間が20時間以上
  • 学生ではない。

例えば、月9万円(年108万円)の給料をもらっているとすると、税金と社会保険料は次のような計算になります(大阪府、40歳以上の場合。住民税の均等割は考慮していません)。

項目 金額 計算方法 (参考)
年間105万円の場合
給料(総額) 1,080,000円 9万円×12か月 1,050,000円
社会保険料 160,032円

健康保険料5,284+厚生年金保険料8,052=13,336
13,336×12か月=160,032

0円

税金 0円 「社会保険料控除」ができるため。
ただし、毎月源泉所得税が天引きされ、年末調整で全額が戻ってきます。
3,000円
手取り 919,968円 1,080,000ー160,032 1,047,000円

このように、手取りが106万円未満の時よりも減ってしまいます。

 

130万円の壁ー勤め先に関わらず、社会保険料がかかり始める

「106万円の壁」は勤め先次第なところがありましたが、130万円を超えてくると、勤め先に関わらず社会保険への加入が必要になります。

例えば、月11万円(年132万円)の給料をもらっているとすると、税金と社会保険料は次のような計算になります(大阪府、40歳以上の場合。住民税の均等割は考慮していません)。

項目 金額 計算方法 (参考)
年間129.6万円の場合
(月108,000円)
給料(総額) 1,320,000円 11万円×12か月 1,296,000円
社会保険料 200,052円

健康保険料6,606+厚生年金保険料10,065=16,671
16,671×12か月=200,052

0円

税金 13,400円   40,100円
手取り 1,106,548円 1,320,000-200,052-13,400 1,255,900円

やはり社会保険料がかかるようになると、手取りが減ってしまいます。

手取りという観点から見れば、社会保険に加入することは不利なように思えますが、
自分自身で健康保険や厚生年金保険に加入することで受け取れるものもあります。

例えば、健康保険に加入していれば、病気などで働けなくなった時に「傷病手当金」を受け取れます(最大1年半、給与の約3分の2)。

また、厚生年金保険に加入していることで、国民年金と厚生年金の両方から年金(障害年金や老齢年金)を受け取ることができ、長い目で見ると得かもしれません。

 

150万円の壁ー配偶者特別控除の金額が減り始める

150万円を超えてくると、今度は扶養に入っている夫(妻)の税金に影響してきます。

150万円以下であれば、夫(妻)の所得から38万円の控除がされます。
(103万円以下の場合は「配偶者控除」、150万円以下の場合は「配偶者特別控除」という名称ですが、控除額は変わりません。)

しかし、150万円超となると、この38万円の控除額が以下のように段階的に減っていきます。

年間の収入が156万円(月13万円)の場合と150万円(月12.5万円)の場合とで比較すると次のようになります。
(大阪府、40歳以上の場合。住民税の均等割は考慮していません。夫の課税所得(配偶者特別控除前)は800万円とします)。

項目 年間156万円の場合 年間150万円の場合 差額
給料(総額) 1,560,000円 1,500,000円 +60,000円
社会保険料 243,696円

229,140円

▲14,556円

税金 43,200円 36,200円 ▲7,000円
手取り 1,273,104円 1,234,660円 +38,444円
夫の納税額の増加額
(150万円の場合を
ゼロとした場合)
18,438円 0円 ▲18,438円

 

上の表のように、夫婦合わせた手取りはむしろ増えています。
ちなみに156万円の場合だと、「130万円の壁」を超える前より手取りがわずかに増えています。

 

201万円の壁ー配偶者特別控除が完全に無くなる

正確には「201万6,000円の壁」なのですが、分かりやすく。
こうなると、夫(妻)において配偶者特別控除が全く出来なくなります。

ただし、そこまでの収入になってくると、税金上のメリットよりも手取りの増え方の方が大きくなってきます(夫婦で考えた場合)。

ちなみに、夫(妻)の所得が1,000万円を超えると、配偶者の所得に関わらず、配偶者(特別)控除は受けられません。

 

夫婦で事業をするなら

ここまでは、専業主婦(主夫)が他所へ働きに出る場合を前提としましたが、
夫婦で力を合わせて事業をするのであれば、事業から配偶者に給料を出すことも可能です。

  • 個人事業の場合→青色事業専従者給与
  • 会社の場合  →役員報酬

その場合は、事業(個人事業主や会社)の税金や社会保険料負担がどうなるかも
シミュレーションしておく方が良いでしょう。

家族に給料を払っているなら、届出書を出して経費にしよう

 

まとめ

税金や社会保険料の負担、手取りという観点で見ていきましたが、それは一面的な見方でしかありません。

ライフプランやキャリアといった観点から、どういった働き方が自分にとって望ましいのかを考えることも欠かせません。