遺言を書いておいた方がいい6つのケース
相続後のトラブル回避のために是非書いておきたい遺言書。
今回は、特に書いておいた方がいい6つのケースについてお話したいと思います。
目次
遺言を書いておいた方がいい6つのケース
ケース① 財産分けで揉めそうな場合
家族同士、きょうだい同士、財産分けを巡って揉めそうな場合は、遺言書が必須です。
遺言書がなければ、相続人全員が一致するまで話し合い(遺産分割協議)をしなければなりません。
遺産分割協議でまとまらなければ、調停や裁判などで決着をつけなければいけない事態になりかねません。
そうなると費用や時間がかかる上に、家族同士で絶縁状態になったり、住む家を失ったりすることになり(最終的には法定相続分で分けることが多いので、そのために家を売却せざるを得ないこともあるため)、後味の悪い、不幸な結果になりかねません。
遺言書があれば、相続人のうちだれか1人でもその内容に賛成なら、その通りに分けることになるため、争いになる可能性を減らせます(分け方によっては、遺留分の問題が残りますが)。
ケース② 特定の財産を特定の人にあげたい場合
できることなら、全ての財産を全ての相続人に均等に(法定相続分通りに)分けてあげたいという方も多いのではないかと思います。
しかし、次のような財産があると、そして財産の多くを占めていると、なかなかそうはいきません。
- 不動産(特に自宅)
- 家業用の財産
- 会社の株式
売却してお金に換えてしまえば、均等に(法定相続分通りに)分けられなくもありません。
しかし、そうしてしまうと次のような問題もあります。
- 一緒に住んでいた相続人(特に配偶者)は住む家を失ってしまう。
- 家業(会社を含む)を続けられなくなる。
- 後継予定の相続人が思い通りに会社を運営できなくなる。
- そもそも、家業用の財産や株式はお金に換えにくい。
金額面で均等になるように、自宅や家業を継がない相続人に対して「代償分割金」を渡すという手もありますが、相続した現預金や有価証券が少なかったり、渡す方の相続人にそれだけの資金が潤沢になければ、それも難しいです。
自宅や家業を継いでくれる人(継がせたい人)に対して、そのための必要な財産を継がせたいという時、お金に換えにくい・分けにくい財産がある時は、遺言書を必ず書くようにしましょう。
ケース③ 前妻との間に子どもがいる場合
離婚した前妻には、相続権はありません。
しかし、前妻との間に生まれた子どもは、たとえ離れ離れになったとしても相続する権利が無くなることはありません。
この場合、離婚後に再婚していれば、相続人となるのは、後妻と前妻との間に生まれた子どもになります(後妻との間にも子どもが生まれていれば、その子どもも相続人に加わります)。
遺言書がなければ、後妻(とその子供)と前妻との間に生まれた子どもが財産の分け方を巡って話し合いをしなければならず、精神的な負担も大きくなります。
このような場合も、残された人たちに迷惑をかけないように、遺言書を残すようにしましょう。
ケース④ 子どもがおらず、きょうだい相続(甥・姪を含む)となりそうな場合
子どもがいれば子どもが相続人になりますが(先に亡くなっていて、孫がいる場合は孫が相続人になります)、いなければ親が相続人になります。
そして親もいない場合は、きょうだいが相続人になります(先に亡くなっている場合は、その子ども=甥・姪が相続人になります)。
このような「きょうだい相続」については、遺言書がないと次のような問題が考えられます。
- 配偶者がいる場合は、配偶者ときょうだい(または甥・姪)が話し合わなければならない。
- 相続人の人数が多くなりがちで、なかなか話し合いがまとまらない。
- きょうだい同士、疎遠になってしまっている(遠くに住んでいてなかなか会えない、そもそもどこに住んでいるか分からない)ので、そもそも話し合いがしにくい。
このように遺言書がなければ、ケース③と同じように残された人たちに精神的な負担をかけることになります。
特にご高齢の方の場合、きょうだいが多い方がよく見受けられ、しかもきょうだいが亡くなっているとその甥・姪が相続人になるので、相続人の数が膨れ上がるケースが往々にしてあります(10人超えも珍しくはありません)。
ケース⑤ 相続人でない人に財産をあげたい場合
遺言書がなければ、相続人による話し合いで財産を分けることになります。
次のような人たちは、何かを残したいと思っても、相続人でないので、財産を渡すことができません。
- 子どもの配偶者(養子縁組している場合を除く)
- 孫(親である子どもが先に亡くなっている場合を除く)
- 内縁の妻(夫)
- 親しい知人・友人
- 寄附をしたい
相続人に「私が亡くなったら〇〇さんに△△を渡してね」と言い含めておくこともできなくはありませんが、その通りにしてくれる保証はありませんし、その通りにした場合にはその人への贈与になり、贈与税が課税される可能性があります。
したがって、相続人でない人に財産を確実にあげたければ、遺言書を書いておく必要があります。
遺言書で財産を渡した方が、税金的にも有利な可能性があります。
ケース⑥ 相続人に判断能力がない人や行方不明・生死不明の人がいる場合
相続人の中に、判断能力がない人(認知症の方や障がいのある方など)がいる場合は、そのままだと遺産分割協議ができないので、その人の代わりに遺産分割協議に参加してくれる人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります(このような人のことを成年後見人といいます)。
この成年後見人を選ぶ準備から遺産分割協議の開始まで1年ほどかかることもあり、その間、財産の名義変更や解約換金などが出来なくなってしまいます。
今は相続人皆が元気であっても、将来誰かが認知症となる可能性だってあります。
また、相続人の中に行方不明だったり、生死が分からない人がいたりする場合も、裁判所への申立や失踪宣告などの面倒な手続きをしなければなりません。
こういった面倒を避ける意味でも、遺言書は書いておきましょう。
まとめ
今回リストアップした例に一つでもあてはまる人は、財産の多寡に関わらず、遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。
残された人たちに余計な争いや面倒をさせたくないという方や、財産分けに自分自身の意思を実現させたいという方にとっては、遺言書は必須だと言えます。