贈与税の配偶者控除の3つの注意点

昨日(3/4)住宅購入資金を両親や祖父母が援助してあげた場合の贈与税の非課税特例についてお話しましたが、今日はその夫婦版、「贈与税の配偶者控除」の話です。

 

贈与税の配偶者控除とは?

「贈与税の配偶者控除」とは、夫婦間で

  • 住宅購入資金
  • 住宅そのもの(土地や家屋)

を贈与した場合には、2,000万円まで贈与税がかからないという制度です(通常の非課税枠と合わせると、2,110万円)。

この場合の「夫婦」とは、法律婚(事実婚の場合は使えません)で、婚姻期間が20年以上の夫婦をいいます。

 

親子間、祖父母・孫間の「住宅取得資金贈与の非課税」と違うのは、夫婦間の場合は購入資金だけでなく、住宅そのものの贈与にも適用される点です。

 

注意点① 税金がかからなくても、贈与税の申告は必要

「贈与税の配偶者控除」にも、同じように3つの注意点があります。

1つ目は、「住宅取得資金贈与の非課税」と同じく、結果的に税金がゼロになったとしても、贈与税申告が必要な点です。

「住宅取得資金~」と同じく、贈与してもらった年の翌年3月15日までに申告しなければならないのと、戸籍謄本等や不動産の謄本などを添付しなければなりません(戸籍などは、夫婦なのでまだ取りやすいかもしれません)。

 

注意点② 持ち分は出資割合通りにする

これも「住宅取得資金~」と同じです。

出資した割合に応じて持ち分を設定しましょう。

既にある住宅の持ち分を贈与してもらった場合には、土地や家屋の「相続税評価額」を計算する必要があります。

贈与税のかからない2,110万円以内に収めるのであれば、それに応じた持ち分を移す必要があります。

家屋については、毎年5月頃に市役所などから届く「固定資産税納税通知書」に書いている「固定資産税評価額」をそのまま使えばいいので、簡単です。

しかし、土地については、「路線価」がついている地域にある土地だと、計算がややこしくなるので、注意が必要です。

土地の形状が長方形や正方形に近いとまだ簡単(路線価×面積で計算できる)ですが、いびつな形をしていると、その形に応じた補正が必要です。

※必ずしも補正をしなければならないというわけではありませんが、補正をしないと、土地の評価額が大きくなってしまい、贈与できる持ち分が少なくなります(少なくてもよいというのであればいいのですが)。

 

注意点③ 贈与税はかからないが、別のコストがかかる

この制度の一番の注意点です。

確かに、2,110万円の枠内なら、贈与税は無税にできます。

しかし、不動産の持ち分を贈与した場合には、さらに2つの税金がかかることがあります。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税

 

不動産取得税

不動産取得税は、その名の通り、不動産を取得するとかかる税金で、都道府県が課税をします(贈与税は国税)。

土地の場合は1.5%、家屋の場合は3%を、固定資産税評価額にかけて計算します。

土地2,000万円分(固定資産税評価額)を贈与したとすると、

 2,000万円×1.5%=30万円 の不動産取得税がかかります。

この不動産取得税は、贈与の何か月か後に、都道府県(大阪であれば府税事務所)から、「不動産取得税を〇万円払ってください」という通知が届きます。

税金がかからないと聞いていたのに、税金を払ってくださいというお知らせを見て、びっくりするわけです。

 

登録免許税

登録免許税は、登記をする際などにかかる税金(国税)です。

不動産の登記だけでなく、会社の登記や特許権などの登録、資格の登録(税理士の登録にも6万円かかります)などにもかかります。

不動産の贈与をした場合には、固定資産税評価額の2%の登録免許税がかかります。

さきほどの例ですと、 2,000万円×2%=40万円 の登録免許税がかかります。

不動産取得税と合わせると、合計70万円ほどのコストがかかることになります。

 

相続では、これらのコストはかなり少なくて済む

不動産を贈与でもらう場合には、こんなにコストがかかりますが、相続でもらう場合には、これらのコストはかなり少なくて済みます。

まず、不動産取得税については、配偶者が相続で不動産をもらう場合には、かかりません。

また、登録免許税については、2%ではなく、0.4%の税率で済みます。

さきほどの例なら、 2,000万円×0.4%=8万円 の登録免許税で済みます。

相続税・贈与税の負担はともかく、不動産の移転に伴うコストでいうと、相続でもらう方が有利なのです。

 

まとめ

今回は、贈与税の配偶者控除の概要と注意点をお話しました。

特に、最後の別のコストについて見ると、この制度を使わない方がいいんじゃないかという話になります。

使った方がいい人・使わない方がいい人について、相続の話と絡めて、明日お話したいと思います。