外注費と給与の違い
近年の「働き方改革」の一環で、「雇用契約」から「業務委託契約」や「請負契約」に契約形態を変える動きが増えているようです。
働く量や方法を自分で決定することができるなど、柔軟な働き方ができる一方で、税金的には注意が必要です。
目次
外注費と給与の比較
外注費と給与の違いを比較すると、下図のようになります。
外注費 | 給与 | |
契約の形態 | 業務委託契約や請負契約 | 雇用契約 |
もらう方の所得区分 | 事業所得 | 給与所得 |
消費税の課税 | 課税 | 不課税 |
源泉徴収の必要性 |
基本的に不要 (必要な業種もある) |
必要 |
社会保険への加入(会社側) | 不要(外注側で加入) | 必要(労使折半) |
このように外注の場合は、会社側で社会保険に加入してあげる必要はありませんし、源泉徴収も多くの業種では必要ありませんので、雇用するよりもシンプルではあります。
また、給与と違って、外注費の中に含まれる消費税を、売り上げに係る消費税から差し引くことができるというメリットもあります。
外注費としていても、給与と判定される場合がある
税金や社会保険の面では、(会社側にとっては)メリットだらけの外注。
しかし、だからといって、実質的には自社の従業員と扱いがそう変わらないのに、外注として処理していると、税務調査で否認を受けるリスクがあります。
税務調査で否認を受けると、次のような手間やお金がかかります。
- 消費税の追加納税・・・外注費が給与と認定されると、消費税の控除ができないため。
- 源泉徴収・・・支払った相手から本来徴収すべきだった源泉所得税を返金してもらい、それを納める必要が出てきます。
- 延滞税や加算税・・・消費税や源泉所得税の追加納税分に対して、ペナルティがつきます。
外注費か、給与か
作業者に支払った対価が、外注費か、それとも給与かを判定するポイントは5つあります。
これらを総合的に判断して、外注費として処理すべきか、給与として処理すべきかを判断します。
他の人で代替可能かどうか
作業者が急病だったり、他の仕事で手一杯だったりした場合、その作業者が他の人(その人の従業員や下請け)を代替要員として作業させても、契約通り対価が支払われれば、外注費です。
会社から指図を受けるかどうか
業務委託契約や請負契約の場合、受け取る対価は「成果」に対してのものであり、自分自身の裁量の下で、リスクを背負って作業をすることになります。
そのため、作業のやり方や作業時間については、期限までに成果物を提供さえできれば、会社から指図を受ける筋合いはありません。
受け取る対価の計算や請求も、作業者の側が行うことになります(請求書の発行)。
一方、雇用契約の場合は、労働時間に対して報酬が支払われることになり、決められた作業のやり方や作業時間通りに動かなければなりません。
受け取る対価の計算は、会社側が行うことになります(給与計算)。
事故や災害で成果物を提供できない場合のリスク
事故や災害などで、成果物を会社側に提供できない場合に、会社と作業者のどちらがリスクを負うかの違いもあります。
外注は、成果物を引き渡すことに対して対価が支払われるので、この場合は外注側がリスクを負うことになります(対価がもらえない)。
給与の場合は、働いた時間に対して対価(給与)をもらえるので、成果物を引き渡せようが引き渡せまいが、会社側は働いた分に応じて給与を支払わなければなりません。
材料や工具をどちらが用意するか
工賃だけをもらう場合は別として、外注は、材料や工具などの作業道具を、外注自身の負担と手間で用意しなければなりません。
一方、給与の場合は、材料や工具などの作業道具は、すべて会社が用意しなければなりません。