だいたいの相続税額を知る方法
生前贈与や遺言書作成などの相続(税)対策の前にやるべきことは、自分に万が一のことがあった場合に、相続税がいくらかかるかの試算=相続税シミュレーションです。
この相続税シミュレーション、おおよその税額を知るくらいであれば、お手持ちの資料で試算することができます。
目次
財産総額を計算する
まず、相続税計算のベースになる、財産総額を試算します。
多くの方が持っていると思われる財産、財産額のほとんどを占めると思われる財産の計算方法は以下の通りです。
土地
土地の評価の概算額を出す方法は2つがあります。
計算の仕方①ー路線価を使う
都市部にある土地については、実際の相続税申告では、ほとんどこの路線価を使って評価額を算定します。
路線価とは、「この道路に面する土地1㎡当たりの評価額は〇千円である」というのを表したものです。
路線価は、国税庁のホームページで、毎年7月1日から当年分が公表されています。
http://www.rosenka.nta.go.jp/
所有されている土地の前の道路の路線価に、土地の面積を掛けることで簡易的に計算できます。
路線価×土地の面積
角地などのように、2つの道路に接している土地は、取り敢えず高い方の路線価を使います。
計算の仕方②ー固定資産税評価額を使う
①より簡単な方法が、固定資産税評価額を使う方法です。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書という書類に記載されています。
この書類は、毎年5月頃に不動産がある自治体から届きます。
計算の仕方は、下記の通りです。
固定資産税評価額×8/7
なぜ、7分の8をかけるかというと、
- 相続税評価額は、時価の約8割
- 固定資産税評価額は、時価の約7割
という関係であるためです。固定資産税評価額を70%で割り戻して時価に置きなおし、その時価に80%を掛けることで、おおよその相続税評価額が出せるのです。
注意点
以上の評価方法には、いくつか注意点があります。
- アパート用地の評価額には80%を、貸地の評価額には40%を、それぞれ掛ける。
人に貸す=自分で自由に使えないので、評価がその分落ちると考えるためです。
(なお、この率も簡易的なもので、正確な計算では、場所などの事情により率が異なってきます。) - 分譲マンションをお持ちの場合は、以下の点に注意が必要です。
・使う面積:マンション全体の土地の面積
・敷地権割合(例えば、12345/678901などの割合)を掛ける。
→分譲マンションの用地は、所有者全員で持ち合っている状態になっているためです。
家屋(建物)
家屋は、固定資産税評価額をそのまま使います。人に貸している場合は、これに70%を掛けます。
有価証券
証券会社から定期的に届く、「取引残高報告書」を使います。
これに載っている銘柄の金額を使います。
上場株式については、直近の株価を調べて、これに持ち株数をかけても良いでしょう。
預貯金
通帳などに記載されている直近の残高を使います。
生命保険金
保険証券や、年に1回程度届く「保険内容のお知らせ」により、大体いくら貰えるかが分かります。
ここから、「500万円×相続人の数」を引いた残りを使います(マイナスになる場合は、ゼロとします)。
債務
上記の財産額から引けるものとして、主だった債務も整理します。
- 借入金
アパートローンや事業の借入金です。返済表をもとに、直近の残高を使います。
なお、「団体信用生命保険」付のローン(住宅ローンなどによく付加されている)は引くことができません。 - 預かり保証金・敷金
不動産賃貸をされている方は、賃借人の方から保証金や敷金を預かっているかと思います。
敷引き(賃借人が退去するときに返さなくてよい金額)を引いた後の金額を使います。
表に当てはめる
ここまで計算してきた財産・債務を集計し、ここから相続税を計算します。
計算の仕方は、集計額から基礎控除額を引いて、これを法定相続分で按分して、それぞれに税率をかけて税額を計算し、それらをまた集計し・・・・・・・・・
ですが、財産・債務の集計額と家族構成を次の表に当てはめることで、総額だけは簡単に計算することができます(どちらも、単位は万円)。
配偶者と子供が相続人の場合
子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 | |
5,000万円 | 40 | 10 | 0 | 0 |
6,000万円 | 90 | 60 | 30 | 0 |
8,000万円 | 235 | 175 | 138 | 100 |
1億円 | 385 | 315 | 263 | 225 |
1億5,000万円 | 920 | 748 | 665 | 588 |
2億円 | 1670 | 1350 | 1218 | 1126 |
2億5,000万円 | 2460 | 1985 | 1800 | 1688 |
3億円 | 3460 | 2860 | 2540 | 2350 |
5億円 | 7605 | 6555 | 5963 | 5500 |
7億円 | 12250 | 10870 | 9885 | 9300 |
10億円 | 19750 | 17810 | 16635 | 15650 |
20億円 | 46645 | 43440 | 41183 | 39500 |
子供だけが相続人の場合
子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 | |
5,000万円 | 160 | 80 | 20 | 0 |
6,000万円 | 310 | 180 | 120 | 60 |
8,000万円 | 680 | 470 | 330 | 260 |
1億円 | 1220 | 770 | 630 | 490 |
1億5,000万円 | 2860 | 1840 | 1440 | 1240 |
2億円 | 4860 | 3340 | 2460 | 2120 |
2億5,000万円 | 6930 | 4920 | 3960 | 3120 |
3億円 | 9180 | 6920 | 5460 | 4580 |
5億円 | 19000 | 15210 | 12980 | 11040 |
7億円 | 29320 | 24500 | 21240 | 19040 |
10億円 | 45820 | 39500 | 35000 | 31770 |
20億円 | 100820 | 93290 | 85760 | 80500 |
縦が財産規模、横が家族構成で、そのぶつかるところが、家族全体でかかってくるであろう相続税額です。
財産額が上記の表の金額ピッタリの人はほとんどいないかと思いますので、自分はこのくらいかかるのかという目安にしてもらえれば。
この表、財産1億円なら相続税〇万円、財産8,000万円なら相続税△万円という具合に比較ができるので、あといくら相続税対策をしたら、税金がいくら減るかの目安にもなります。
なお、1つ目の表は、配偶者が法定相続分(2分の1)をもらった場合の相続税額です。
あくまで、家族全体でかかる相続税の早見表なので、「こう分けたら相続税はこうなる」というところまでは分かりません。
そこは税理士に試算してもらうのがよいのではないかと思います。
税理士にシミュレーションを頼んだ方がよい場合
だいたいの相続税額は、上記のようなやり方で把握はできますが、次のような場合は、税理士に相談されることをおすすめします。
- より詳細な金額を出したい→精細な財産評価が必要
- 「こう分けたら相続税がこうなる」というのを知りたい
- 財産の中に非上場株式がある→事業承継(会社の相続)対策も必要
- 遺言書作成を考えている→分け方により相続税を納税できる人・できない人が出てくる。
- シミュレーションから一歩進んで、実際に対策を打ちたい
- 夫婦の相続税シミュレーションをしたい→相続が発生する順番により相続税が変わってくるため。