戸籍には「有効期限」がある?

相続税申告や不動産の相続登記、財産の名義変更など、様々な相続手続きで必ずと言っていいほど必要になる資料が、「戸籍」です。

この戸籍には、「有効期限」があるのをご存知でしょうか?

なぜ戸籍が必要なのか?

相続手続きの現場で、戸籍が必要な理由は、簡単に言えば次の3つです。

  1. 被相続人(亡くなられた方)が、亡くなられていることを証明するため。
  2. 相続人全員を特定するため。
  3. 被相続人・相続人の身元確認のため。

このために、具体的に必要な書類が、

  1. 被相続人が、生まれてからお亡くなりになるまでに作られたすべての戸籍
    (戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
  2. 相続人の戸籍謄本(または戸籍抄本)

の2種類です。

生まれてからお亡くなりになるまでに作られたすべての戸籍が必要な理由

お亡くなりになった時の戸籍だけではなく、生まれてから作られたすべての戸籍がなぜ必要かというと、

「戸籍は、これまでに何回か作り直されているから」

です。

これはどういうことかというと、主に次の2つのパターンがあります。

  1. 法律が改正されるたびに、新しい法律に合わせた戸籍が作られた。
    (直近の改正は、平成6年。それまで横向きの用紙に縦書きで書かれていたのが、縦向き用紙に横書きに変わっています。)
  2. 結婚や離婚、分家(戦前の話)、転籍(例:大阪に本籍があったが、東京に住んでいるので、本籍地を東京に移した)などにより新しく戸籍が作られた。

新しく戸籍が作られた場合、新しい戸籍には、従前の戸籍の情報(結婚して戸籍を離れた子どもの情報や離婚した前妻の情報など)が引き継がれません。

そのため、出生からの戸籍を見ていかないと、正確な相続人の把握ができないのです。

よくあるのが、例えば、亡くなった父の戸籍を取ってみると、父には離婚歴があり、前妻との間に子供がいたということを初めて知ったというパターンです(もちろん、前妻との間の子供にも相続権があります)。

この例の場合、亡くなった父の最新の戸籍では、前妻の情報も、前妻との間の子供の情報もない場合が多いかと思います。

そのような相続人がいるかいないかの確認のためにも、生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍を取る必要があるのです。

戸籍の「有効期限」

戸籍には、それを使う場面によって、「有効期限」というものがあります。

この「有効期限」を意識しながら、相続手続き(相続税申告、不動産登記、預貯金などの名義変更、など)をどの順番でやっていくかを考える必要があります。

いつから「有効」なのか?

人が亡くなった場合は、役所に「死亡届」を提出する必要があります。

この届が出てから7~10日ほどで、戸籍に亡くなった旨が反映されますので、相続手続きも、この亡くなった旨が反映された戸籍が必要になります。

ちなみに、相続税申告に添付が求められる戸籍謄本は、亡くなった日から10日を経過した日以後のものとなっています。

いつまで「有効」なのか?

相続税申告

相続税の申告書に添付する戸籍は、発行から何か月以内のものに限る、といった制限はありません。

そのため、先に申告以外の手続きのために使い、申告のために使うのは最後、という優先順位になります。

そもそも、平成30年4月以降は、原本でなくとも、コピーの提出でもよくなっています。

なお、印鑑登録証明書(分割協議の場合には添付することになっています)については原本提出が求められていますので、注意が必要です。

不動産登記

こちらも特に有効期限はありません。

預貯金などの名義変更

銀行や証券会社などに提出する戸籍については、会社によって3か月以内であったり、6か月以内であったり、1年以内であったりするなど、まちまちです。

会社のホームページによっては、期限をはっきり書いていない(期限がない?)ところもあります。まずは、期限は何か月かを確認してから取るようにすればよいかと思います。

なるべく手間とお金をかけないように

手続きをする金融機関の数が多いと、その分、手間とお金がかかってしまいます。

金融機関の手続きについては、なるべく早い段階で残高証明書を取得するようにしましょう(この段階で戸籍を出すことで、その後の解約換金手続きでもう1度出す必要がない金融機関も多いです)。

また、戸籍は出し切りにするのではなく、必ず「原本還付」を求めるようにしましょう。そうすることで、戸籍のコピーを取って、原本は返してくれる金融機関が多いです。

返してもらった戸籍を別の金融機関でも使い回し、なるべくお金をかけないようにすることができます。

ただし、最近では、法務局が発行する「法定相続情報一覧図」というA4の紙1枚で、生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍と相続人の戸籍に換えることができるようになっていますので、これを金融機関の数だけ取って、同時に手続きを進めるというやり方もありです(この紙の取得費用自体は無料です)。

次の記事

近況報告