家族に給料を払っているなら、届出書を出して経費にしよう
個人事業主やフリーランスの方の中には、家族に事業を手伝ってもらっている方も多いかと思います。
家族に支払った給料は、原則として経費にはなりませんが、条件を満たせば経費にすることができます。
事業を手伝ってもらっていて、その対価としてお金を渡しているなら、経費にすることで節税効果を得ることも可能です。
※以下、青色申告をしていることを前提とします。また「家族」とは、ここでは一緒に生活している親族をいいます。
目次
経費として認められる条件
家族への給与が経費として認められる条件は、以下の通りです。
- ここでの「家族」は、15歳以上で、6か月超事業を手伝っていること。
- 手伝っている間、他の仕事には携わっていないこと。
- 届出書を提出していること(3/15までor手伝いだしてから2か月以内)
- 届出書に書いた方法通りに給料を支払い、書いた金額の範囲で支払うこと(増やす場合は、変更の届出書が必要です)。
- 労働の対価に見合う金額であること(多すぎる部分は経費として認められません)。
原則は経費として認められないものを経費とするので、少し条件が厳しめかもしれません。
他に気を付けること
これ以外にも、注意すべき点があります。
配偶者控除や扶養控除とのダブル適用はできない
配偶者や家族を扶養に入れている場合「配偶者控除」や「扶養控除」を受けることができますが、家族従業員として給料をもらっていて、それを経費に入れているなら「配偶者控除」や「扶養控除」を受けることができません。
(逆も然りです。)
いいとこ獲りはできない、というわけです(人ごとにどちらかを選ぶことはできます)。
不動産賃貸の場合は、規模が大きくないと経費として認められない
不動産賃貸業の方の場合、その事業規模が大きくないと、家族への給料が経費として認められません。
次のいずれかの基準に当てはまれば、「事業規模が大きい」ということで、家族への給料が経費として認められます。
- 独立した家屋(戸建て住宅など)を5棟以上貸している(貸す能力がある)。
- 部屋数(長屋やアパート、分譲マンション貸し)または貸地数にして10以上貸している(貸す能力がある)。
- 駐車可能台数にして50以上貸している(貸す能力がある)。
※これらが組み合わさっている場合は、換算(独立家屋1棟=2部屋、駐車台数10台=1部屋)して判断します。
※この基準に当てはまらなくても、収入金額の規模が大きい場合など、事業として認められる場合もあります。
家族がもらった給料にも税金がかかる
当たり前かもしれませんが、給料なので、一定額以上なら税金がかかります。
また、国民健康保険に加入していれば、家族への給料も所得としてカウントされます。
給与vs所得控除 どちらが有利?
先ほど、「家族への給料を経費にすること」と「配偶者控除や扶養控除を受けること」は両立できないと書きましたが、では、どちらが有利なのでしょうか?
配偶者控除や扶養控除の金額は、次のようになっています。
区分 | 控除額 |
配偶者(70歳未満) | 1~38万円 |
配偶者(70歳以上) | 1~48万円 |
19~22歳の家族 | 63万円 |
70歳以上の家族(親以外) | 48万円 |
70歳以上の親(義両親も含む) | 58万円 |
その他の家族(16歳以上) | 38万円 |
※配偶者控除は、本人や配偶者の所得金額により段階的に変わります。
上記の表を見ると、控除を受けられるのは多くても63万円なので、それ以上に給料を出した方が節税になります。
なお、月88,000円以上支払う場合は源泉徴収が必要になり、年103万円超なら所得税がかかる可能性がありますが、それを考えても、給料を経費とした方が節税となる可能性が高いです(本人の所得金額にもよりますが)。
法人化した方が楽かも
以上は個人事業主の場合の話ですが、会社で事業をしている方が家族従業員への給料は経費にしやすいです。
<個人事業と会社の比較>
個人事業 | 会社 |
15歳以上で、6か月超携わっていること | 年齢制限や従事期間制限なし |
手伝っている間は、他の仕事に携わっていないこと | 副業OK |
届出書の提出が必要 | 届出書の提出は不要(役員賞与を除く) |
届出書に書いた方法通りに給料を支払い、書いた金額の範囲で支払う | 届出書の提出が不要なので、変更は可能(役員報酬の場合は、毎月定額である必要があります) |
労働の対価に見合う金額であること | 従業員の場合:労働の対価に見合う金額であること
役員の場合 :職務遂行の対価なので、労働量に見合わなくてもOK(非常勤なのに多すぎると認められないことはあります) |
「家族従業員への給料を経費にしやすいかどうか」という点で言えば、会社の方が比較的フリーハンドです。
法人化するかどうかの検討の視点の1つにしていただければ。
まとめ
家族への給料のほか、青色申告特別控除(最大65万円)や各種共済(小規模企業共済や経営セーフティ共済)など、資金に余力があって、知っていれば大きく節税できるは、たくさんあります。
確定申告の時期は、こういった手段の検討をするのにいい時期かもしれません。