合同会社の設立のメリット
事業が軌道にのってくると、個人事業から会社組織への変更(法人化、法人成り)を検討される方もいらっしゃるかと思います。
また、はじめから会社組織で事業をするという方もいらっしゃるかと思います。
今日は、いくつかある会社組織の中でも、私も設立をした「合同会社」についてお話をしたいと思います。
5つの会社組織
「会社」と呼ばれる組織には、5つのタイプがあります。
- 合名会社
- 合資会社
- 有限会社
- 株式会社
- 合同会社
この中で、「有限会社」については、平成18年の「会社法」の施行で新しく作ることはできなくなりました(それまで有限会社であった会社は、引き続き「有限会社」を名乗ることはできます)。
この時「有限会社」にかわって登場したのが、「合同会社」です。
合同会社の特徴
合名会社の特徴を他の3組織と比較すると次のようになります。
合名会社 | 合資会社 | 株式会社 | 合同会社 | |
必要な出資者(株主・社員)の数 | 1人以上 | 2人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
出資者が負う責任 | 無限責任 | 無限責任の社員と有限責任の社員が混在する。 | 有限責任 | 有限責任 |
設立費用 | 10万円(登録免許税6万円+定款印紙4万円) | 10万円(登録免許税6万円+定款印紙4万円) | 24万2千円(登録免許税15万円+定款認証費用5万2千円+定款印紙4万円) | 10万円(登録免許税6万円+定款印紙4万円) |
利益の配分(配当) | 出資比率に関係なく、自由に決められる。 | 出資比率に関係なく、自由に決められる。 | 出資比率に応じて配分する。 | 出資比率に関係なく、自由に決められる。 |
意思決定 | 自由に会社のルール(定款)を設計することができる。 | 自由に会社のルール(定款)を設計することができる。 | 重要な方針は株主総会で決定される。 |
自由に会社のルール(定款)を設計することができる。 |
上記の表に出てくる用語について、いくつか補足をします。
- 「無限責任」「有限責任」の違い
・・・会社が負った債務(借金や損害賠償責任など)について、出資者がどこまで責任を持たないといけないかという点に違いがあります。「無限責任」は、会社が負った債務の全額について責任を負わなければなりません。ちなみに個人事業主も「無限責任」なので、合名会社は個人事業に近い会社形態です。
「有限責任」は、自分が出資した金額までしか責任を負わなくてもよいことになっています。
例えば、会社に100万円を出資したけれども、その会社が1億円の債務を抱えて倒産した場合、
「無限責任」であれば、1億円全てを返済しなければなりませんが、
「有限責任」であれば、出資した100万円が返ってこなくなるだけで済みます。 - 「株主」「社員」について
ここで言う「社員」とは、「従業員」や「会社員」という意味ではなく、「出資者」という意味です。「社員」の中で、経営を行う人のことを「業務執行社員」といいます(株式会社の取締役に当たります)。
- 利益の配分について
株式会社であれば、配当金は出資比率に応じて支払われます。
例えば、Aさん:100万円 Bさん:900万円 をそれぞれ出資していたとすると、配当金は1:9の比率で分ける必要があります。しかし合同会社などでは、この比率を自由に決めることができます。
例えば、
「AさんとBさんの出資比率は1:9だけれども、Aさんの知識や技術力のおかげで商売がうまくできているので、利益の配分は5:5にしよう」
といったこともできます。 - 合名会社や合資会社は、近年はあまり設立されることはありませんが、合名会社については相続税対策のために利用されることはあります。会社が債務超過の場合、株式会社の株価はマイナスにはなりませんが(ゼロ円評価)、合名会社の持ち分(株式に当たります)はマイナス評価されることもあるため、相続税の圧縮効果があるためです。
かつては株式会社や有限会社がメインでしたが、平成18年に会社法が施行されてからは、
- 設立費用が安く、
- 有限責任で
- 経営の自由度が高い
合同会社の人気が高まっています。
まとめ
このようなことから、比較的小規模の事業で利用されることも多いです。
会社をもっと発展させていきたい、そのためにもっと出資を募りたい、という方には不向きかもしれません(その意味では株式会社の方が向いているかもしれません)が、後で合同会社から株式会社に組織変更することも可能なので、初期費用を抑えたい場合には、利用してみるのも一考です。
次回は、合同会社の設立の手順について、私の例をもとにお話してみたいと思います。