法人化を検討するポイント②

昨日(3/17)に続き、法人化するメリットについてお話したいと思います。

法人化を検討するポイント①

 

法人化の事業承継面でのメリット

法人を利用して、事業を後継者に引き継がせることもできます。

一般的に、次のような手順を踏みます。

  1. 後継者が金銭を出資して会社を作る(この時の金銭を先代が贈与するのも、また相続税対策になります)。
  2. 新会社は、先代から事業用財産を買い取る。
    (買い取り資金が足りなければ、金融機関からの借り入れを検討)

ここでのポイントは、会社の株主となるのは先代ではなく、後継者という点です。

先代が株主だと、会社の株式を介して事業用財産を所有し続けることになり、個人事業の時と変わらないからです。後継者が株主となることで、会社の株式を介して、後継者が事業を所有することになるのです。

 

注意点は、先代が事業用財産を新会社に売却する時に所得税や売却コストなどがかかる点です。

しかし、法人化による節税メリット(3/17の記事参照)や相続税の節税メリットで、売却コストを回収できるのであれば、検討の価値があると思います。

事業承継の面から見たメリットは、次の通りです。

  • 先代・・・事業用財産がお金に変わるので、納税対策・分割対策・節税対策が取りやすくなる。
  • 後継者・・・事業の所有者になるので、事業用財産の組み換え(特に不動産賃貸業の場合)や事業転換、新規事業への挑戦など、新しい取り組みを自分の意思で決定しやすい。
  • 新会社が所有する財産は、先代に相続が発生しても、名義変更の必要が無い(先代が新会社の取締役に名を連ねていれば、会社の登記をする必要はあります)。
  • 後継者の次の代への事業承継は、会社の株式を渡すだけでよい(会社の所有という面だけで見れば)。

この方法は、特に不動産賃貸業を営んでいる方がよく使われる手法です。

 

マイナンバーを相手に知らせなくてよい

マイナンバーの観点からも、法人化した方がよいこともあります(それだけのために法人化するにはコストが大きいかもしれませんが)。

次のような報酬や料金を支払った場合は、年に1回、支払った相手方の情報(名前・住所・マイナンバー)と1年間(1/1~12/31)に支払った金額を税務署に報告する必要があります(法定調書といいます)。

  • 士業(税理士や弁護士など)への報酬
  • 原稿料や講演料など
  • 保険の外交員の報酬  など

※一定金額以下なら報告の必要はありません。

 

また、事業者(個人事業主や会社)が個人の大家さんから不動産を借りていた場合も、同様に年に1回、大家さんの情報(名前・住所・マイナンバー)と1年間に支払った家賃の金額を税務署に報告する必要があります(これも一定金額以下なら報告の必要はありません)。

 

以上を見てもらえればお分かりの通り、個人事業主や個人の大家さんから見れば、報酬や家賃をもらった相手方にマイナンバーを教える必要があります。

もし法人化していれば、個人のマイナンバーを教える必要がありません。

法人には、「法人番号」という法人版のマイナンバーが付されていて、世の中に公表されているからです。
(「国税庁法人番号公表サイト」で法人名を入力すると誰でも検索できます)

なお、法人の不動産賃貸業であれば、権利金や更新料を支払ったのでなければ、法定調書を出す必要もありません。

 

まとめ

会社の設立には、お金がかかります(株式会社で約20万円、合同会社で6万円~)。

また、赤字であっても税金(住民税の均等割)がかかりますし、法人税の申告は所得税の確定申告に比べ、難易度が上がります。

それでも、昨日・今日で挙げた面から、法人で事業をした方がよい場合があります。

事業が軌道にのったら、メリット・デメリットを整理(≒シミュレーション)した上で、検討してみるのもいいかと思います。

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合同会社の設立のメリット