不動産だけでも遺言書で分け方を決めておこう
遺言書を書きたいと思っていても、どう分けたらよいか決まらず、書き出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そのような方であっても、不動産だけでも先に遺言書を書いておくことをお勧めします。
目次
一部の財産だけでも遺言書で分け方を指定できるが・・・
全財産について遺言書で分け方を決めておくのが一番ではありますが、一部の財産だけ遺言書で分け方を決めて、残りの財産は相続人の話し合い(遺産分割協議)に委ねることも可能です。
ただし、残りの財産の分け方をめぐって揉め、調停や裁判などに持ち込まれた場合は、先に遺言書で分け方を決めた財産を含めた全財産をもって法定相続分通りに分けることになります。
もし先に遺言でもらった財産が法定相続分を超えていれば、その超えた分を他の相続人に渡さなければならなくなるので、注意が必要です。
そのため、原則はやはり全財産について遺言書を書くのが最善策です。
それでも、不動産だけでも先に分け方を決めておくメリットは・・・
それでも、不動産だけでも先に遺言書を書いて、分け方を決めておくのには、次のようなメリットがあります。
メリット① 税務上の特典が受けられる
1つ目は、不動産を誰が引き継ぐか決まっていることで受けられる税務上の特典にあります。
- 小規模宅地等の特例(相続税)
- 3,000万円特別控除(所得税)
- 買い換え特例(所得税)
※適用を受けるための他の要件も満たしていることが前提です。
これらが使えるかどうかで、税額に与える影響が大きいので、不動産だけでも先に決めておくことで、余計な税金を残された人たちに支払わせることがなくなります。
メリット② 枝分かれを防げる
2つ目は、未分割のまま、代替わりによって相続人が枝分かれを防げるという点です。
遺産が未分割のまま、子供世代、孫世代と代替わりしていくと、大勢の親族による共有状態となります。
動産や現金であれば、保管者が何らかの処分が出来ないわけでもなく(法律上正当な手続きではありませんが、利害関係者の誰も不満がなければ、結果的に許容される余地はあります)、また預金であれば相続人が一定額までは引き出すこともできます。
しかし、不動産の場合は、法務局が絡んでくるため、そのような処理ができません。
枝分かれの結果、相続人が大勢になってしまい、全員から同意を得るのが難しくなり、不動産の売却などの処分も難しくなってしまいます。
このような不動産が、日本全国で、面積にして九州ほどの広さにまで拡大しているそうです。
遺言書を書いて次の所有者を決めておけば、住むことも、売ることも、貸すこともでき、残された家族のためにもなります。
メリット③ 確定申告がラクになる(不動産賃貸の場合)
3つ目は、不動産を賃貸している場合には、それを引き継ぐ相続人の確定申告の手間が減るという点です。
もし遺言書がなく、相続開始から何か月かして、遺産分割協議で取得者が決まった場合は、
- 相続開始~分割決定まで:相続人全員の所得となります(法定相続分で按分)。
- 分割決定後 :取得者の所得となります。
そのため、取得する予定がない人、結果的に取得しなかった人も、分割が決まるまでの期間の不動産所得について、確定申告の手間が出てきますし、余計な税金を支払うことにもなります。
遺言書がある場合は、相続開始日以降の不動産所得は、その物件の取得者のものとなりますので、取得しなかった相続人には確定申告の手間は発生しません。
ちなみに、1月1日から相続開始日までの不動産所得は、被相続人のものとなります。
まとめ
まずは、不動産を取っ掛かりにして、その後他の財産の分け方も遺言書で決めておくと良いでしょう。
また、後から書き直しも可能ですので、まずは書いてみましょう、