「贈与する時期・金額は毎年変えた方が良い」は本当?

 
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相続税対策として一番有名な方法と言っても過言ではないのが、「暦年贈与」です。

贈与税は、【贈与してもらう人】1人当たり110万円を超える贈与があれば、その超える部分に対してかかる税金です。

そのため、毎年110万円以内で贈与を行っていけば、

  • 贈与してもらう人:贈与税がかからない。
  • 贈与する人:手持ちの財産を減らせるので、相続税対策になる。

という効果が得られます(亡くなる3年以内については相続財産に持ち戻さないといけないのですが)。

しかし、「毎年同じ時期に、同じ金額贈与すると、贈与税がかかる」と言われることがあります。

 

「定期贈与」にご注意

たとえば年間100万円の贈与であれば、もらった人には贈与税はかかりません。

では、それを10年間続けた場合はどうなるでしょうか?

普通に考えれば、1年間の贈与税額は0円ですので、それを10年続けようが、100年続けようが、0円です。

しかし、国税庁のQ&Aでは、次のように書かれています。

Q1

 親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。

A1

 定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
 ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約(約束)をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
(中略)

(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)

 

つまり、

  • 合計1,000万円を10年に分けて贈与することが
  • 最初に契約(約束)されている

のであれば、最初の年に1,000万円(をもらえる権利)を贈与したものとして、贈与税を計算するということです。

仮に1,000万円を贈与したということになれば、177万円(もらう人の年齢や関係性によっては231万円)の贈与税が最初の年にかかることになります。

これを「定期贈与」と言います。

 

「定期贈与」と言われないためには?

では、毎年同じ時期に、同じ金額だけ贈与していれば、必ず「定期贈与」ということで、最初の年に贈与税がたくさんかかるのでしょうか?

答えは「No」です。

国税庁のQ&Aにも書いていますが、

  • 10年間にわたって贈与することが約束されている場合には、最初の年に「1,000万円をもらう権利」を贈与したものとするが、
  • 【毎年贈与契約を結び】、【それに基づいて贈与していた】のであれば、年ごとに贈与金額を判定する

ことになります。

つまり、贈与のごとに「贈与契約書」を作成しておくことが大切なのです。

「贈与契約書」は、「あげます」「もらいます」の約束を毎年していたという証拠になりますので、逆に言うと契約書がなければ、最初の年に「10年にわたって毎年あげます」「10年にわたって毎年もらいます」という約束をしていた、とも言われかねないのです。

 

贈与契約書さえ作っておけばいいってもんじゃない?

では、贈与契約書を形式的に整えておけば良いかと言うと、そうでもありません。

次に掲げることは、税金面からも大切ですし、のちに相続人のあいだで遺産分けに関して紛争が生じてしまった場面においても強力な証拠になり得ます。

都度つくる

一番大事なのは、贈与の都度つくることです。

当たり前ですが、贈与したときからかなり年月が経ってから後追いでつくっていれば、それは文書の偽造ですし、税金を逃れる目的でそれをしていて税務調査で発覚すれば、重加算税という一番重いペナルティが課される可能性もあります。

署名は直筆、なつ印は実印で

贈与契約書の本文自体は、自筆証書遺言などとは違い、パソコンで作成しても問題ありませんが、贈与する人・贈与してもらう人の署名だけは、当事者の直筆サインにしておいた方が良いです。

筆跡が重要な証拠となるからです。

また、なつ印についても、できれば当事者しか持っていない「実印」を押しておくと、より強力な証拠となります。

2通つくる

契約書を交わす際は、2通つくり、当事者同士がそれぞれ1通ずつ持っておくのが普通です。

「贈与契約」についても同じように、贈与者・受贈者それぞれが1通ずつ持っておくようにしましょう。

未成年者に贈与するときは親がサインする

未成年者に贈与するときは、その親に「親権者」として代わりに署名・なつ印してもらうようにしましょう。

「確定日付印」をもらうー贈与契約書がその時存在したという証拠を残す

お金と手間はかかりますが、贈与契約書を作ったら、間を置かずに、公証役場にて「確定日付印」をもらうのもおすすめです。

「確定日付印」とは、その文書が、その日現在存在していたことを公証人が証明したことを示すハンコです。

1件につき700円かかり、公証役場まで出向かなければなりませんが、後付けで贈与契約書を作ったものではない」ということを補強する手段としておすすめです。

確実に財産を移転しましょう

契約の体裁だけ整えればよいのではなく、贈与者から受贈者へ財産を確実に移転させることも大事です。

  • 不動産:登記をする。
  • 株式・投資信託など:株主名簿を書き換える、受贈者の証券口座に移す。
  • 預貯金:受贈者が自分の意思で使える口座に移す。

一例を挙げましたが、これらについて共通して言えることは、

  • 贈与したという【記録】が残っている
  • 受贈者が、もらった財産を【自由に】使える(処分できる)

という状態になっているということです。