「売却金額<購入金額なら確定申告はいらない(不動産)」は本当?
「不動産を売却したんですけど、売れた金額が買った時の金額よりも小さくなってしまいました。損しているんですけど、それでも確定申告は必要ですか?」
この時期、このようなご質問をよくお受けしています。
売却金額<購入金額となってしまったら、本当に確定申告は不要なのでしょうか?
(自宅などの事業用でない不動産を売却した場合でお話したいと思います。)
「売却金額<購入金額」=「損が出ている」とは限らない
確かに、売却損が出ていれば、確定申告は必要ありません。
しかし、「売却金額<購入金額」となっていれば、「売却損が出ている」とは必ずしも言えません。
その理由は、「減価償却」にあります。
売却損益は、次のようにして求めることができます。
売却損益=売却金額ー取得費ー諸経費
この「取得費」とは、「購入金額」のことでは必ずしもありません。
売却した不動産が建物であれば、経年劣化による価値の低下を「購入金額」に反映させる必要があります。
これを「減価償却」といいます。
取得費=購入金額ー減価償却費
※所有期間中にリフォームした場合などは考慮していません。
建物の購入金額が分かっている場合は、その減価償却費は次のようにして求めます。
減価償却費=購入金額×0.9×償却率※1×経過年数※2
※1:償却率
建物の構造 | 償却率 | |
木造モルタル造 | 0.034 | |
木造 | 0.031 | |
鉄骨造 | 骨格材の肉厚3ミリ以下 | 0.036 |
骨格材の肉厚4ミリ以下 | 0.025 | |
骨格材の肉厚4ミリ超 | 0.020 | |
鉄筋コンクリート造 | 0.015 |
※2:1年未満の端数については、6か月未満は切り捨て、6か月以上は1年に切り上げます。
このようにして計算した結果、「売却金額<購入金額」であっても、「売却金額>取得費」となる可能性はあるため、必ずしも売却損が出ているとは限らないのです。
特に年数がかなり経過している不動産だと、こういうことが起こりやすいです。
売却金額が購入金額よりもよほど下回っているのでなければ、一度上の式でざっと計算してみることがおすすめです。
なお、土地については減価償却が行われないので、「購入金額=取得費」となることが多いです。
売却損が出ていても、申告することで税金が取り戻せるかも
自宅の場合は、売却損が出ていたとしても、申告をすることで税金が取り戻せることがあります。
詳細は、下記記事を参照していただければと思いますが、要は住宅ローンが絡んでいれば、売却損を給与などの所得と相殺させたり、翌年から最長3年間繰り越せたりすることができ、その結果税金が還付されるというものです。
まとめ
「売却損が出ている=申告は不要」とは短絡的に考えないようにしましょう。
実は申告が必要だったり、申告をすることで税金を取り戻せたりすることがあるのです。