「相続」と「遺贈」の違い(遺言書の文言には気をつけましょう)

 
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相続106

 

亡くなった人から財産を取得する方法には、2つの方法があります。

  • 相続
  • 遺贈

※他に「死因贈与」というものもありますが、この記事では割愛します。

この2つの方法は、人が亡くなることで財産が誰かに移転するという点では似ていますが、一方で違いもあります。

遺言書を書く場合には、この違いに注意して使い分ける必要があります。

 

「相続」と「遺贈」の違い

相続

「相続」とは、人が亡くなった場合に、生前に有していた財産上の権利・義務を「一定の関係がある人」に移転することをいいます。

「一定の関係がある人」というのが、いわゆる相続人です。

相続人は、次のようにして決めます。

  1. 配偶者がいれば、その配偶者は必ず相続人になります。
  2. 子どもがいれば、子どもも相続人になります(子どもが先に亡くなっていて、その子ども(=孫)がいれば孫が代わりに相続人になります)。
  3. 子どもも孫もいなければ、親が相続人になります(滅多にないことですが、親が先に亡くなっていて祖父母が健在なら祖父母が相続人になります)。
  4. 親もいなければ、きょうだいが相続人になります(きょうだいが先に亡くなっていて、その子ども(=甥姪)がいれば甥姪が代わりに相続人になります)。

そのため、遺言書を書く時に、このルールで相続人になれない人に財産をあげる場合は、「相続させる」とは書けません(後述)。

逆に、相続人となる人に遺言書で財産を遺す場合には、「相続させる」とも書けますし、「遺贈させる」とも書けます。

遺贈

一方、「遺贈」は遺言書で財産を無償で譲ることをいいます。

この譲る相手(=受遺者)は誰であっても構いません。

相続人でない親族でも構いませんし、血のつながりのない友人・知人・恩人であっても構いませんし、法人(会社、公益法人など)であっても構いません。

これらの人(や団体)に財産を遺す場合には、遺言書を以ってしか遺すことができず、その場合は「遺贈する」としか書けません。

 

相続人に「遺贈する」と書いた場合の問題点、相続人以外の人に「相続させる」と書いた場合の問題点

相続人に「遺贈する」と書いた場合

相続人に「遺贈する」と書いた場合に問題となるのは、不動産の登記の時です。

受遺者(遺贈された人)が不動産を取得しようとすると、他の相続人全員と共同で登記の申請をしなければなりません。

他の相続人に協力を得なければならない分、手間がかかりますし、仲が良くなければそもそも協力を得られない可能性もありますので、文言には注意する必要があります。

ただし、遺言執行者を決めておけば、その遺言執行者と受遺者が共同で申請をすることで登記はできるようになっています。

また、受遺者の場合は登記をしておかなければ、自分の権利(所有権)を他人に主張することができませんが、相続人であれば(「相続させる」という文言であれば)登記をしなくても自分の権利(所有権)を他人に主張することができます(登記はどちらにしてもしておいた方がいいのですが)。

相続人以外の人に「相続させる」と書いた場合

相続人でない人には「相続させる」とは書けませんが、仮にそのように書いてあったとしても、亡くなった人の真意をなるべく汲み取って「遺贈する」と書いてあるものと解釈することになるため、特に問題はありません。

しかし、正しく使い分けるようにはした方がよいと思います。

 

まとめ

このように、

  • 相続人には「相続させる」
  • 相続人以外の人(団体)には「遺贈する」

と遺言書に書くのが無難です。

特に不動産登記が絡む場合は、相続人には「相続させる」と書いておかないと、色々めんどうなことになります。