家族以外の人に遺言で財産を遺す場合に気をつけること

 
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相続106

 

遺言書があれば、相続人になれない人(いとこ、子どもの配偶者、友人、お世話になった人など)にも財産を遺してあげること(=遺贈)ができます。

しかし、遺言書があっても、とくに家族でない人に財産を遺そうとすると、何かと困難がつきまとうことがあります。

 

どこの誰に財産を遺すか明確にすること

まずは「どこの誰に財産を遺すのか」を遺言書において明確にしておくことが大切です。

遺言書を遺した本人にとってはよく知っている人でも、残された家族にとっては知らない人、ということも少なくはありません。

遺言書の中でどこの誰かを明確にしておくとともに、信頼できる(推定)相続人には、その人のことを話しておくとよいでしょう。

 

遺言書によって財産がもらえることを本人に伝わるようにする

遺言書で財産を遺してあげることにしていても、そのことが当の本人に伝わらなければ意味がありません(前述のようにどこの誰かが分からなければ、なおさらです)。

もし自筆証書遺言(自宅保管の場合)で相続人でない人にも財産を遺してあげることにしていたら、相続人の財産の取り分が減ってしまいますので、遺言書が隠されたり、改ざんされたり、廃棄されたりして、遺言書の内容がその人に伝わらない恐れもあります。

そうならないように、対策が必要です。

もし財産をもらう本人に伝えても大丈夫であれば、伝えておくのが一番です。

諸事情で伝えるのが難しければ、信頼できる家族や専門家(税理士、行政書士、弁護士など)に保管してもらったり遺言執行者になってもらったりして、相続後に伝わるような手立てをしておく必要があります。

 

相続人の遺留分には注意

有効な遺言書が書いてあっても、相続人には最低限の取り分である「遺留分」というものが存在します(法定相続分の2分の1または3分の1)。

これを侵すような額の財産(=財産の過半数)を遺言書で他の人に遺そうとすると、その人と相続人との間でもめるもとになりますので、それを踏まえた上でいくら遺すか、何を遺すかを考えるようにしましょう。

 

相続税的には何かと不利

相続税がかかる場合には、相続人でない人が財産を取得しようとすると、相続人に比べて相続税的には何かと不利な設計になっています(ただで財産をもらえるのだから仕方がないのかもしれませんが)。

まず、相続人が相続するよりも2割増しの相続税がかかります(これはきょうだいや甥姪にも当てはまりますが)。

また、親族でもない人が財産を取得する場合には、下記のような特例を受けることもできません。

特例 備考
小規模宅地等の特例 親族でないと受けられません(逆に言うと相続人でなくても要件を満たす親族であれば、特例を受けることができます)。
生命保険金や死亡退職金の非課税枠
(500万円×法定相続人の数)
親族であっても相続人でなければ非課税枠の適用が受けられません。
配偶者の税額軽減 内縁関係にある人はこれを受けることができません(婚姻関係にある人だけ)。
債務控除 ただし「包括遺贈」(財産の〇分の△を譲る、といった財産のあげ方)でもらった人であればできることがあります。
未成年者控除・障害者控除 相続人でなければ非課税枠の適用が受けられません。

 

また、現状の相続税申告のやり方は、被相続人の財産をすべて集計し、全体の相続税を計算した上で、それぞれの人がもらう財産額に応じて相続税の負担額が決まる方式になっています。

そのため、場合によっては相続人が家族でない他人と協力して相続税申告書を作成しなければならない事態も想定されます。

相続人や財産をもらう人それぞれで相続税申告するということもできなくはありませんが、実際にはかなり困難を伴います。

また、人間ではなく、会社に遺言書で財産を遺そうとすると、さらに税金的にややこしいことになることがあります。

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