会社に「相続」してもらうことはできる?できない?

 
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相続106

 

通常の相続は、亡くなった人の家族(配偶者や子どもなど)が相続人となり、財産を受け継ぎます。
また、遺言書があれば、相続人でない人にも財産を受け継がせることも可能です。

それでは、人間ではない会社(法人)に財産を「相続」してもらうことはできるのでしょうか?

 

結論:会社も「相続」できる

結論から言うと、会社も「相続」することができます。

「相続」とカギかっこで括っているのには意味があります。
正確に言うと、会社は「相続」はできないのです(分かりやすく、便宜的に「相続」と表現しています)。

相続できるのは、相続人(配偶者や子ども・孫など。子どもも孫もいなければ両親や兄弟姉妹が相続人になることもあります)だけと決まっており、それ以外の人が亡くなった人から財産をもらうには、遺言書で財産の承継者に指定されている必要があります。

この方法で財産を受け継ぐことを「遺贈」と言います。

遺言書で会社が財産の承継者に指定されていれば、会社も財産を受け継ぐことができます。

 

会社も相続税を支払わないといけない?

それでは、会社が遺言書で財産を承継したら、他の相続人等と同じく、相続税を支払う必要があるのでしょうか?

答えは「No」です。

ただし、相続税以外の税金を支払う必要があります(しかも、それは会社に限らず、他の人にも影響がおよぶ可能性があります)。

相続人:所得税を支払わなければならない(かも)

まず、相続人は相続税とは別に「所得税」を支払わなければならないかもしれません。

「なぜ所得税?」かと言うと、被相続人から会社への財産の承継(遺贈)については、被相続人から会社に対して財産を「時価相当額で売却」したものと扱うためです。

不動産を承継させたのであれば売却益(相当額)の15.315%の所得税がかかりますし、保険契約を承継させたのであれば他の収入と合算させた上で所得税の税率が決まります。

「かも」と書いたのは、対象の財産の購入金額(を補正した金額)の方が時価よりも少ない場合は、逆に赤字となり、税金が発生しないためです。

なお、こうして相続人が負担する所得税は、財産額から控除することができるため、相続人が負担する相続税は少なくなります。

会社:法人税等の負担が増える(かも)

財産をもらった会社の側も税金の負担が増える可能性があります。

それは、会社が財産を「タダで」もらったことに起因します。

会社は何かをタダでもらった場合には、それだけ(=時価相当額)の収入があったものとされるため、その分会社の利益が増え、結果法人税等の負担が増えるのです。

ここでも「かも」と書いたのは、会社に累積の赤字がある場合です。
この場合は、タダで財産をもらったことによる収入と累積赤字との相殺で、結果的に法人税等の負担が発生しない可能性があります。

会社の株主:相続税の負担が増える(かも)

まわりまわって、会社の株主が相続税を負担しなければならない事態になるかもしれません。

これも会社が財産を「タダで」もらったことに起因します。

会社は何かをタダでもらった場合には、それだけ(=時価相当額)の収入があったものとされるため、その分会社の利益が増えると言いましたが、そうすると会社の「純資産」が増えることになります。

会社の純資産が増えると、それをもとに計算される会社の「株価」(ここでは非上場企業を前提にお話しています)が値上がりする可能性があります。

その値上がり益分が、被相続人から会社の株主に対して財産の遺贈があったものとみなされるためです。

会社の株主が相続人であればまだいいかもしれませんが、相続人でない人や親族ですらない人がいると、その人たちにも相続税申告をしてもらわなければならず、とてもややこしいことになる可能性があります。

なお、会社が財産をタダでもらったことによる収入が計上されても、会社の債務超過が解消されないのであれば、株価に変動はない(株価0→株価0のまま)ので、その場合には会社の株主に相続税は発生しない「かも」しれません。

 

まとめ

会社への「相続」は、場合によっては所得税・法人税等・相続税の「トリプル課税」になる恐れがあります。

対象財産の時価にもよるところがありますし、総合的に判断してそちらの方が得であればいいかもしれません。

また、会社そのものは「死なない」ので(倒産することはありますが)、いったん会社が「相続」してしまえば、そこからまた相続が発生することはなくなります。

それでも、安易に会社に「相続」してもらおうとするのはやめたほうがいいかもしれませんね。