過去に提出した申告書を見たいけど、控えを無くしてしまった!という方には「閲覧サービス」と「開示請求」

 
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相続106

 

相続税申告では、過去に提出した申告書の情報が必要になる場合があります。
その情報によって、余計な税金を支払うのを防いだり、逆に申告漏れを防いだりできることがあります。

しかし、その情報が必要な当事者が当時の申告にかかわっていないと申告書が手元になかったり、申告書の控えを無くしてしまっていたりすることがあります。

そんな時に役に立つサービスが税務署で提供されています。

 

相続税申告で過去の申告書が必要になる場合

相続税申告で過去の申告書(ここでは相続税だけでなく、贈与税も含みます)が必要になる場合とは、次のような場合です。

相次相続控除(過去に支払った相続税を控除できる)

「相次相続控除」とは、

  • 【今回亡くなった人(被相続人)】が、
  • 過去10年以内に、
  • 【相続人の立場(財産をもらう側)】で財産を取得し、
  • 【相続税】を支払っていた場合に、
  • その【相続税】の一部を控除できる制度です。

【前回の相続がいつであるか】や【前回の相続税申告でいくら相続税を納めたか】などは申告書が無くても分かりそうですが、【控除できる金額】はそれだけでは計算できません。

【前回の相続で財産をいくらもらったか】という情報が必要であるため、どうしても【前回の相続税の申告書】が必要になってきます。

障害者控除や未成年者控除

相続人が障がい者や未成年に該当する場合は、次の金額を相続税から控除することができます。

  • 障がい者:10万円※×(85歳ー相続時の年齢)
  • 未成年者:10万円×(20歳ー相続時の年齢)

※「特別障害者」に該当する場合は、20万円

これらの控除を【以前の相続税申告】でも受けていて【今回の相続税申告】でも受けようとする場合は、控除できる金額が制限されます。

 10万円or20万円×(85歳or20歳ー最初に控除を受けた年齢)ーこれまでの控除金額

【以前の相続税申告】でいくら控除しているかは、やはり【以前の相続税申告書】を見ないと分かりません。

生前贈与

【相続などで財産をもらった人】※が、相続前3年以内に【被相続人】から贈与を受けていた場合は、その贈与金額を【相続財産】に持ち戻し、あらためて相続税を計算し直す必要があります(贈与時に贈与税を支払っていれば、その贈与税額を控除することもできます)。

※通常は【相続人】になりますが、

  • 相続人でも財産を相続しない人はここから外れますし、
  • 相続人でない人でも、「遺言書」で財産をもらう人はここに含まれます。

また、「相続時精算課税制度」(2,500万円まで贈与税ゼロで贈与可能な制度)で贈与を受けていた人がいれば、やはりその贈与金額を【相続財産】に持ち戻し、あらためて相続税を計算し直す必要があります(贈与時に贈与税を支払っていれば、その贈与税額を控除することもできます)。

このとき、【いつ贈与してもらったか】【いくら贈与してもらったか】【いくら贈与税を支払っているか】という情報が必要になるため、【過去の贈与税申告書】を見る必要が出てきます。

 

そんな時役に立つのが「申告書等閲覧サービス」

【過去の相続税申告】なら今回の相続の当事者が関わっていない可能性がありますし、【贈与税申告】なら贈与を受けていない人は関わっていない可能性もあります。

また、そもそも申告書の控えを紛失してしまっているケースもあるかと思います。

そんな人のために、税務署では役に立つサービスが提供されています。
それが「申告書等閲覧サービス」です。

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/050301/01.htm

「申告書等閲覧申請書」という書類に必要事項を記載して、申告書が提出された税務署に持ち込めば、税務署で保管している申告書を見せてもらうことができます。

閲覧申請書

ただし、いくつか注意が必要です。

コピーはもらえない(写し書きか写真撮影)

このサービスはあくまで「閲覧」なので、コピーはよほどのことがなければもらうことはできません。

中身の情報が必要な場合は、次のいずれかの方法で取得するしかありません。

  • 白紙やサラの申告書用紙に書き写す。
  • デジカメやスマホ、タブレットなどで撮影(動画は不可)する。

以前は「写し書き」しかできませんでしたが、最近になってスマホ等での撮影も可能になりました。

閲覧目的が限られている

閲覧目的は、「申請書」にもあるように、あくまで「申告書作成のため」か「過去に受けた特例などの確認や見直しのため」に限られています。

それ以外の目的での閲覧は認められていません。

色んな書類が必要

ここが最難関かもしれません。
閲覧させてもらうには、色んな書類を用意しておく必要があります。

いずれの場合も「本人確認書類」(免許証など)は必須ですが、他に下記のような書類が必要です。

申告した本人ではなく親族が代理で閲覧する場合

  • 委任状(上記リンク先に掲載されています)
  • 本人の印鑑登録証明書(発行1か月以内、以下も同じ)
  • 戸籍や住民票など(関係が分かるもの)

共同提出した相続税申告書を閲覧する場合

共同提出した人全員が税務署に行けるなら追加の書類は不要ですが、行けない人がいる場合は、その人の「委任状」と「印鑑登録証明書」が必要です。

それらが用意できない場合は、その人の部分についてはマスキングが施された状態で閲覧することになります。

申告した本人がなくなっている場合(その人の相続人が閲覧する場合)

  • 戸籍一式または法定相続情報一覧図
  • 委任状・印鑑登録証明書(税務署に行けない相続人がいる場合)

なお、税理士や弁護士、行政書士に代理で閲覧してもらうことも可能ですが、やはり委任状や印鑑登録証明書が必要になります。

 

贈与税申告については「開示請求」がおすすめ

贈与税申告については、上で述べたように、過去の贈与金額を相続財産に持ち戻さないといけない場合があり、相続税額の正しい算出にも影響するので、「開示請求」というものが認められています。

開示請求書

上記の「開示請求書」を必要書類(遺産分割協議書や遺言書、戸籍など)と一緒に、申告書を提出した税務署に提出すれば、後日税務署より書面で回答があります(閲覧と違い、郵送してもらうことも可能です)。

ただし、開示してもらえるのは、「開示対象者」が受けた贈与金額の合計額だけで、「だれが・何年何月何日に・いくら贈与してもらったか」までは分かりません。

また、開示請求をする人が、自分自身の贈与に関する情報を開示請求することはできませんので、相続人が複数いる場合は、お互いに開示請求しあう必要があります。

手元資料や上記の閲覧サービスで分からない場合や、贈与に関することを他の相続人から教えてもらえない場合に利用するようにした方がよいでしょう。