小規模企業共済と経営セーフティ共済、どちらが節税になる?
年の瀬がせまってきておりますが、今からでも何とかできる節税策と言えば、次の2つです。
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済
資金に余裕があれば、どちらも加入することをおすすめしますが(条件によっては加入できない場合もありますが)、どちらがより節税になるのでしょうか?
似て非なる小規模企業共済と経営セーフティ共済
小規模企業共済も経営セーフティ共済も、支払った掛け金の金額だけ課税所得を圧縮するため、【掛け金額×税率】分だけ節税になる点は同じです。
しかし、両者は、「どの場面で課税所得を圧縮するか」という点で異なります。
税金は、【課税所得×税率】で計算されますが、その【課税所得】は【合計所得金額ー所得控除額】から求めます。
その【合計所得金額】を構成する【各所得金額】は、種類にもよりますが、基本的には【収入ー経費】で求められます。
上の図のように、「経営セーフティ共済」は、【経費】を構成しますので、【事業所得】、ひいては【合計所得金額】の圧縮に貢献し、最終的には【課税所得金額】の圧縮にもつながります。
一方、「小規模企業共済」は、【所得控除額】を構成しますので、【課税所得金額】の圧縮にしかつながりません。
どちらも【課税所得金額】を圧縮しますので、【所得税】と【住民税】の節税には役立ちます。
しかし、所得控除をする前の【合計所得金額】の圧縮になるかならないかで、次のような違いが出てきます。
事業税と健康保険料の節税なら「経営セーフティ共済」
所得税と住民税以外に事業を営んでいるとかかってくるものが、【事業税】と【健康保険料(税)】です。
【事業税】については、【事業所得】をベースに計算されます(所得控除は関係ありません)。
また、【健康保険料(税)】は、【事業所得】を含めた【合計所得金額】をベースに計算されます(やはり所得控除は関係ありません)。
そのため、【事業所得】を圧縮させる効果がある「経営セーフティ共済」の方が、【事業税】と【健康保険料(税)】の節税には役立ちます。
受取時の節税なら「小規模企業共済」
一方、受取時においては、「小規模企業共済」の方が税金的には有利です。
受け取り方には、「一時金」で受け取る方法と「分割払い」で受け取る方法とがありますが、
- 「一時金」なら、「退職所得控除」(20年働けば800万円、その後は1年につき70万円控除可能)ができる上に、控除したあとの金額をさらに「2分の1」することができる。
- 「分割払い」なら、受取金額に応じた控除をした後の金額に課税される。
といったように、どちらも税制上の優遇がされています。
また、加入者が亡くなった場合には遺族が受け取ることになりますが、その受取金額にも【500万円×法定相続人の数】だけの非課税枠が設定されています(しかも生命保険金の非課税枠とは「別枠」です)。
他方、「経営セーフティ共済」の場合は、40か月分以上掛けていると、解約したときに元本の全額が戻ってきますが、返戻金は全額が【事業所得】での収入になります。
つまり、掛けた金額はそのまま経費になるものの、戻ってきた金額もそのまま収入になりますので、税金がかかるのを繰り延べていることになります。
もちろん、もうかっている時(=税率が高い時)に経費にし、もうかっていない時(=税率が低い時)に解約して収入にすることで、税率の差だけ節税することは可能です。
「経営セーフティ共済」は、解約のタイミングを見計らうことが大切です。
まとめ
12月30日まで営業している銀行が多いので、銀行でなら週明けでもまだ手続きは間に合う可能性があります(申込書類も銀行に置いてあることが多いですので、中小機構から取り寄せなくても構いません)。
ただし、経営セーフティ共済については、「納税証明書」が必要であり、「納税証明書」を取得できる税務署が開庁しているのが12月28日の夕方までなので、年内に加入して節税につなげるなら、週明けから動くようにしましょう。