たな卸しをしよう!
個人事業主や12月決算の会社にとっては、まもなく決算日を迎えようとしていますが、決算をする上で大事な作業があります。
それは、「たな卸し」です。
たな卸しは、とくに商品や製品がある業種の方にとっては、適正な利益を把握する上で大事な作業です。
目次
たな卸しとは何か?なぜしないといけないのか?
「たな卸し」とは、事業で扱っている商品や製品などの数を調査・確認し、金額に換算することを言います。
商品などを「たな」から「卸し」て数をかぞえるところからその言葉が来ています。
決算期末に売れずに残っている在庫(商品や製品など)の金額が分かったら、それを「仕入金額」から控除します。
なぜ、期末にそのようなことをしないといけないのでしょうか?
たな卸しをする理由①:適正な利益を計算するため
一番の理由は、たな卸しをしないと、適正な利益が出ないためです。
例えば、1個100円の商品を100個(100円×100個=10,000円)仕入れ、それを1個150円で50個売った場合で考えてみます(残り50個が在庫として期末に残っている状態です)。
100円のものを150円で売っているので、1個当たり50円の利益が出ているはずですが、たな卸しをせず、売上金額と仕入金額だけで利益を計算しようとすると、次のようになります。
売上:150円×50個 =7,500円
仕入:100円×100個=10,000円
利益: ▲2,500円
利益が出ているはずが、たな卸しをしないと決算書上は逆に赤字が出ています。
では、たな卸しにより、期末に残った在庫を仕入金額から除くとどうなるでしょうか?
売上:150円×50個 =7,500円
仕入:100円×100個=10,000円
在庫:100円×50個= ▲5,000円
利益: 2,500円
分かりやすく単純な例でお話しましたが、たな卸しをしないことでこのように適正な利益が計算できなくなります(黒字のはずなのに赤字になることもありえます)。
また、決算書の作成ルールの面からも、たな卸しをして、それを仕入金額から控除することは、半ば義務付けられています。
たな卸しをする理由②:資金繰りやコストダウンなどの判断のため
在庫とは、仕入れはしたけれども、売れていない商品や製品のことです。
つまり、「お金は出て行きっぱなしで、まだ回収ができていない」状態です。
それだけであれば、まだマシかもしれませんが、売れていない商品を保管するために余分に倉庫を借りたり、商品の状態が悪化しないように水道光熱費などのコストをかけたりしていると、さらに保管コストもかかってしまい、さらにお金が出て行ってしまいます。
決算期末にたまたま仕入れたものがタイミングの問題で残っていたなら(すぐ売れるなら)いいですが、仕入れてから売れずにずっと残っているのであれば、損失覚悟で在庫処分セールをして現金化したり、場合によっては廃棄処分したりすることも考えなければなりません。
在庫処分をすることで、それ以上損失がふくらむことを防げますし、そこで一時的な損失を計上することで、お金を出さずして節税をすることもできます(それまでにお金は出て行っているのですが)。
こういった資金繰りやコストダウンの判断のためには、どれが売れているか・売れていないかの定期的なたな卸し作業は欠かせません。
在庫の発生しない業種でもたな卸しが必要になることがある
商品や製品の取り扱いがある業種では、たな卸しは、制度の面からも、業績管理や資金繰りなどの面からも必須作業ですが、それでは商品や製品の取り扱いがない業種ではたな卸しは不要なのでしょうか?
実は、そうとは限らないのです。
切手やレターパック、はがき、印紙など
切手やレターパック、はがきなどは、購入時に【通信費】に計上しているところが多いかと思います。
また、印紙については、購入時に【租税公課】としているところが多いかと思います。
これらが期末に残っている場合には、それぞれの科目から控除する必要があります。
業種によっては、これらをたくさん消費し、いつもある程度ストックしておかなければならない会社もあるかと思います。
そういう場合は、期末時点の枚数をカウントしておく必要があります。
ファイルなどの消耗品
これは税理士事務所などの士業に多いのですが、ファイルなどの消耗品を大量買いしている場合は、やはり同じように経費項目(【消耗品費】や【事務用品費】などが多いかと思います)から控除しておく必要があります。
金額が少なければたな卸ししなくてもOK
商品や製品については、金額の多い・少ないは関係ありませんが、切手などや消耗品などについては、取り扱いが少なく、定期的に消費してしまうなら、損益に与える影響が少ないので、たな卸しをしないという選択肢でもOKです。