相続税申告は何か月でできるのか?!

 
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相続税申告は、亡くなってから10か月以内と決まっています(今はコロナのため、個別に期限延長が認められていますが)。

しかし、10か月まるまる使う必要は無く、早く終わらせられるなら早く終わらせたいものです。

だからと言って、確定申告のように1日、2日で終わるような簡単なものでもありません(確定申告も、その内容によっては時間がかかる場合もあります)。

相続税申告は、だいたいどのくらい時間がかかるのかを、その理由とともにお話したいと思います。
税理士に依頼する際に、「これくらいかかるんだ」という肌感覚として持っていただければ幸いです。

 

すんなり行って、だいたい3~4か月程度

財産の内容、難易度、納税資金の多寡、相続人の構成、揉めているかいないか、遺言書の有無、受任した税理士の習熟度や忙しさ具合、書類集めを誰が担当するかなどにより個人差がありますので、一概には言えませんが、私の経験上、すんなり行った場合でだいたい「3~4か月程度」はかかります(申告業務に取り組み始めてからの期間です)。

まず書類集めに時間がかかる

時間を食う要素の1つが、書類集めです。
税理士がやっても時間がかかります。

戸籍類

1つの自治体、しかも住んでいる自治体だけで完結するなら時間はかかりませんが、複数の自治体にわたったり、遠方の自治体から取り寄せなければならなかったりすると、郵送でのやり取りなどで時間がかかります(郵送だと請求してから1週間くらい)。

複数の自治体にまたがるなら、同時に取り寄せられないこともありませんが、新しい順に戸籍を追っていかないと、次にどこの自治体に請求しなければならないか分からないことが多いため、現実的には難しいです。

また、「法定相続情報一覧図」を作るなら、さらに1週間近く時間がかかります(ただし、取っておいた方が、のちのち時間短縮にはなります)。

残高証明書(預貯金、有価証券など)

戸籍が集まると、ようやく残高証明書の取り寄せにかかることができます。

しかし、これも時間がかかります。
財産の種類や取り寄せ先にもよりますが、早くて1週間、遅いと1か月くらいかかります。

とくに信託銀行などから取り寄せる、上場株式関係の証明書類は2週間~1か月程度かかります。
ゆうちょ銀行の場合も、「現存照会」を行うこともあって、1か月程度はかかります。

さらに、取り寄せのための申請書類を電話などで手配し、こちらへ郵送してもらう必要がありますので、その分の時間もかかります(こちらは数日程度ですが)。

なお、取り寄せのための必要書類として、戸籍が共通して必要になりますが、1セットしかないと、順番に取り寄せをしていくはめになり、もっと時間がかかります。
だからと言って、戸籍を何セットも用意するとお金がかかりますので、無料でもらえる「法定相続情報一覧図」をあらかじめたくさんもらっておくことをお勧めします。

書類が集まったら、計算は早い

書類を待っている間、税理士は不動産の評価や預金の動きの精査などを行います。

そして、書類が揃えば、基本的にそれを相続税の計算ソフトに入れていくだけなので、そんなに時間はかかりません。

遺産分割協議も時間がかかる

遺言書がない場合は、相続人による話し合い(遺産分割協議)をしていただく必要があります。

すんなりまとまるならいいのですが、そうでない場合も多いです。

また、実家から遠方に住んでいる相続人がいると、全員が顔を合わせる機会が少ないので、やはり話し合いがまとまるのに時間がかかります。

準確定申告は4か月程度かかる

相続税申告と合わせて、準確定申告もするなら、4か月程度かかることが多いです。

「4か月」というのは、準確定申告の申告期限でもありますが、もう1つ意味があります。

それは、年金の源泉徴収票の発行にそれくらい時間がかかるということです。

所得税の還付金がいらないという場合は、発行を待たなくてもいいのですが、還付金を受け取りたい場合や所得税の納税額が発生しそうな場合は、年金の源泉徴収票も待たなくてはいけません。

なお、所得税の還付金は相続税の課税対象財産になりますし、納税額は債務控除(財産額から控除できる)の対象になりますので、相続税の計算にも影響してきます。

以上を総合すると、個人差はありますが、申告書提出までに3~4か月程度はどうしてもかかってしまいます。

 

もめる場合は10か月超かかることも

不幸にして遺産分割協議が紛糾してしまった場合は、期限の10か月を超えることもあります。

ただし、期限までに申告をしておかないと、無申告加算税などのペナルティがかかったり、特例が使えない場合が出てきたりしますので、一旦は10か月以内に申告しておく必要はあります。

その場合は、分け方が決まっていない財産については、「未分割」として、一旦法定相続分で分けたものと仮定して相続税を計算し、納税する必要があります。

その後、分割方法が決まれば、修正申告や更正の請求で、追加納税または還付請求を行います。

相続人がこんなことにならないよう、遺言書を書いておくことをお勧めします。

 

期限まで時間がない場合は、大急ぎでできないこともない

法定の申告期限まで時間がない状態でご依頼いただくこともあります(「時間がない」とは、だいたい2か月以内)。

その場合、悠長に3~4か月時間をかけていると、申告期限を過ぎてしまい、ペナルティを受けることもありますので、大急ぎで申告作業を行います。

証明書類を集めたり、不動産の評価額や預金の動きを精査したりするひまがないことが多いですので、一旦、できる範囲で机上の概算評価による相続税の計算をし、期限に申告・納税を間に合わせます。

その後、時間をかけて正しい計算を行い、修正申告または更正の請求を行います。

修正申告または更正の請求まで含めると、やはり3~4か月程度はかかってしまいます。

なお、この記事を執筆している時点(2020年12月18日)では、コロナの影響で申告期限の個別延長が認められており、そこまで急ぐ必要はなくなっています(ただし、それがいつ終わるかは現時点では分かりません)。

 

まとめ

税理士に依頼するにしろ、自分で申告するにしろ、「申告期限まで10か月もあるから」と悠長に構えていると、あっという間に期限がやってきてしまいます。

個人差はありますが、3~4か月くらいは時間がかかるというスケジュール感覚を持っていただければ幸いです。