奥さんにはどれくらい相続してもらうのがいいのか?②

昨日の記事からの続きです。

奥さんにはどれくらい相続してもらうのがいいのか?①

ご主人に相続が発生した場合、目先の相続税を考えると奥さんが多めに相続した方がいいということになりますが、二次相続(=奥さん自身の相続)での相続税を考えると、奥さんが相続する割合をおさえた方がいいことになる、というのが昨日のお話でした。

この選択は、一概にどちらの方がいいとは言い切れません。

家庭の事情、年齢、健康状態、財産や収入の状況、価値観などによって、とりうる方法は変わってきます。

 

一次相続で奥さんがたくさん相続した方がいい場合

奥さんが比較的若く、健康である場合

ご主人が亡くなった時点で、奥さんの年齢が比較的若く、健康である場合(若い夫婦だったり、ご主人と奥さんの年齢が離れている場合などが考えられます)は、奥さんにたくさん相続してもらった方がいいかもしれません。

奥さん自身の相続が発生するまで時間があるからです(もちろん、若くて健康でも、いつ相続が発生するかはわかりませんが)。

次の相続まで時間があるということは、

  • 次の相続までに相続対策を取る時間的余裕がたっぷりある
    →時間をかけることで効果を発揮する【暦年贈与】や【財産の組み換え】、【遺言書の作成】などに取り組みやすいです。
    また、若くて健康であるほど、生命保険にも入りやすいので、選択肢は広がります。
  • 次の相続までの間に必要な生活費が大きくなる
    →奥さん自身の生活費もそうですし、ご主人が若くして亡くなったのであれば、子どもの生活費や学費なども重くのしかかります。

ということです。

こういう場合は、一次相続での遺産分けの結果、奥さんの財産が大きくなったとしても、二次相続のころにはかなり目減り(いい意味で)しているので、相続税はあまりかからない可能性もあります。

奥さんの生活費を確保したい場合

上記に当てはまらなくとも、奥さん固有の財産が多くない場合は、二次相続の相続税の懸念があったとしても、生活用の財産は確保しておきたいところです。

その金額や内容は、生活レベルや価値観などにより、人それぞれではありますが、【自宅】(または配偶者居住権)と【老後に必要な現預金】は最低限確保しておくといいかと思います。

また、老後は子どもたちの世話にならず、施設に入りたいとお考えであれば、その分の必要金額も確保しておいた方がいいです。

また、【賃貸用不動産】があれば、それを相続することで定期収入を得ることもできますので、相続するかどうか検討してみてもよいかと思います(ただし、同時に管理の手間も発生します)。

 

一次相続で奥さんがあまり相続しない方がいい場合

奥さん自身に財産がたくさんある場合

奥さん自身に財産(とくに預貯金や収益を生む財産)があり、それだけで生活していけるようであれば(不安がなければ)、それこそ二次相続のことを考えて、あまり相続しない方がいいかもしれません。

その場合は、自宅についても、自宅(土地・建物)そのものではなく、【配偶者居住権】を選択肢に入れてもいいかもしれません。

「配偶者居住権」についてざっくり解説

 

奥さんが相続するのがおすすめな財産

最後に、奥さんが一次相続で相続するのが特におすすめな財産をあげてみたいと思います。

自宅用地

配偶者が自宅の土地を相続すれば、相続税の計算で、自宅用地の評価額から最大80%減額できる【小規模宅地等の特例】を受けることができます。

これにより、奥さんだけでなく、子どもたちの相続税も減らす効果がありますし、奥さんの住まいを確保できますので、おすすめです。

対策により評価額を下げられる財産

ご主人の相続の時点では評価額が高く、そのまま相続すると多額の相続税がかかってしまう場合は、その財産をいったん奥さんが引き受けることで、【配偶者の税額軽減】により、相続税をおさえることができます。

その後、奥さんが元気なうちに対策を実施することで、評価額を下げます。

評価額が下がったままなら、そのまま子どもたちに相続してもらえればいいですし、また評価額が上昇する可能性があれば、評価が下がった時点で【相続時精算課税制度】により贈与しておけば、下がった評価額でフィックスされます。

たとえば、次のような財産が考えられます。

  • 非上場株式
    →奥さんも役員であったなら、役員退任時に退職金を出すことで、株価を下げることができます。
  • 預貯金
    →生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)や住宅取得資金贈与の非課税枠(年によって変動)が残っているなら、そこに投入することで、無税で子どもたちへ財産を移転することができます。
  • 上場株式
    →自分で評価額を下げることはできませんが、株価が大きく下落することがあれば、その時点で贈与するのもありです。