奥さんにはどれくらい相続してもらうのがいいのか?①

 
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相続106

 

ご主人が亡くなって、奥さんと子どもが相続人になるというのが、よくある相続のパターンです。

このパターンで最も問題になるのが、「奥さん(子どもたちからすればお母さん)にどれだけ相続してもらうか」ということです。

 

なぜ奥さんの相続割合が問題になるのか?

なぜ「奥さんにどれだけ相続してもらうのがいいか」ということが問題になるかと言うと、理由は2つあります。

  1. 配偶者の税額軽減
  2. 二次相続(=奥さん自身の相続)

配偶者の税額軽減

相続税の計算のしかたは下図のとおりです。

①【正味財産額】から【基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)】を引き、
②①を【それぞれの法定相続分】で按分し、
③【それぞれの②の金額】に応じた【税率】をかけて【控除額】を引き、
④【それぞれの③の金額】を合算します。

これによって、【その家族全体にかかる相続税】が決まります。
あとは、これをそれぞれの取得割合に応じて按分し、それぞれが負担する相続税額が決まります。

【その家族全体にかかる相続税】が決まっているため、あとはどう分けようが、もとの【その家族全体にかかる相続税】が変わることはありません。

ただし、配偶者(奥さんorご主人)が相続した分に関しては、一定額(子どもがいる場合で【2分の1】か【1億6千万円】のどちらか多い方)までであれば、相続税はかからないという特例があります。

そのため、今回支払う相続税を抑えることを主眼に置くなら、奥さんが相続する割合を高めた方がいいことになります。

とくに正味の財産額が1億6千万円以内なら、奥さんが全財産を相続することで、相続税はゼロにすることも可能です(申告は必要です)。

二次相続(=奥さん自身の相続)の問題

しかし、一次相続(=ご主人の相続)はそれでいいとしても、二次相続(=奥さん自身の相続)のことを考えると、そうも言い切れなくなります。

その理由は3つあります。

  1. 【奥さん固有の財産】に【一次相続で相続した財産】が加わり、二次相続で子どもたちが相続する財産が膨れ上がる。
  2. 二次相続では相続人が減る(子どもたちだけ)ことがほとんどなので、【基礎控除額】が減る。
  3. 法定相続分で按分した後の金額が大きくなるので、【税率】が高くなる。
  4. 【配偶者の税額軽減】がない。

そのため、【一次相続・二次相続トータルの税額】という観点でいうと、一次相続で多少相続税がかかったとしても、奥さんが相続する分を抑え、子どもたちに相続してもらった方がいいということになります。

 

奥さんの相続割合による相続税負担のシミュレーション

奥さんが一次相続でいくらの割合で相続すれば、一次・二次トータルの税額がどうなるかを、あらかじめシミュレーションしておいた方がいいです。

ご主人と奥さんそれぞれの財産額や、二次相続(=奥さん自身の相続)がいつ起こるか、相続人の構成などによってまちまちですが、たとえば

  • ご主人の財産額:1億円
  • 奥さんの財産額:4,000万円
  • 子ども2人

なら、下記のようになります(単位:万円)。

一次相続での奥さんの
取得割合
一次相続の相続税額 二次相続での相続税額 合計税額
奥さん 子ども 子ども
100% 0 0 1,560 1,560
90% 0 63 1,360 1,423
80% 0 126 1,160 1,286
70% 0 189 960 1,149
60% 0 252 770 1,022
50% 0 315 620 935
40% 0 378 470 848
30% 0 441 320 761
20% 0 504 180 684
10% 0 567 80 647
5% 0 598.5 30 628.5
0% 0 630 0 630

 

こうして見ると、奥さんの一次相続での取得割合5%が、一次・二次トータルで見た場合は最も安くなります(本当はもっと細かい割合になるかと思いますが、便宜的にこうしています)。

繰り返しになりますが、個々の家族の事情により、税金面でのベターな割合は異なってきますので、この割合を知りたければ、個々にシミュレーションしておくのがいいかと思います。

 

まとめ

税金的には、一次相続での奥さんの取得割合をある程度おさえた方がいいということになりますが、一概にそう言い切れない面もありますし、何を相続したらいいかという問題もあります。

続きについては、明日お話したいと思います。