法定相続情報証明制度を利用してみました(代理人として)

 

これまで、被相続人と相続人の関係を証明するには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍や相続人の戸籍が必要でした。

相続税申告や財産(不動産や預貯金、株式など)の名義変更にも、これらの戸籍が必要でした。

  • これらの手続きを並行して進めようと思えば、複数部とらなければならず(家族構成にもよりますが、1セット2~3千円はかかります)、
  • かといって、複数部とるのが(金銭的に)もったいなければ、1つの手続きが終わるのを待ってから次の手続きを行わなければならず、

何かと不便でした。

しかし、2017年(平成29年)5月より、「法定相続情報証明制度」という制度がはじまり、被相続人と相続人の関係を法務局に証明してもらえれば、その証明書類1枚(A4)=「法定相続情報一覧図」で戸籍書類の束に代えることができるようになりました(しかも無料です)。

この法定相続情報証明制度について、手続きのしかたを解説したいと思います。

 

法定相続情報証明制度の利用手順

とは言っても、まずは戸籍を1セット揃える必要はあります

戸籍を何セットも取り寄せる必要はなくなりましたが、そうは言ってもこの「法定相続情報証明制度」を利用しようと思えば、最低1セットは戸籍をそろえる必要があります。

相続手続きでの戸籍の取り寄せ手順

これに加えて、被相続人の住民票の除票も必要です。
また、法定相続情報一覧図に相続人の住所も載せたければ、各相続人の住民票も必要になってきますので、ついでに取り寄せましょう。

不動産がある場合は、登記手続きでどちらにしろ住民票が必要になりますので。

一覧図を作成する

次に、法定相続情報一覧図の原案(家系図のようなもの)を作成します。

主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

法務局のHPに、家族構成別に記載のしかたや様式(どちらもエクセルファイル)が載っていますので、利用してみてください。

法定相続情報一覧図

申出書を作成する

申出書も作成する必要があります。

法定相続情報申出書

発行手数料は無料なので、必要と思われる部数(金融機関の数くらい)を書いておきましょう。

必要書類をそろえて管轄の法務局へ

そして、一覧図・申出書に、下記の必要書類をそろえて、管轄の法務局へ持ち込みます。

  • 被相続人が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人の現在の戸籍(謄本でも抄本でもOK)
  • 申出人(相続人の代表者)の本人確認書類(免許証コピー、マイナンバーカードコピー、住民票など)
  • 各相続人の住民票(住所を記載してもらいたい場合)

ちなみに、税理士などの士業に代理で手続きしてもらう場合には、下記の書類も必要です。

  • 委任状(上記法務局のHPにひな形が載っています)
  • 士業の資格証明書類のコピー

コピーについては、「原本と相違ない」旨の一文と、その人の署名・押印も必要です。
↓こんな感じで

繰り返しますが、申請手数料はかかりません。

持ち込むのは、つぎのいずれかの管轄法務局です(管轄はHPで調べてみてください)。

  • 被相続人の本籍地
  • 被相続人の最後の住所
  • 申出人(相続人代表)の住所
  • 被相続人名義の不動産の所在地

数日~1週間程度で完成・受け取り

持ち込んだ書類に不備がなければ、数日~1週間程度で完成・受け取れます。

郵送で受け取りたい場合は、レターパックを買って渡しておく必要があります。

 

法定相続情報証明制度の利用した方がいい人・利用しなくてもいい人

法定相続情報証明制度の特徴は、

  • A4の紙1枚で相続関係を証明できること(戸籍は1セットとるだけでOK)
  • 無料で利用できること

の2つです。

これを踏まえて、制度の利用をおすすめする人・利用しなくても問題ない人を列挙してみます。

制度利用がおすすめな人

  • 相続手続きを急いでいる人
  • 取引金融機関が多い人
  • 相続人の人数が多い人

制度利用をしなくても問題ない人

  • 相続手続きを急いでいない人(戸籍1セットの使いまわしになっても時間に余裕のある人)
  • 取引金融機関が少ない人
  • 取り寄せる戸籍の数が少ない人(とくに戦後生まれの人や相続人が未婚の1人っ子の場合など)