コロナ対策に「資本性劣後ローン」ー特徴、融資を受けるには?

9月23日のブログで少し触れましたが、今年8月3日からコロナ対応の「資本性劣後ローン」という融資商品が、日本政策金融公庫と商工中金において取り扱いが始まっています。

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コロナの影響により業績が悪化し、自己資本(資本金+繰越利益)が減ってしまった事業者に対して、本来の収益が回復するまでのあいだの「自己資本増強策」としてこの商品が用意されています。

「資本性劣後ローン」そのものはコロナの前からありましたが、コロナ対応の資本性劣後ローンは、対象者や金利などの点で、従前のものよりも優遇されています。

 

資本性劣後ローンの特徴

資本性劣後ローンには、次のような特徴があります(コロナ対応で中小企業等向けの場合)。

使い道 設備資金または長期の運転資金
借入期間 5年1か月、10年、20年のいずれか
限度額 スタートアップや小規模事業者など:7,200万円
中小企業:7億2,000万円
返済方法 期限一括返済
→期限前の返済はダメ。期間中は利息だけ支払う。
利率

最初の3年または税引後純利益が0円未満の年:年0.50%または年1.05%

4年目以降で税引後純利益が0円以上の年:年2.6~4.8%

担保や保証人 不要

借入期間中は利息のみの支払いでよかったり、その利率もかなり優遇されていたりと(利息の補給などはありませんが)、メリットは多いです。

しかし、一番のメリットは、この資本性劣後ローンを、金融機関からは「自己資本」とみなしてもらえる点です。

この資本性劣後ローンは、もし借り入れをしている企業が万が一倒産してしまった場合には、他の借入金などよりも返済が後回し(=劣後⇔反対語:優先)となるため、資本とみなしてもらえるのです。

自己資本が分厚くなることで、金融機関から継続的な融資を受けやすくすることが狙いです。

なお、当初こそは全額が自己資本とみなしてもらえますが、年数が経過するにつれて、自己資本とみなしてもらえる割合が少しずつ減っていきますので、その点はご注意ください。

 

資本性劣後ローンの融資を受けるには?

対象者

コロナにより業績に影響を受けた事業者が対象になります(中小企業向けの場合は、「売上〇%減」のような条件はありません)。

ただし、どの企業でも利用できるわけではなく、

  • 事業計画書を策定していること(認定支援機関などの支援が必要)
  • 融資後、民間金融機関など(銀行や信用金庫など)から、出資や融資により資金調達が見込まれること(約1年以内)

の2つが条件となります。

そのため、資本性劣後ローンの利用を検討しているのであれば、事前に取引のある民間金融機関に話を通しておく必要があります。

逆に、資本性劣後ローンの融資が通れば、これを呼び水に民間金融機関からの融資が期待できるため、資金繰りの好転が期待できます。

※これ以外にも融資を受けられる条件がありますが、ここでは割愛します。

 

必要な事業計画書など(公庫から融資を受ける場合)

コロナ対応の資本性劣後ローンで特に必要になるものは、次のとおりです。

1.事業計画書(認定支援機関によるサポートを受ける場合)shihonseiretsugo_ninnteishienkikan_rei

2.5~20か年の損益計画(借入期間分)shihonseiretsugo_ninnteishienkikan_rei-2

3.資金繰り表(1年分)
4.コロナの影響を受けていることが分かる資料
たとえば、予定されていた注文がキャンセルされたことが分かるものや、注文数の前年同月比較などです。
5.市場分析(ターゲット、競合状況、将来性など)や自社の強み、今後の販売・成長戦略など
様式などはありませんが、面談の際にコメントを求められます。
パワーポイントなどでまとめておいて、一緒に提出すると好印象です。

また、必須ではありませんが、貸借対照表やキャッシュフロー計算書についても長期計画を作っておくと、同じく好印象です。

その他、通常の借入と同じように、過去の決算書(2期分くらい)や直近の決算後の試算表、通帳コピー(6か月分)、税金の領収書、既存の借入金明細などが必要になります。

社長1人で作るのは大変だと思いますので、税理士などの認定支援機関と二人三脚で取り組むことをおすすめします。

融資後の注意点

融資後は、定期的(四半期ごと・決算時など)に経営状況の報告が義務付けられています。

融資を受ける際に直近の試算表が必要になることも考えると、これを機会に、日々の経理を習慣づけることをおすすめします。

なお、期限が来たら一括で返済しなければなりませんので、それが可能なのか(期限までに業績を立て直し、返済資金を用意できるか)も踏まえて、この商品を使うかどうかを考える必要があります。